しっぽや【アラシ】(No.23~31)
「体に出ていた影響は暫く残るかもしれませんが、じきに消えますよ
どうも貴方は取り憑かれやすい方のようですね
よろしければ、こちらをお持ちください」
大人びた物言いで、小学生くらいの髪の長い女の子が俺に数珠を手渡してくれる。
その数珠を受け取ると、婆ちゃんのお守りを手にしているような安心感に包まれた。
「この犬を飼っていただければ、きちんと貴方をお守りさせますよ」
その女の子は、黒谷を見ながら悪戯っぽい笑顔を向けてくる。
俺は強く頷いて
「黒谷は、俺の飼い犬です」
そう告げていた。
俺を抱きしめる黒谷の腕に力がこもり
「必ず貴方をお守りします」
そう言って、優しくキスをしてくれる。
熱く唇を重ね合う俺たちに向けられる視線で我に返ると、荒木が戸惑った顔でこちらを見ていた。
「日野…?お前、大丈夫か?
本物の日野に戻ってる?」
あれだけ酷いことをしてしまった俺に、荒木はまだそんな言葉をかけてくれた。
泣きはらして真っ赤になった目をしているのは、俺のせいだろう。
「荒木…ごめん…、俺、荒木に酷いこといっぱいしたし、いっぱい言った…
ごめん…」
荒木の顔を見ていたら、涙が溢れてくる。
こいつは高校に入って出来た友達で、俺より1cm背が高いけどチビで、童顔で、良い奴で、俺にないものを持ってて、羨ましくて…
弟みたいに可愛い奴で、一緒にいると楽しくて、大事な親友なんだ。
「ごめん、ごめん荒木、ごめん…」
泣きながら謝る俺に荒木が近寄ってくる。
「日野…お婆さんのお見舞い、俺も一緒に行って良い?」
少し微笑んで聞いてくれる荒木に、俺はコクコクと頷いていた。
「物理の宿題、見せてくれる?」
荒木の言葉に
「今度は俺がおごるから、また一緒に勉強しよう!」
俺は笑いながら答える。
「じゃ、俺、スペシャルカツサンドとフィッシュパン、バジルベーコンエピにクリームパン、それとチョコチップスコーンな
飲み物はコーヒー牛乳、半分こだ」
そんな事を言いながら、泣きはらした顔で精一杯の笑顔を向けてくれる親友に
「でも、写すだけじゃ覚えないぞ!」
俺も泣き笑いの顔で答えていた。
「黒谷、こいつ大食らいだから大変だぜ
人の3倍メシ食うんだ
今度から、黒谷も捜索に出てバリバリ働かないと養えないぞ」
荒木が少しイジワルくそう言った。
俺は顔が赤くなってしまう。
「大丈夫ですよ、和犬ミックスなら僕だってすぐに探し出せるんです
後は長瀞に、節約レシピを教えてもらおう
日野、僕が美味しいもの色々作ってあげますからね」
黒谷が俺を見ながら優しく笑ってそう言った。
その笑顔に
『この中で、黒谷が一番可愛くて格好良い』
俺は早くも親バカモードになっていた。
気が付くと、夏になると感じていた体のダルさや辛さが消えている。
壁に掛かっていたカレンダーを見て
『今日は終戦記念日か…』
俺は今更ながらに気が付いた。
確か曾祖父さんが戦争に言ったという話は聞いた事があったが、俺には遠い過去の話としか思えなかった太平洋戦争。
抱きしめてくれる黒谷の顔を見ながら、俺にとっての長い長い戦争が終った事を実感した。
俺はやっと帰るべき場所に帰って来れたのだ。
俺を守ってくれる者のいる場所、愛する飼い犬の腕の中に。
どうも貴方は取り憑かれやすい方のようですね
よろしければ、こちらをお持ちください」
大人びた物言いで、小学生くらいの髪の長い女の子が俺に数珠を手渡してくれる。
その数珠を受け取ると、婆ちゃんのお守りを手にしているような安心感に包まれた。
「この犬を飼っていただければ、きちんと貴方をお守りさせますよ」
その女の子は、黒谷を見ながら悪戯っぽい笑顔を向けてくる。
俺は強く頷いて
「黒谷は、俺の飼い犬です」
そう告げていた。
俺を抱きしめる黒谷の腕に力がこもり
「必ず貴方をお守りします」
そう言って、優しくキスをしてくれる。
熱く唇を重ね合う俺たちに向けられる視線で我に返ると、荒木が戸惑った顔でこちらを見ていた。
「日野…?お前、大丈夫か?
本物の日野に戻ってる?」
あれだけ酷いことをしてしまった俺に、荒木はまだそんな言葉をかけてくれた。
泣きはらして真っ赤になった目をしているのは、俺のせいだろう。
「荒木…ごめん…、俺、荒木に酷いこといっぱいしたし、いっぱい言った…
ごめん…」
荒木の顔を見ていたら、涙が溢れてくる。
こいつは高校に入って出来た友達で、俺より1cm背が高いけどチビで、童顔で、良い奴で、俺にないものを持ってて、羨ましくて…
弟みたいに可愛い奴で、一緒にいると楽しくて、大事な親友なんだ。
「ごめん、ごめん荒木、ごめん…」
泣きながら謝る俺に荒木が近寄ってくる。
「日野…お婆さんのお見舞い、俺も一緒に行って良い?」
少し微笑んで聞いてくれる荒木に、俺はコクコクと頷いていた。
「物理の宿題、見せてくれる?」
荒木の言葉に
「今度は俺がおごるから、また一緒に勉強しよう!」
俺は笑いながら答える。
「じゃ、俺、スペシャルカツサンドとフィッシュパン、バジルベーコンエピにクリームパン、それとチョコチップスコーンな
飲み物はコーヒー牛乳、半分こだ」
そんな事を言いながら、泣きはらした顔で精一杯の笑顔を向けてくれる親友に
「でも、写すだけじゃ覚えないぞ!」
俺も泣き笑いの顔で答えていた。
「黒谷、こいつ大食らいだから大変だぜ
人の3倍メシ食うんだ
今度から、黒谷も捜索に出てバリバリ働かないと養えないぞ」
荒木が少しイジワルくそう言った。
俺は顔が赤くなってしまう。
「大丈夫ですよ、和犬ミックスなら僕だってすぐに探し出せるんです
後は長瀞に、節約レシピを教えてもらおう
日野、僕が美味しいもの色々作ってあげますからね」
黒谷が俺を見ながら優しく笑ってそう言った。
その笑顔に
『この中で、黒谷が一番可愛くて格好良い』
俺は早くも親バカモードになっていた。
気が付くと、夏になると感じていた体のダルさや辛さが消えている。
壁に掛かっていたカレンダーを見て
『今日は終戦記念日か…』
俺は今更ながらに気が付いた。
確か曾祖父さんが戦争に言ったという話は聞いた事があったが、俺には遠い過去の話としか思えなかった太平洋戦争。
抱きしめてくれる黒谷の顔を見ながら、俺にとっての長い長い戦争が終った事を実感した。
俺はやっと帰るべき場所に帰って来れたのだ。
俺を守ってくれる者のいる場所、愛する飼い犬の腕の中に。