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しっぽや【アラシ】(No.23~31)

シャワールームは2人で入るには少し手狭だった。
『目や耳にシャンプーが入るといけないから、頭部は最後に洗うって言ってたな
 流すときは頭から
 そうすれば万が一シャンプーが目に入っても、すぐ洗い流せるし』
俺はカズハさんに教わった手順を必死で思い出していた。
『シャンプーって言っても、白久の場合、体はボディソープだよね』
俺はスポンジにボディソープを出して泡立てる。
『俺より白久の方が背が高くて大きいから、背中から洗うのが楽かな』
そう考えて俺はまず白久の背中を洗い始めた。

『背中、広いな…』
今まであまりじっくり見たことの無かった白久の背中を見て、俺は少しドキドキしてしまう。
『いや、そんなこと考えてる場合じゃなく
 とにかく、目と耳にシャンプーを入れないこと!』
俺は気合いを入れて白久の背中、肩や腕を洗っていく。
それから、お尻や腿、ふくらはぎと下に向かい洗い進めていった。
白久は時折ビクリと体を震わせていたが、命令通り温和しくしていた。
『長毛種だと毛玉が出来ないよう気を使うって言ってたけど、その点白久は楽だよね』
俺はノンキにそんなことを考え、後ろ側を洗い終わると前を向かせて、今度は体の前面を洗い始めた。
キレイに筋肉の付いている胸から腹にスポンジを移動させ、そこで俺はハッとする。
白久の中心が激しく反応を示していたのだ。
それを見て、俺は自分のやっていることの大胆さに今更ながら気が付いて急に恥ずかしくなる。

『犬を洗うのを実践してみることに気をとられすぎてたけど、俺が今洗ってるのは…人じゃん!
 あ、白久が時々震えていたのは、くすぐったいんじゃなくて感じてたんだ』
自分が白久にとてつもない『おあずけ』をさせていることに、俺はやっと気が付いた。
どうしようかと思ったが、健気に耐えている白久が可愛いし後少しなので
「ごめん、もうちょっと我慢してて」
俺はそう言ってスポンジの動きを再開する。

体を洗い終わるとかがんでもらい、今度は髪を洗い始めた。
『ここが一番の難関だ!』
そう緊張する俺の耳に、白久の切なげな吐息が聞こえてくる。
『そっか白久、頭撫でられるの好きだから、これ最大級のおあずけ状態なんだ…』
さすがに可哀想になり早く解放してあげたくて、俺は手早くシャワーで白久の泡を洗い流してやった。
「ドライヤーは自分で出来るよね
 俺もすぐに洗って出るから、ベッドで待ってて」
俺の言葉に白久は上気した顔で頷くと、シャワールームを後にする。
俺は急いで自分の髪や体を洗い、脱衣所に移動した。
体を拭いてドライヤーで髪を乾かすと、何も着ないで急いでベッドに向かう。
白久も何も着ずにベッドに腰掛けて、温和しく俺を待っていた。

「おあずけさせちゃって、ごめんね」
俺が謝ると
「シャンプー、ありがとうございました
 人に洗ってもらうのは初めてだったので、何というか
 気持ちよくて、その…」
白久は赤くなって俯いた。
「シャンプー中ちゃんと温和しくしてたから、ご褒美」
俺はそう言うと、白久にキスをした。
舌を絡めると、白久も直ぐに反応してくる。
「おあずけを解除するには『よし』って言えば良い?」
俺の囁きに
「よろしいのですか?」
白久は少し驚いた顔を見せた。

「荒木には、もう触れさせていただけないのかと思っておりました」
そんな事を言う白久がいじらしく
「それじゃ、俺もおあずけ状態だよ」
俺は困った笑顔を見せた。
「白久、して
 うんと、気持ちよくして」
そう命令すると
「かしこまりました」
白久はそう答え、俺をそっとベッドに押し倒す。
俺達は熱く唇を重ね、しっかりと抱き合った。

「もう俺以外、このベッドに上げちゃダメだからな」
体に触れる白久の熱を心地よく感じながら、俺は強く命令した。
「はい」
白久は乾きを癒すように、俺の体に激しく舌を這わせていく。
その情熱的な愛撫に、俺はすぐにトロケるような気持ちにさせられた。
白久の唇が触れている部分が、とても熱くなっていく。

「はっ…、あ…、んん…」
甘い喘ぎが絶え間なく唇から漏れ出した。
体の中心を白久が口に含む。
舌を絡めながら優しく、激しく刺激されると、俺はすぐに上りつめてしまった。
それでも俺の欲望は治まらず、触れられている部分がまた熱を帯びてくる。

「白久、きて」
白久はその命令に従い、熱い自身で俺を貫いた。
「ひっ、ああっ!白久っ!」
何よりも強く白久を感じる瞬間が訪れる。
「荒木!」
俺達は互いを呼び合い、激しく繋がった。
お互いにとってかけがえのない存在であることを確認するように、その儀式は続いていく。
すれ違った気持ちを埋めるように、俺達は何度も一つに溶け合ったのだ。

やがて、穏やかな静寂が訪れる。
白久の腕の中で半分夢を見ているような状態のまま
「白久、愛してる…、ずっと俺の飼い犬でいるんだぞ」
俺はそう呟いていた。
いつのまにか、白久に命令することに慣れきっている自分がいる。
「私は荒木だけの飼い犬です、誰よりもお慕いしております」
白久が俺をきつく抱き締めて誓った言葉に満足すると、俺は意識を手放した。

『明日もずっと白久といられるんだ
 夏休みが永遠に続けばいいのにな…』

眠りに落ちる前のほんの一時の思考は、幸せな闇に消えていった。
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