しっぽや(No.11~22)
『獣の時のように、くわえて移動出来た方が楽だったな…』
何とか羽生を背から落とさないよう事務所まで運びソファーに寝かせると、私の上着をかけてやる。
羽生はまだ、気持ちよさそうに眠っていた。
「子守、ご苦労さん
おじちゃんも、若い子と遊べて楽しかった?」
黒谷がニヤニヤしながら聞いてくる。
「まあ、体を動かすと言うのは、気持ちの良いものだ
羽生はとても凄い身体能力の持ち主だぞ!
飼い主がいなければ、武衆にスカウトしたいぐらいだ
と言うか、黒谷も座ってばかりいないで、たまには外に出たらどうだ?」
私が言うと
「外には出てるよ、こないだ白久と一緒に『ファーストフード』食べてきた
体に悪いって言われてるけど、美味しいもんだね
あそこの店は『レベルが高い』って、荒木のお勧めなんだってさ」
黒谷はシレッとそんな事を言う。
「黒谷、武衆に入る気は無いのか?
お主が入ってくれれば、鬼に金棒なのだがな
白久に飼い主が現れたのだから、ここの所長の座を彼に譲れば良いではないか
私より、お主の方が力がある
武衆を率いる者として優れていよう」
私は真面目にそう言うが
「ヤだよ面倒臭い、今のあそこ、一部『ハスキー軍団』だろ?
和犬の僕とはノリが合わないの
第一、むさ苦しい武衆を率いるなんてごめんだね
僕は熱血漢ってのとは程遠い、トレンディーボーイだからさー」
黒谷は気障ったらしく笑ってみせた。
「黒谷『トレンディー』は死語だから、うちのハスキー達に使わせるなとゲン殿から厳重注意を受けている…」
私は呆れた顔をしてみせる。
「え?いつから死語に?
もー、最近の流行ってやつは、移り変わり激しいなー
僕も中川先生の学校で授業受けないと駄目かな」
黒谷が溜め息をつきながら言う。
「あ、中川先生って羽生の飼い主ね
影森マンションで化生のために学校開いてくれてるんだ
ハスキー達も通わせたら?
あいつら、平仮名もろくに読めないんだろ?」
黒谷の提案は悪くないものであった。
「うむ…彼等は気のいい者達で、腕っ節も強く、頼りがいはあるのだが…
少々オツムが…」
言いよどむ私に
「うん、あいつら春ってより、頭が常夏って感じだもんな
古い言葉で言うと『浮かれポンチ』
よく化生出来たと思うよ、実際
君もよく纏めてるよね、あの集団」
黒谷がまたシレッとそんな事を言う。
「本っっっっ当に大変なのだ!
だから黒谷、頼むから代わってくれ!」
万感の思いを込めて言った私の言葉を
「やだ」
黒谷は2語で否定した…
「あれ、俺寝ちゃったんだ?」
羽生がムクリと起き上がる。
「ああ、疲れたのであろう、私も思わず加減を忘れてしまった
もう大丈夫か?」
私の問いに
「うん、何かスッキリした」
羽生は爽やかな笑顔を向けた。
「わ、もうこんな時間!
ごめん、俺、全然仕事しなかった
猫の依頼来た?」
時計を見て慌てる羽生に
「今日の仕事は『寂しい独り者のおじちゃんに、一時の夢を与える』だよ
見事、依頼達成だ」
黒谷がニヤニヤと答える。
「黒谷に『おじちゃん』と言われると、何だか腹が立つな
私より何世紀も年上の分際で…」
私はジロリと黒谷を睨む。
「ちょっと、世紀はないでしょ、三峰様じゃないんだから」
黒谷の言い訳には答えず
「羽生、今度私も中川殿の授業を受けさせてもらう事にするよ
部下も少々引き連れていくが、大丈夫であろうか
きちんと私が見張っている故、中川殿に危害が及ぶ事は無いと思うが
何というか、あまり頭が良くない者達なので…」
言いよどむ私に、羽生は笑顔を向ける。
「うん、サトシそーゆー方が好きなの
よく一緒にドラマを見るよ
『今の子は大人しくて張り合いがない』って言ってる
乱暴で、超おバカな子がいたら、連れてきて!」
羽生は子猫故の天真爛漫さで、私と黒谷が息を飲むような残酷な事を口にするのであった…
何とか羽生を背から落とさないよう事務所まで運びソファーに寝かせると、私の上着をかけてやる。
羽生はまだ、気持ちよさそうに眠っていた。
「子守、ご苦労さん
おじちゃんも、若い子と遊べて楽しかった?」
黒谷がニヤニヤしながら聞いてくる。
「まあ、体を動かすと言うのは、気持ちの良いものだ
羽生はとても凄い身体能力の持ち主だぞ!
飼い主がいなければ、武衆にスカウトしたいぐらいだ
と言うか、黒谷も座ってばかりいないで、たまには外に出たらどうだ?」
私が言うと
「外には出てるよ、こないだ白久と一緒に『ファーストフード』食べてきた
体に悪いって言われてるけど、美味しいもんだね
あそこの店は『レベルが高い』って、荒木のお勧めなんだってさ」
黒谷はシレッとそんな事を言う。
「黒谷、武衆に入る気は無いのか?
お主が入ってくれれば、鬼に金棒なのだがな
白久に飼い主が現れたのだから、ここの所長の座を彼に譲れば良いではないか
私より、お主の方が力がある
武衆を率いる者として優れていよう」
私は真面目にそう言うが
「ヤだよ面倒臭い、今のあそこ、一部『ハスキー軍団』だろ?
和犬の僕とはノリが合わないの
第一、むさ苦しい武衆を率いるなんてごめんだね
僕は熱血漢ってのとは程遠い、トレンディーボーイだからさー」
黒谷は気障ったらしく笑ってみせた。
「黒谷『トレンディー』は死語だから、うちのハスキー達に使わせるなとゲン殿から厳重注意を受けている…」
私は呆れた顔をしてみせる。
「え?いつから死語に?
もー、最近の流行ってやつは、移り変わり激しいなー
僕も中川先生の学校で授業受けないと駄目かな」
黒谷が溜め息をつきながら言う。
「あ、中川先生って羽生の飼い主ね
影森マンションで化生のために学校開いてくれてるんだ
ハスキー達も通わせたら?
あいつら、平仮名もろくに読めないんだろ?」
黒谷の提案は悪くないものであった。
「うむ…彼等は気のいい者達で、腕っ節も強く、頼りがいはあるのだが…
少々オツムが…」
言いよどむ私に
「うん、あいつら春ってより、頭が常夏って感じだもんな
古い言葉で言うと『浮かれポンチ』
よく化生出来たと思うよ、実際
君もよく纏めてるよね、あの集団」
黒谷がまたシレッとそんな事を言う。
「本っっっっ当に大変なのだ!
だから黒谷、頼むから代わってくれ!」
万感の思いを込めて言った私の言葉を
「やだ」
黒谷は2語で否定した…
「あれ、俺寝ちゃったんだ?」
羽生がムクリと起き上がる。
「ああ、疲れたのであろう、私も思わず加減を忘れてしまった
もう大丈夫か?」
私の問いに
「うん、何かスッキリした」
羽生は爽やかな笑顔を向けた。
「わ、もうこんな時間!
ごめん、俺、全然仕事しなかった
猫の依頼来た?」
時計を見て慌てる羽生に
「今日の仕事は『寂しい独り者のおじちゃんに、一時の夢を与える』だよ
見事、依頼達成だ」
黒谷がニヤニヤと答える。
「黒谷に『おじちゃん』と言われると、何だか腹が立つな
私より何世紀も年上の分際で…」
私はジロリと黒谷を睨む。
「ちょっと、世紀はないでしょ、三峰様じゃないんだから」
黒谷の言い訳には答えず
「羽生、今度私も中川殿の授業を受けさせてもらう事にするよ
部下も少々引き連れていくが、大丈夫であろうか
きちんと私が見張っている故、中川殿に危害が及ぶ事は無いと思うが
何というか、あまり頭が良くない者達なので…」
言いよどむ私に、羽生は笑顔を向ける。
「うん、サトシそーゆー方が好きなの
よく一緒にドラマを見るよ
『今の子は大人しくて張り合いがない』って言ってる
乱暴で、超おバカな子がいたら、連れてきて!」
羽生は子猫故の天真爛漫さで、私と黒谷が息を飲むような残酷な事を口にするのであった…