しっぽや(No.158~162)
タケぽんとひろせが戻ってくる前に、スイーツのため皆でテーブルの上を片付けていく。
ほどなく2人はトレーを持って戻ってきた。
「今回、先輩達のと被っちゃてるんです」
タケぽんが苦笑する。
「プチ祝いの時の巻き巻きメニューが好評だったので、今回も巻物を作ってみたんです
ベタですが、和洋中のロールケーキ3種類」
ひろせは3色のロールケーキが2個ずつのっている大皿をテーブルの真ん中に置いた。
「洋はフルーツロール、和は抹茶生地に小豆クリーム、中はマーラーカオに杏仁豆腐風味のクリーム
色々食べ比べてみてください」
ひろせはロールケーキを切り分けてくれた。
「それと、これが1番俺達らしいかなと思って作りました
ミルクティーのロールクッキーです
紅茶風味の生地とミルク風味の生地を一緒にロールしたんです
豆乳アイスも作ってきたので、一緒に食べてみてください」
タケぽんは大きなかごに入った大量のクッキーと、アイスの入ったタッパーを持ってきた。
「ミルクティー、ジャスミン茶、ほうじ茶がポットに用意してあります
水出しのコーヒー、桜緑茶、ダージリンもあります
お好きな物を飲んで下さい」
ポットの側には紙コップが置かれていた。
「和のケーキ、カルカンにしなかったんだ
でもこれも美味しいね、抹茶と小豆は鉄板の組み合わせだもんな」
俺はロールケーキを口にして、タケぽんに話しかけた。
「今回は『ひろせらしさ』を追求して、ベタ中のベタにしてみたんです
やっぱひろせって洋菓子のイメージだから」
デレデレした顔のタケぽんに
「ロールケーキを巻き寿司の具にして『ひろせ巻き』とか言ったら、こいつ食いつきそうだな」
日野はニヤニヤしてそんなことを言っていた。
「酢飯とロールケーキはちょっと…
いや、まてよ?甘い赤飯に和風ロールだったらありかも
けっこー良くないッスか?今度巻いてみてくださいよ」
興奮気味のタケぽんに
「冗談だよ、そんな柔らかい具を巻けるか」
日野は面食らった顔になっていた。
「俺とひろせも先輩達に巻かれたいのにー」
タケぽんが不満げに呟くと
「もうとっくに巻き込んでるぜ、便利な後輩手放すわけないだろ」
日野はタケぽんに腕を回し、俺の顔を見てウインクする。
「部活やってない俺の唯一の後輩だもんな
俺も簡単には手放さないから」
俺は笑ってタケぽんの腕を叩いた。
「また都合がついたら集まろうな、花見とかさ
桜ばかりが花じゃない、芝桜やツツジ、アジサイもいいもんだぜ
次はモッチーくんとソシオの歓迎会だ」
ゲンさんの言葉で締めて、楽しかった大パーティーはお開きになった。
桜さんや月さんはゲンさんの部屋に泊まっていくらしい。
それ以外は自分達の部屋に帰っていった。
「巻き寿司、好評だったな
巻き方、上手くなってたぜ」
部屋の前での別れ際、日野に誉められて俺は嬉しくなる。
「まあ、お前にはかなわないけどな
俺まだ、絵に見える巻き寿司作れる気がしないもん」
「そんじゃ、そのうちまた巻き寿司修行しよう
花見の弁当に巻き寿司は鉄板だからさ
三毛猫の色合いは簡単に出せるから新しい飼い主が来たらご馳走して、先輩飼い主の威厳を示そうぜ」
日野との約束に心が躍った。
「それ良いね楽しそう!
大学始まるまでの春休み、色々満喫したくなってきた
教習所は、もう少し先でいいかな
それか、ゆとりのあるコースを選ぶよ」
「なら、俺も一緒に行こうかなー
高校生最後の春休み、新しいことにチャレンジしたりして楽しく過ごしたいじゃん」
「同感」
俺達はこれから始まる春休みに浮き立った思いを感じ、飼い犬の部屋に帰っていった。
「荒木、お疲れさまでした」
クッションに座り込んだ俺に、白久が優しい眼差しを向けてくる。
「白久もお疲れさま
ご用聞きに回ってたから、パーティー会場ではゆっくりしゃべれなかったね」
俺は今更ながら、そのことに気がついた。
「皆に喜んでもらえたので良しとしましょう
私達の巻き寿司が好評で嬉しかったです」
「皆を俺達の運命に巻き込めたもんね」
俺達はクスクスと笑いあった。
「皆のメニューも美味しかった、白久、作ってばっかりいないで食べた?」
「はい、沢山ご馳走になりました
大麻生の中華の火加減は勉強になります
教わったメニュー、今度作ってみますね
ただ、エビはプリン体を多く含むので、あまり一度に食べさせない方が良いと長瀞に注意されました
彼はゲンの飲む、日々のビールの量にも気を使っています
私の知識はまだまだ実生活に則していないようです
もっと荒木の健康に気を付けなければ」
白久が真剣な瞳で俺を見つめてくる。
以前の飼い主を病で亡くしている白久は『人の健康』を維持することも、飼い主を守ることだと理解しているのだ。
そして白久が守りたいと思っている相手は、前の飼い主ではなく俺だった。
「うん、俺のこと気を付けてて」
俺は白久の側に移動して体を彼に預けた。
しっかりと抱き抱えられ、満足感と共に興奮の波が押し寄せてくる。
俺は白久と唇を合わせ
「今日の最後のデザート、食べる?」
そう囁いてみた。
「はい、今日1番のお楽しみです」
白久は頬を染め味わうように唇を合わせてくる。
パーティーの締めくくりは、いつものように白久との甘い一時で終わるのであった。
ほどなく2人はトレーを持って戻ってきた。
「今回、先輩達のと被っちゃてるんです」
タケぽんが苦笑する。
「プチ祝いの時の巻き巻きメニューが好評だったので、今回も巻物を作ってみたんです
ベタですが、和洋中のロールケーキ3種類」
ひろせは3色のロールケーキが2個ずつのっている大皿をテーブルの真ん中に置いた。
「洋はフルーツロール、和は抹茶生地に小豆クリーム、中はマーラーカオに杏仁豆腐風味のクリーム
色々食べ比べてみてください」
ひろせはロールケーキを切り分けてくれた。
「それと、これが1番俺達らしいかなと思って作りました
ミルクティーのロールクッキーです
紅茶風味の生地とミルク風味の生地を一緒にロールしたんです
豆乳アイスも作ってきたので、一緒に食べてみてください」
タケぽんは大きなかごに入った大量のクッキーと、アイスの入ったタッパーを持ってきた。
「ミルクティー、ジャスミン茶、ほうじ茶がポットに用意してあります
水出しのコーヒー、桜緑茶、ダージリンもあります
お好きな物を飲んで下さい」
ポットの側には紙コップが置かれていた。
「和のケーキ、カルカンにしなかったんだ
でもこれも美味しいね、抹茶と小豆は鉄板の組み合わせだもんな」
俺はロールケーキを口にして、タケぽんに話しかけた。
「今回は『ひろせらしさ』を追求して、ベタ中のベタにしてみたんです
やっぱひろせって洋菓子のイメージだから」
デレデレした顔のタケぽんに
「ロールケーキを巻き寿司の具にして『ひろせ巻き』とか言ったら、こいつ食いつきそうだな」
日野はニヤニヤしてそんなことを言っていた。
「酢飯とロールケーキはちょっと…
いや、まてよ?甘い赤飯に和風ロールだったらありかも
けっこー良くないッスか?今度巻いてみてくださいよ」
興奮気味のタケぽんに
「冗談だよ、そんな柔らかい具を巻けるか」
日野は面食らった顔になっていた。
「俺とひろせも先輩達に巻かれたいのにー」
タケぽんが不満げに呟くと
「もうとっくに巻き込んでるぜ、便利な後輩手放すわけないだろ」
日野はタケぽんに腕を回し、俺の顔を見てウインクする。
「部活やってない俺の唯一の後輩だもんな
俺も簡単には手放さないから」
俺は笑ってタケぽんの腕を叩いた。
「また都合がついたら集まろうな、花見とかさ
桜ばかりが花じゃない、芝桜やツツジ、アジサイもいいもんだぜ
次はモッチーくんとソシオの歓迎会だ」
ゲンさんの言葉で締めて、楽しかった大パーティーはお開きになった。
桜さんや月さんはゲンさんの部屋に泊まっていくらしい。
それ以外は自分達の部屋に帰っていった。
「巻き寿司、好評だったな
巻き方、上手くなってたぜ」
部屋の前での別れ際、日野に誉められて俺は嬉しくなる。
「まあ、お前にはかなわないけどな
俺まだ、絵に見える巻き寿司作れる気がしないもん」
「そんじゃ、そのうちまた巻き寿司修行しよう
花見の弁当に巻き寿司は鉄板だからさ
三毛猫の色合いは簡単に出せるから新しい飼い主が来たらご馳走して、先輩飼い主の威厳を示そうぜ」
日野との約束に心が躍った。
「それ良いね楽しそう!
大学始まるまでの春休み、色々満喫したくなってきた
教習所は、もう少し先でいいかな
それか、ゆとりのあるコースを選ぶよ」
「なら、俺も一緒に行こうかなー
高校生最後の春休み、新しいことにチャレンジしたりして楽しく過ごしたいじゃん」
「同感」
俺達はこれから始まる春休みに浮き立った思いを感じ、飼い犬の部屋に帰っていった。
「荒木、お疲れさまでした」
クッションに座り込んだ俺に、白久が優しい眼差しを向けてくる。
「白久もお疲れさま
ご用聞きに回ってたから、パーティー会場ではゆっくりしゃべれなかったね」
俺は今更ながら、そのことに気がついた。
「皆に喜んでもらえたので良しとしましょう
私達の巻き寿司が好評で嬉しかったです」
「皆を俺達の運命に巻き込めたもんね」
俺達はクスクスと笑いあった。
「皆のメニューも美味しかった、白久、作ってばっかりいないで食べた?」
「はい、沢山ご馳走になりました
大麻生の中華の火加減は勉強になります
教わったメニュー、今度作ってみますね
ただ、エビはプリン体を多く含むので、あまり一度に食べさせない方が良いと長瀞に注意されました
彼はゲンの飲む、日々のビールの量にも気を使っています
私の知識はまだまだ実生活に則していないようです
もっと荒木の健康に気を付けなければ」
白久が真剣な瞳で俺を見つめてくる。
以前の飼い主を病で亡くしている白久は『人の健康』を維持することも、飼い主を守ることだと理解しているのだ。
そして白久が守りたいと思っている相手は、前の飼い主ではなく俺だった。
「うん、俺のこと気を付けてて」
俺は白久の側に移動して体を彼に預けた。
しっかりと抱き抱えられ、満足感と共に興奮の波が押し寄せてくる。
俺は白久と唇を合わせ
「今日の最後のデザート、食べる?」
そう囁いてみた。
「はい、今日1番のお楽しみです」
白久は頬を染め味わうように唇を合わせてくる。
パーティーの締めくくりは、いつものように白久との甘い一時で終わるのであった。