◆しっぽやプチ話◆
side<TAKESI>
窓から差し込む日差しで、俺の意識が浮上する。
『ヤベ、寝過ごした?アラーム鳴ってたっけ?』
部屋がすっかり明るくなっていたので、俺はドキッとしてしまう。
腕の中で安らかな寝息を立てているひろせを起こさぬよう、なるべくそっと体を動かしベッドサイドの時計を確認した。
『何だ、まだ6時過ぎか』
思わず、安堵のため息がもれてしまった。
いつも起きる時間まで、30分近く余裕がある。
『この時間にこんなに明るいってことは、今日も暑くなりそうだな
熱中症予防、ちゃんとしとかなきゃ』
俺は気を引き締めた。
初めてひろせと過ごした夏休みから、10年の時が流れていた。
大学卒業後、俺達はすぐに一緒に暮らし始めた。
部屋には『いつか一緒に暮らせる時のために』と考えて買っておいた物が色々ある。
夏休みの思い出である『ワッフルメーカー』もその1つだ。
仕事のある日はホットサンド、休みの日はワッフルと、未だに現役で俺達の朝食を作り続けてくれていた。
『学生の頃はちょっと高い買い物かな、とか思ってたけどメーカー物ってやっぱ保ちが違うわ』
俺はひろせを起こさないようそっとベッドを抜け出すと、キッチンに向かった。
せっかく早く起きたので、朝食を作ることにしたのだ。
10枚切りの食パンにマヨネーズを塗り、プレートをホットサンドに代えてあるワッフルメーカーにセットする。
その上にハム、チーズ、スライスオニオン、食パンをのせ、スイッチを入れた。
焼き上がるまでに次の具を用意していく。
ツナ缶を開け、バナナをスライスする。
焼き上がると次は同じくマヨネーズを塗った食パンにツナ、スライスオニオン、チーズをのせた。
次の物が焼き上がる前に、サラダの準備を始める。
野菜類は夜のうちにひろせが用意して、ジップロックに入れておいてくれるので助かっていた。
『スライスオニオンあると、便利なんだよなー
これとチーズとトマトケチャップがあれば、ピザ風ホットサンドがすぐ作れるし
そだ、時間あるから弁当用に色々作るか』
ひろせと暮らすようになってから手際が良くなって、料理の腕が上がった気がする、と俺は少し得意な気持ちになっていた。
4回目のホットサンドをセットする前に
「タケシ、おはよう」
後ろからひろせが近づいてきて、俺の腕にそっと触れた。
「おはよう、ひろせ」
俺も挨拶を返すとひろせにキスをする。
「起きたとき、俺が居なくて寂しかった?」
少し意地悪く聞くと
「キッチンから音がしてたし、ホットサンドが焼ける匂いがしたから全然平気」
ひろせは何でも無さそうな顔で答えた。
しかし
「でも、ちょっとだけ寂しかった」
可愛らしく舌を出すと、俺にキスをしてくれた。
「お弁当用のサラダは僕が作りますね
後はランチボックスも用意して、と」
ひろせはテキパキと準備を始めた。
想念を交わさなくても、ひろせは俺の手元を見て何をしたらいいのか察してくれる。
俺達はゲンちゃんとナガトみたいに、通じ合ってる関係になっていた。
「これは、タケシが高校2年生の冬休みにデートした時に買ったランチボックス
サラダは大学1年の時の夏休みにデートした時に買ったタッパーに入れましょう」
ひろせは楽しそうに準備していく。
ここにある物は、どれも2人の思い出が詰まっていた。
「高校1年の春休みにデートした時に買ったグラスで、アイスミルクティー飲もう
ペアグラスなんて初めて買ったから、あの時はレジに持ってくの照れくさかったなー」
「はい、桜の柄が可愛くて買ったんですよね
それに、僕がタケシの高校合格祝いに焼いたのが桜のパウンドケーキだったから、出会って1年の記念だって」
そんな会話を交わした後
「俺達って、物持ち良いよな」
思わず笑ってしまった。
「タケシとの思い出の品ですからね、大事に扱ってます」
ひろせは愛おしそうに食器類を撫でていた。
「よし、これでラスト!シナモンバナナのデザートサンド出来上がり」
弁当を用意し終わったひろせが
「ご苦労様、美味しそうな良い匂い」
そう言って出来上がったばかりのホットサンドを皿にのせた。
テーブルの上には朝食用のサラダとミルクティーが用意されている。
「2人でやると早いね」
しっぽやに出勤するまで、まだ時間に余裕があった。
「職場が近いと助かるよ、8時過ぎに家を出ても間に合うんだから
高校行ってたときは、7時半には家を出てたっけ」
俺は学生時代を懐かしく思い出す。
「初めて、タケシとショッピングモールに行ったときに買ったワッフルメーカー
それを使って朝からタケシと料理が出来るなんて、買ったときには思いもしませんでした」
ひろせも感慨深そうな顔をする。
「俺達の『今』は、ずっと未来まで続いてるんだ
ずっと一緒の未来だよ」
ひろせを抱き寄せキスをすると
「ずっと、ずっと愛してます」
彼は俺の胸に頬ずりした。
「今日も暑くなりそうだけど、捜索頑張るか」
「はい」
俺達は未来に続く時間を、また共に歩き始めるのであった。
窓から差し込む日差しで、俺の意識が浮上する。
『ヤベ、寝過ごした?アラーム鳴ってたっけ?』
部屋がすっかり明るくなっていたので、俺はドキッとしてしまう。
腕の中で安らかな寝息を立てているひろせを起こさぬよう、なるべくそっと体を動かしベッドサイドの時計を確認した。
『何だ、まだ6時過ぎか』
思わず、安堵のため息がもれてしまった。
いつも起きる時間まで、30分近く余裕がある。
『この時間にこんなに明るいってことは、今日も暑くなりそうだな
熱中症予防、ちゃんとしとかなきゃ』
俺は気を引き締めた。
初めてひろせと過ごした夏休みから、10年の時が流れていた。
大学卒業後、俺達はすぐに一緒に暮らし始めた。
部屋には『いつか一緒に暮らせる時のために』と考えて買っておいた物が色々ある。
夏休みの思い出である『ワッフルメーカー』もその1つだ。
仕事のある日はホットサンド、休みの日はワッフルと、未だに現役で俺達の朝食を作り続けてくれていた。
『学生の頃はちょっと高い買い物かな、とか思ってたけどメーカー物ってやっぱ保ちが違うわ』
俺はひろせを起こさないようそっとベッドを抜け出すと、キッチンに向かった。
せっかく早く起きたので、朝食を作ることにしたのだ。
10枚切りの食パンにマヨネーズを塗り、プレートをホットサンドに代えてあるワッフルメーカーにセットする。
その上にハム、チーズ、スライスオニオン、食パンをのせ、スイッチを入れた。
焼き上がるまでに次の具を用意していく。
ツナ缶を開け、バナナをスライスする。
焼き上がると次は同じくマヨネーズを塗った食パンにツナ、スライスオニオン、チーズをのせた。
次の物が焼き上がる前に、サラダの準備を始める。
野菜類は夜のうちにひろせが用意して、ジップロックに入れておいてくれるので助かっていた。
『スライスオニオンあると、便利なんだよなー
これとチーズとトマトケチャップがあれば、ピザ風ホットサンドがすぐ作れるし
そだ、時間あるから弁当用に色々作るか』
ひろせと暮らすようになってから手際が良くなって、料理の腕が上がった気がする、と俺は少し得意な気持ちになっていた。
4回目のホットサンドをセットする前に
「タケシ、おはよう」
後ろからひろせが近づいてきて、俺の腕にそっと触れた。
「おはよう、ひろせ」
俺も挨拶を返すとひろせにキスをする。
「起きたとき、俺が居なくて寂しかった?」
少し意地悪く聞くと
「キッチンから音がしてたし、ホットサンドが焼ける匂いがしたから全然平気」
ひろせは何でも無さそうな顔で答えた。
しかし
「でも、ちょっとだけ寂しかった」
可愛らしく舌を出すと、俺にキスをしてくれた。
「お弁当用のサラダは僕が作りますね
後はランチボックスも用意して、と」
ひろせはテキパキと準備を始めた。
想念を交わさなくても、ひろせは俺の手元を見て何をしたらいいのか察してくれる。
俺達はゲンちゃんとナガトみたいに、通じ合ってる関係になっていた。
「これは、タケシが高校2年生の冬休みにデートした時に買ったランチボックス
サラダは大学1年の時の夏休みにデートした時に買ったタッパーに入れましょう」
ひろせは楽しそうに準備していく。
ここにある物は、どれも2人の思い出が詰まっていた。
「高校1年の春休みにデートした時に買ったグラスで、アイスミルクティー飲もう
ペアグラスなんて初めて買ったから、あの時はレジに持ってくの照れくさかったなー」
「はい、桜の柄が可愛くて買ったんですよね
それに、僕がタケシの高校合格祝いに焼いたのが桜のパウンドケーキだったから、出会って1年の記念だって」
そんな会話を交わした後
「俺達って、物持ち良いよな」
思わず笑ってしまった。
「タケシとの思い出の品ですからね、大事に扱ってます」
ひろせは愛おしそうに食器類を撫でていた。
「よし、これでラスト!シナモンバナナのデザートサンド出来上がり」
弁当を用意し終わったひろせが
「ご苦労様、美味しそうな良い匂い」
そう言って出来上がったばかりのホットサンドを皿にのせた。
テーブルの上には朝食用のサラダとミルクティーが用意されている。
「2人でやると早いね」
しっぽやに出勤するまで、まだ時間に余裕があった。
「職場が近いと助かるよ、8時過ぎに家を出ても間に合うんだから
高校行ってたときは、7時半には家を出てたっけ」
俺は学生時代を懐かしく思い出す。
「初めて、タケシとショッピングモールに行ったときに買ったワッフルメーカー
それを使って朝からタケシと料理が出来るなんて、買ったときには思いもしませんでした」
ひろせも感慨深そうな顔をする。
「俺達の『今』は、ずっと未来まで続いてるんだ
ずっと一緒の未来だよ」
ひろせを抱き寄せキスをすると
「ずっと、ずっと愛してます」
彼は俺の胸に頬ずりした。
「今日も暑くなりそうだけど、捜索頑張るか」
「はい」
俺達は未来に続く時間を、また共に歩き始めるのであった。