しっぽや【アラシ】(No.23~31)
ミイちゃんと波久礼がゲンさんの車に乗って去って行くと、俺と白久、空、カズハさんは影森マンションに移動する。
空の部屋で皆で夕飯を食べるのだ。
集まってご飯が食べられる人が増えるのが、俺には嬉しく感じられた。
「今日は寿司取ってみようぜ!
俺も『デリバリー』の電話の仕方覚えたんだ
寿司の場合はサビアリとサビヌキ、注文する時にちゃんと伝えないとダメなんだぜ」
空が得意そうに言っていた。
「こっちにくる前に、日野とメールでやり取りしたよ」
俺が話しかけると、白久がビクリと肩を震わせる。
「正直、まだ、わだかまりはあるけどさ…
明日、一緒に日野のお祖母さんのお見舞いに行ってくる
それでその後、白久の飼い主のお墓参りもしてくるよ
多分、病院の隣の墓地に墓があるんじゃないか、って日野が教えてくれたんだ
はっきりしたお墓の場所がわからないから、お線香とかあげられないけどね」
俺の言葉に
「荒木…」
白久が複雑な表情を見せた。
「白久は俺がきちんと飼います、って報告してくる
報告ってより、宣戦布告かな
もう、白久は俺の犬なんだからさ
あの人が出来なかった分まで、白久を幸せにします、って」
俺はへヘッと笑って見せた。
日野からのメールには、あの時、日野自身もかなり混乱していた事が告白されていた。
『荒木、ごめん
こんな言葉じゃ足りないくらい、酷いこといっぱいした
会ったときにちゃんと状況を説明したいけど、俺自身、あの時のこととかよく覚えてないんだ…
言い訳にしかならないけど、取り憑かれたなんて初めてで、自分でも何が何だかよくわからなくて
あの状況、断片的にしか理解できてなかったんだ
でも、俺、あの人の気持ちわかる…
もし、お前が黒谷の新しい飼い主だったら、俺、あの人と同じ事してた
お前から、黒谷を取り返そうとあがいてた
あの人と俺、似たところがあるから、取り憑かれたのかな
こんな俺でも、まだ友達だと思ってくれると嬉しいよ
会った時、もっとちゃんと謝りたい
ごめんな』
俺も、日野とちゃんと話がしたかった。
それで、明日の約束を取り付けたのだ。
「荒木…本当に申し訳ございませんでした
私は荒木の飼い犬です、荒木だけの飼い犬です
今回のことで、改めて自分の気持ちに気が付きました
今後は荒木を一生お守りいたします」
白久の力強い言葉を聞きながら、俺は誇らしい気持ちになった。
白久は自分の存在を変質するほど好きだった飼い主より、俺を選んでくれたのだ。
皆の前で、俺を選ぶと誓ってくれたのだ。
あの瞬間、俺は白久の飼い主に対して確かな優越感を感じていた。
「うん、俺も最後まで白久をきちんと飼う
誰にも負けないくらい、白久のこと愛すよ
まだ頼りない飼い主だけど、頑張るから
だから、ずっと側にいて」
俺はきっぱりとそう告げた。
白久の、帰りたくても帰れない、愛の始まりの場所になろうと決心する。
「荒木、私の飼い主…」
白久がギュッと俺の手を握ってきた。
俺もそれを握り返し、俺たちはしっかりと手を繋ぎ、お互いの存在を確認する。
「でも、俺、まだちょっと怒ってるから…
だから、俺の我が儘聞いてくれる?」
俺の言葉に、白久は即座に反応した。
「何なりとご命令ください
私に出来ることであれば、必ず成し遂げてみせます!」
きっと白久はそう言ってくれるだろうと思っていたので、俺はその答えに満足する。
「じゃあ、白久も夏休みとって、俺に付き合って
2人で一緒の夏休みを過ごしたいんだ
どこかに遊びに行こう
今回のこと、日野ばっかりが悪い訳じゃないけど…
飼い主がやらかしたことは、飼い犬も責任取るべきじゃないかと思うんだ
白久の穴は黒谷に埋めてもらって、2、3日休んでよ
で、今度はダメだって言っても、白久のとこに泊まるからね」
俺が言うと
「はい!どこへでもお供いたします!
私の部屋でよければ、どうぞお泊まりください
後でクロに連絡をいれます、渋られても絶対休みますから!」
白久は迷わずそう答えた。
「うん!」
俺の心は、その言葉で幸せに満たされる。
俺達は手を繋いだまま、マンションへの道を歩いて行く。
これからも、何があっても、ずっとずっと2人で歩いていきたい。
俺は、心の中で強くそう思うのであった。
空の部屋で皆で夕飯を食べるのだ。
集まってご飯が食べられる人が増えるのが、俺には嬉しく感じられた。
「今日は寿司取ってみようぜ!
俺も『デリバリー』の電話の仕方覚えたんだ
寿司の場合はサビアリとサビヌキ、注文する時にちゃんと伝えないとダメなんだぜ」
空が得意そうに言っていた。
「こっちにくる前に、日野とメールでやり取りしたよ」
俺が話しかけると、白久がビクリと肩を震わせる。
「正直、まだ、わだかまりはあるけどさ…
明日、一緒に日野のお祖母さんのお見舞いに行ってくる
それでその後、白久の飼い主のお墓参りもしてくるよ
多分、病院の隣の墓地に墓があるんじゃないか、って日野が教えてくれたんだ
はっきりしたお墓の場所がわからないから、お線香とかあげられないけどね」
俺の言葉に
「荒木…」
白久が複雑な表情を見せた。
「白久は俺がきちんと飼います、って報告してくる
報告ってより、宣戦布告かな
もう、白久は俺の犬なんだからさ
あの人が出来なかった分まで、白久を幸せにします、って」
俺はへヘッと笑って見せた。
日野からのメールには、あの時、日野自身もかなり混乱していた事が告白されていた。
『荒木、ごめん
こんな言葉じゃ足りないくらい、酷いこといっぱいした
会ったときにちゃんと状況を説明したいけど、俺自身、あの時のこととかよく覚えてないんだ…
言い訳にしかならないけど、取り憑かれたなんて初めてで、自分でも何が何だかよくわからなくて
あの状況、断片的にしか理解できてなかったんだ
でも、俺、あの人の気持ちわかる…
もし、お前が黒谷の新しい飼い主だったら、俺、あの人と同じ事してた
お前から、黒谷を取り返そうとあがいてた
あの人と俺、似たところがあるから、取り憑かれたのかな
こんな俺でも、まだ友達だと思ってくれると嬉しいよ
会った時、もっとちゃんと謝りたい
ごめんな』
俺も、日野とちゃんと話がしたかった。
それで、明日の約束を取り付けたのだ。
「荒木…本当に申し訳ございませんでした
私は荒木の飼い犬です、荒木だけの飼い犬です
今回のことで、改めて自分の気持ちに気が付きました
今後は荒木を一生お守りいたします」
白久の力強い言葉を聞きながら、俺は誇らしい気持ちになった。
白久は自分の存在を変質するほど好きだった飼い主より、俺を選んでくれたのだ。
皆の前で、俺を選ぶと誓ってくれたのだ。
あの瞬間、俺は白久の飼い主に対して確かな優越感を感じていた。
「うん、俺も最後まで白久をきちんと飼う
誰にも負けないくらい、白久のこと愛すよ
まだ頼りない飼い主だけど、頑張るから
だから、ずっと側にいて」
俺はきっぱりとそう告げた。
白久の、帰りたくても帰れない、愛の始まりの場所になろうと決心する。
「荒木、私の飼い主…」
白久がギュッと俺の手を握ってきた。
俺もそれを握り返し、俺たちはしっかりと手を繋ぎ、お互いの存在を確認する。
「でも、俺、まだちょっと怒ってるから…
だから、俺の我が儘聞いてくれる?」
俺の言葉に、白久は即座に反応した。
「何なりとご命令ください
私に出来ることであれば、必ず成し遂げてみせます!」
きっと白久はそう言ってくれるだろうと思っていたので、俺はその答えに満足する。
「じゃあ、白久も夏休みとって、俺に付き合って
2人で一緒の夏休みを過ごしたいんだ
どこかに遊びに行こう
今回のこと、日野ばっかりが悪い訳じゃないけど…
飼い主がやらかしたことは、飼い犬も責任取るべきじゃないかと思うんだ
白久の穴は黒谷に埋めてもらって、2、3日休んでよ
で、今度はダメだって言っても、白久のとこに泊まるからね」
俺が言うと
「はい!どこへでもお供いたします!
私の部屋でよければ、どうぞお泊まりください
後でクロに連絡をいれます、渋られても絶対休みますから!」
白久は迷わずそう答えた。
「うん!」
俺の心は、その言葉で幸せに満たされる。
俺達は手を繋いだまま、マンションへの道を歩いて行く。
これからも、何があっても、ずっとずっと2人で歩いていきたい。
俺は、心の中で強くそう思うのであった。