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ずどん、と遠くから雷鳴が聞こえた。今日の空模様は一段と荒れており、今空を見上げても暗雲が立ち込めている。それはよくある雨雲とは違い、世界中の悪夢を集めて固めたような色をしていた。
今日は無事に病院を退院してから、久々に友達と会える予定だったのに。腕時計の針の位置を確認して、一人息を吐いた。待ち合わせ場所の時計台から、適当な屋根の下に避難しておよそ十数分。持っていた傘から水滴が滴り落ち、いつのまにか水たまりができるほどに時間は過ぎていた。
「...遅い」
不毛なメッセージアプリの更新をやめ、変わる気配のない空と慌てた様子の人々を見やる。この悪天候を予見していなかったのか、濡れ鼠のようになっている人。頼りない折り畳み傘を信じ、街を走り抜ける人。様々な人々がこの街に近づく雨雲と遠雷から逃げようとしていた。
しかし、そんな群衆の中に、一人悠然と歩く人を見つけた。深緑色の傘を片手に、どこかへ迷うことなく向かってゆく男性の姿を。
「...…ん?」
どこかで、見かけたことがあるような。そんな既視感に駆られ、自分の瞳は無意識のうちに彼を追っていた。友人や有名人といった、具体的な人は連想されないものの、その姿は確実に「だれか」のように思えたからだ。傘のせいではっきりとした顔は見えないが、その平均よりも高い身長と纏っている独特の雰囲気にはどこか見覚えがあった。けれども、肝心の「だれか」が誰であるかは未だに思い出せなかった。
一歩、二歩と彼が歩む間にも時は過ぎてゆく。だが、その間も答えは見つからない。やがて足元の水たまりは広がっていき、腕時計の針も進んでいった。
これ以上、彼を凝視し続けても不審なだけだと思い、諦めて瞳を伏せた時。
「もしかして、気がついたのか?」
だれかの声が、した。
驚いて視線を上げると、そこには傘を持った彼が立っていた。あれ程距離があったのに、もう目の前にいるなんて魔法を使ったようにしか見えなかった。
「さぁ、まずは目を見て話そうか」
その瞬間、自分は確信した。ダークグリーンの髪と金色の瞳を持つ、その人こそが、
「……トレイ、せん、ぱい?」
「そうだ。久しぶりだな、監督生」
どろりとした蜂蜜のような目で見つめられ、すっかり身動きが取れなくなる。この時初めて、これはデジャブではなく再会なのだと実感した。
「色々と聞きたいことはあるんだが、時間がないな。端的に言おう、お前をたった今、攫いに来た」
そう言って、トレイ先輩は悪戯な笑みを浮かべた。けれども、あの時交わした約束を含め、全てを思い出した自分には、その言葉がとても嬉しく感じられた。
「本当に迷いはないか?」
「勿論、喜んで」
あと、これまでごめんね。そう唇を動かす姿が、足下の水たまりに反射した。しかし雨が止む頃には、青空しかそこには映っていなかった。
今日は無事に病院を退院してから、久々に友達と会える予定だったのに。腕時計の針の位置を確認して、一人息を吐いた。待ち合わせ場所の時計台から、適当な屋根の下に避難しておよそ十数分。持っていた傘から水滴が滴り落ち、いつのまにか水たまりができるほどに時間は過ぎていた。
「...遅い」
不毛なメッセージアプリの更新をやめ、変わる気配のない空と慌てた様子の人々を見やる。この悪天候を予見していなかったのか、濡れ鼠のようになっている人。頼りない折り畳み傘を信じ、街を走り抜ける人。様々な人々がこの街に近づく雨雲と遠雷から逃げようとしていた。
しかし、そんな群衆の中に、一人悠然と歩く人を見つけた。深緑色の傘を片手に、どこかへ迷うことなく向かってゆく男性の姿を。
「...…ん?」
どこかで、見かけたことがあるような。そんな既視感に駆られ、自分の瞳は無意識のうちに彼を追っていた。友人や有名人といった、具体的な人は連想されないものの、その姿は確実に「だれか」のように思えたからだ。傘のせいではっきりとした顔は見えないが、その平均よりも高い身長と纏っている独特の雰囲気にはどこか見覚えがあった。けれども、肝心の「だれか」が誰であるかは未だに思い出せなかった。
一歩、二歩と彼が歩む間にも時は過ぎてゆく。だが、その間も答えは見つからない。やがて足元の水たまりは広がっていき、腕時計の針も進んでいった。
これ以上、彼を凝視し続けても不審なだけだと思い、諦めて瞳を伏せた時。
「もしかして、気がついたのか?」
だれかの声が、した。
驚いて視線を上げると、そこには傘を持った彼が立っていた。あれ程距離があったのに、もう目の前にいるなんて魔法を使ったようにしか見えなかった。
「さぁ、まずは目を見て話そうか」
その瞬間、自分は確信した。ダークグリーンの髪と金色の瞳を持つ、その人こそが、
「……トレイ、せん、ぱい?」
「そうだ。久しぶりだな、監督生」
どろりとした蜂蜜のような目で見つめられ、すっかり身動きが取れなくなる。この時初めて、これはデジャブではなく再会なのだと実感した。
「色々と聞きたいことはあるんだが、時間がないな。端的に言おう、お前をたった今、攫いに来た」
そう言って、トレイ先輩は悪戯な笑みを浮かべた。けれども、あの時交わした約束を含め、全てを思い出した自分には、その言葉がとても嬉しく感じられた。
「本当に迷いはないか?」
「勿論、喜んで」
あと、これまでごめんね。そう唇を動かす姿が、足下の水たまりに反射した。しかし雨が止む頃には、青空しかそこには映っていなかった。