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しっぽや(No.11~22)

ドンッ!!!
ゴロゴロゴロゴロゴロ

そんな時、大きな轟音が響いてきた。
「うわ、デッカいの近くに落ちたみたいだ
 ここ、停電とか大丈夫?」
俺が話しかけても、白久は俺の胸に顔を埋め震え続けている。
その光景には、見覚えがある気がしてきた。
「白久…雷、怖いんだね?」
クロスケがまだ若かった時、雷に怯えて俺のシャツの中に逃げ込もうともがいていた姿と、今の白久の姿がダブって見えた。

ドンッ!!!!!!

一際大きな轟音がとどろくと
「ヒッ!」
白久の口から小さな悲鳴が上がる。
『雷が苦手な犬猫って多いよな』
可哀想ではあるが、その姿は何だか可愛らしかった。
俺は安心させるように白久を抱きしめ
「大丈夫、大丈夫、家の中に居れば安全だから
 台風と違って、あーゆー雲はすぐ行っちゃうからね」
優しく、そう語りかけてみる。
白久は多少落ち着いてきたものの、まだ震えていた。
「ベッド行こ?
 シーツ被ってると、少しはマシだよ?」
それは昔、クロスケを落ち着かせるためによくやっていた手であった。

動きのぎこちない白久を引っ張り、俺達はベッドに移動するとシーツの中に頭まで潜り込んだ。
白久の髪を優しく撫で何度もキスをすると、やっと白久の震えが止まり落ち着きを取り戻してきた。
「お見苦しいところを見せてしまい、申し訳ありませんでした
 どうもあの『雷』というものは苦手でして…」
白久は恥入ったようにそう告げてくる。
「落ち着いてきた?良かった
 大丈夫、俺が付いてるからね」
そう言ってまたキスをすると
「はい」
白久は嬉しそうに笑ってキスを返してくる。
俺達はそのまま唇を合わせ、舌を絡め合った。
何も着ていない白久とベッドの中で密着している俺は、どうしても興奮してしまう。
「事務所に戻る前に、しよ
 雨が小降りにならないと、移動するのも大変だしさ」
そう囁くと
「そうですね、荒木とこうしていると雷を忘れられる」
白久は俺の着ている物を脱がせ始めた。

白久の唇が俺の首筋や胸を這い、舌が胸の突起を刺激する。
大きな手に優しく体の中心を包み込まれ、上下に擦られると激しい快感に襲われる。
「ああ、ん…白久…白久…」
甘い喘ぎが絶え間なく自分の口から漏れだした。
「荒木…呼んでください
 今は貴方の言葉だけを聞いていたい」
微かに雷の落ちる音が聞こえた気がしたが、今の俺達にはお互いの言葉しか耳に入らなかった。

俺を後ろから貫いた白久が、逞しく動き始める。
その動きに併せて、俺も自分から腰を動かしていた。
「ああっ!!白久っ!」
「荒木、荒木!!」
俺達は互いの名を呼びながら、熱い想いを解放しあう。
白久に対する愛が溢れるその瞬間は、何度体験しても特別なものであった。
想いを解放しあっても、俺達はまだ暫く繋がり合っている。
そんな時間も、俺にはかけがえのないものに感じられた。


行為の後シーツから顔を出すと、部屋はうっすら明るくなっていた。
「日が出てきてる、すぐに止むよ」
俺が言うと
「もう、あの恐ろしい音は聞こえません」
白久も笑顔になる。
「雷がいる時は、いつも荒木にこうして側にいて欲しいです」
悪戯っぽく笑いながら舌を出す白久に
「うん、夏休みの間は出来るだけこっちに来るよ
 俺がいれば、雷なんて平気だからね」
安心させるようにそう言った。
俺は白久が可愛くて愛しくて、幸せな気分になる。

「雨が小降りになったら、事務所に参りましょう
 このような雨の後は、犬の捜索依頼が多いのですよ
 外にいる方々や、散歩中だった方々が驚いて逃げ出すケースが多いですからね
 今日は空の初仕事の日なのです
 お手並み拝見といきますか」
白久はまた悪戯っぽく笑った。
「あのハスキーの人、ミイちゃんの警護じゃなくなるんだ」
俺が聞くと
「ええ、飼い主が決まりましたからね
 守るべきお方が出来た者は、その方の仕事や生活を手伝うか、しっぽやに所属するのが通例です
 将来もし荒木が起業したら、私はその手助けをしたいです
 お役に立てるよう、もっともっと勉強しますね」
白久は真面目にそう答える。
「いや、自分で事業なんて起こせないよ
 それより俺も、もっと犬のこと勉強しなきゃ
 猫飼いとしてはプロだって思ってるけどさ、犬は白久が初めてだから
 俺も、白久の役に立ちたい…」
そう言う俺を、白久は優しく抱きしめてくれた。

「荒木に飼っていただけて、私は本当に幸せです」
白久がしみじみと呟いたので、俺は胸が熱くなる。
「白久」
俺は優しく名前を呼んで唇を合わせた。
「着替え、少しこの部屋に置いてもらって良い?
 仕事の後、時間あったら買いに行こう
 一緒に選んで欲しいんだ」
俺が言うと
「人間のファッションと言うものはよくわかりませんが…
 お供させていただきます!」
白久は晴れやかに笑う。

「よし!じゃあ、そろそろ着替えて出ようか
 依頼多かったら、俺も外回り手伝うよ
 発見した犬を送り届ける、とかなら出来るし」
「はい!」

それから俺達は、雨上がりの道を並んで事務所まで出勤する。
隣に白久がいてくれる幸せをかみしめながら、俺は始まったばかりの夏休みを早くも満喫するのであった。
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