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お願いがあるんです。あなたの髪に触れてもいいですか?
そう聞いた時、ジャミルさんは少し驚きつつも頷いてくれた。私は別に、何かのフェティシズムを持っているわけではないが、彼の流れるような髪には前から心を惹かれていた。自分に持っていないものを持つ者に、人は惹かれると言うフレーズを聞いたことがある。きっとそんな類だろうと、私は軽く決めつけていた。
そして、やっと二人きりになれた夜。しんと静まる部屋の中、私はジャミルさんの髪へ手を伸ばした。
「触りますよ」
「…ん」
窓ガラスから差し込む月光が、彼の髪を柔らかく照らしている。夜の川、その水面に、月がゆらゆらと揺れているようだった。その様子に、思わず「きれい」と声が溢れてしまい、ジャミルさんに怪訝な表情で見られてしまった。
「ジャミル先輩、本当に髪が綺麗ですね」
「そうか? カリムの残りを使ってるだけだが」
夜を糸にして紡いだような髪に、一度触れてみたいと兼ねてから思っていた。彼の艶やかな髪に指を通して、精巧に絡んだ編み込みを解いてゆく。この行為こそが、常に気を張っている彼に信用されている何よりの証拠に思えた。
「君の髪も十分綺麗だと思うけどな」
「…私はここに来るとき、髪切っちゃったので。それも自分で、勝手も知らずに」
空気を気まずくしてしまったという負い目から、不揃いな毛先を隠すように、反対の手で撫でる。彼の装飾を握ったまま、私は手を止めてしまった。
仕方なかったんだ、と心に蓋をするも、一つのアイデンティティを失ったことは自明だった。ないはずの後ろ髪がひかれている気がする。まさか、後悔をいつのまにか彼に重ねてしまっていたのだろうか。その考えに至った瞬間、彼の髪を梳いていた手も、すとんと落としてしまった。
とうとう部屋に静寂が訪れる。せっかく、二人っきりになれたのに。そんな後悔が募った。
「……なら、君の髪が伸びた時に、今度は俺が君の髪を結ってあげよう」
暫し、といっても数秒ほどの沈黙を破ったのはジャミルさんの方だった。彼は私の手を取り、こちらへと向き直る。目を逸らさないでくれ、と真剣な表情をして。
「…え、でもそれって」
「ここまで気を許した相手を、まさか逃すとでも思ったか?」
細められた目の奥、ぎらりと光る瞳が私を射抜く。その信念を宿した瞳に、私は目を離せずにいた。
「時間は厭わない。君の全てを知りたいだけだ」
「……なら、私もジャミルさんのこと、もっと知りたいです」
「今みたいに、(名前)が心を開いてくれるのなら、な」
別に呼び捨てでも構わないが、と微笑む彼は余裕に満ちている。長い夜を経て、その奥の本心に触れられたらと溜息が漏れた。
そう聞いた時、ジャミルさんは少し驚きつつも頷いてくれた。私は別に、何かのフェティシズムを持っているわけではないが、彼の流れるような髪には前から心を惹かれていた。自分に持っていないものを持つ者に、人は惹かれると言うフレーズを聞いたことがある。きっとそんな類だろうと、私は軽く決めつけていた。
そして、やっと二人きりになれた夜。しんと静まる部屋の中、私はジャミルさんの髪へ手を伸ばした。
「触りますよ」
「…ん」
窓ガラスから差し込む月光が、彼の髪を柔らかく照らしている。夜の川、その水面に、月がゆらゆらと揺れているようだった。その様子に、思わず「きれい」と声が溢れてしまい、ジャミルさんに怪訝な表情で見られてしまった。
「ジャミル先輩、本当に髪が綺麗ですね」
「そうか? カリムの残りを使ってるだけだが」
夜を糸にして紡いだような髪に、一度触れてみたいと兼ねてから思っていた。彼の艶やかな髪に指を通して、精巧に絡んだ編み込みを解いてゆく。この行為こそが、常に気を張っている彼に信用されている何よりの証拠に思えた。
「君の髪も十分綺麗だと思うけどな」
「…私はここに来るとき、髪切っちゃったので。それも自分で、勝手も知らずに」
空気を気まずくしてしまったという負い目から、不揃いな毛先を隠すように、反対の手で撫でる。彼の装飾を握ったまま、私は手を止めてしまった。
仕方なかったんだ、と心に蓋をするも、一つのアイデンティティを失ったことは自明だった。ないはずの後ろ髪がひかれている気がする。まさか、後悔をいつのまにか彼に重ねてしまっていたのだろうか。その考えに至った瞬間、彼の髪を梳いていた手も、すとんと落としてしまった。
とうとう部屋に静寂が訪れる。せっかく、二人っきりになれたのに。そんな後悔が募った。
「……なら、君の髪が伸びた時に、今度は俺が君の髪を結ってあげよう」
暫し、といっても数秒ほどの沈黙を破ったのはジャミルさんの方だった。彼は私の手を取り、こちらへと向き直る。目を逸らさないでくれ、と真剣な表情をして。
「…え、でもそれって」
「ここまで気を許した相手を、まさか逃すとでも思ったか?」
細められた目の奥、ぎらりと光る瞳が私を射抜く。その信念を宿した瞳に、私は目を離せずにいた。
「時間は厭わない。君の全てを知りたいだけだ」
「……なら、私もジャミルさんのこと、もっと知りたいです」
「今みたいに、(名前)が心を開いてくれるのなら、な」
別に呼び捨てでも構わないが、と微笑む彼は余裕に満ちている。長い夜を経て、その奥の本心に触れられたらと溜息が漏れた。
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