しっぽや(No.135~144)
その後、飼い主達を部屋に残し、僕達飼い犬が買い物に行くことにした。
何となく僕達の間では『誰が一番飼い主の好みに合う物を作れるか』と言う雰囲気になっていた。
「ここはやはり、一番長く同じ時を過ごしている空に軍配が上がりそうだな」
スーパーまでの道を歩きながら大麻生が言うと、空は浮かない顔になった。
「俺、カズハに手料理っての食ってもらったこと、あんまりないんだ
オムレツにケチャップで字を書いたりしてるくらいでさ
カズハは俺に色々作ってくれて、俺が好きなもの知ってるのに
外食が多いから、カズハがどの店の何が好きかってのは知ってんだけど…
天ぷらなんて揚げたこと無いから、覚えたくてさ
大麻生、揚げ方教えて
俺、今まで愛玩犬の地位に甘えすぎてたかも
愛らしさだけじゃ、カズハの心は癒せても役に立てないって気が付いた」
突っ込みどころ満載の空の言葉だったけど、シュンとする彼が本気で飼い主の役に立ちたがっている気持ちは理解できる。
それは、僕も思っている事だったからだ。
「自分も長瀞にはまだまだ及ばない、日々勉強だよ
ウラは以前に飼っていただいたこともある方のお孫さんなので、自分でも好みが分かるのが強みだ
そういえば、ウラは最初から自分の料理には好意的であったな
それで彼に誉められたくて、レパートリーを増やしていったのだ
空はカズハとは違う生活をしていたのだから、お互いの好みを把握するところから始めて、作り方も学ぶと良い
自分より、カズハに教えてもらうと良いのではないか?
ウラもカズハに習って、色々な茶葉でミルクティーを淹れてくれるようになったよ
飼い主に作っていただくと、天上の飲み物のように格別だ」
ノロケで締められた大麻生の言葉を、僕も空も真剣に聞いていた。
「カズハが教えてくれるなら、俺、覚えられそうな気がする
頑張るよ」
空はいつもの調子に戻って朗らかに笑ってみせた。
「僕も負けないよ
習作作って、黒谷みたいに事務所の皆に食べてもらおっと」
僕も2人に宣言する。
「まずは、今夜の蕎麦用の天ぷら素材を選ぶところからだな
今回は大量に出来てしまいそうだ
新居を油臭くしてしまうだろう、すまないね」
苦笑する大麻生に
「大丈夫、今は良い消臭剤があるから
猫の体にも害のない物をナリと選んで、買ってあるんだ
人間の体って、案外丈夫だよね
犬だったときダメなことが平気になったりして、面白い」
僕は笑顔で答えた。
「そうそう、おかげでハンバーグもすき焼きもカレーも食べられる
掻き揚げに長ネギやタマネギが入ってたって大丈夫
飼い主と同じ物を食べられるんだ」
空の言葉に僕と大麻生は大きく頷いた。
飼い主と同じ体験が出来るこの体になれたことが、嬉しかった。
スーパーで飼い主の好むような食材を買い込んで、飼い主の待つ部屋に帰っていく。
それはとてもワクワクする行為だった。
「お帰りふかや、何だか凄い荷物だね」
ナリは僕達の荷物を見て目を丸くする。
「買い物袋から長ネギが見えるって、いかにも『買い物してきました』って感じ
お使い犬、可愛いな」
カズハに頭を撫でられて
「愛玩犬だって、これくらいは出来るんだ」
空は得意げな顔で笑っていた。
「これ、3日分くらいあるんじゃねーの?
3日連続パーティーってのも楽しそう
もっともこの量、日野ちゃんなら1日で食っちまうだろうけどな」
ウラが袋の中身を確認してキシシっと笑う。
「飼い主に喜んでもらいたくて、少し張り切りすぎてしまいました」
「ソウちゃんは頑張り屋だもんな
天ぷら、期待しちゃうぜ」
ウラに優しくキスをされて、大麻生は頬を染めて嬉しそうに頷いた。
『手伝うよ』と言う飼い主をリビングに残し、僕達はキッチンで天ぷらと格闘する。
「黒谷と白久は飼い主が出来てから、よく揚げ物するって言ってたよな
カズハ、野菜の素揚げが好きだから、それも作れるようになろっと」
「高校生は食べ盛りだから、揚げ物は鉄板だろう
ウラはどちらかというと炒め物が好きでな
それを丼物にすると喜んでくれるんだ」
「ナリは『季節を感じられる物』が好きだって言ってた
正月のお雑煮とかね
今回、フキノトウがあれば良かったのに
でも、春菊の掻き揚げも好きそうかも」
「ウラはエビが好きだから、小エビではなく剥(む)きエビを入れて良いかな」
「カズハは人参の掻き揚も好きだったな
人参、人間の体に良いんだって」
飼い主の好きなもののことを考えながら揚げていくと、予想通り大量の天ぷらが出来てしまった。
「明日も夕飯食べに来てよ
明日は残りを天丼にしよう」
僕が誘ったら
「良いね、カズハ、ナリやウラと気が合うみたいだから、きっと喜ぶよ」
「ウラも2人いると楽しそうだ
丼物が好きだし、天丼パーティーを喜ぶだろう」
2人とも快く頷いてくれる。
「カズハとウラが、ナリと仲良くなってくれて良かった
ありがとう」
僕が笑うと、2人も『お互い様だ』と笑ってくれるのであった。
飼い主達は僕達の作った大量の天ぷらに驚きつつも
「ありがとう、ふかや、こんなに揚げるの大変だったでしょ」
「すげー、どれも美味そう
やっぱ天ぷらは揚げたてが1番だよな
シンプルな蕎麦もぐっと美味くなる」
「春菊と人参とエビの掻き揚げだ
これ、お店では無い組み合わせだよね
凄く気になる」
それぞれ飼い犬を誉めてくれた。
それだけで頑張った甲斐があったと誇らかな気持ちになれる。
飼い主達の賛辞が、僕達のパワーの源(みなもと)と言ってもよかった。
皆で食べる揚げたての天ぷらは凄く美味しくて、つい食べ過ぎてしまった。
「明日は残りの天ぷらで天丼パーティーをしようと思うんだけど、また、食べに来てもらえるかな
もう飽きちゃった?
さっぱり食べられるよう、ショウガと大根下ろしをたっぷり入れようと思ってるんだ」
僕の言葉に
「良いね、参加するぜ!丼にするとひと味違う気がするんだよなー
食わせてもらってばっかってのも悪いし、俺とソウちゃんは浅漬けでも作って持ってくか
あれの素使うと、マジで刻んで漬けて揉むだけで出来んのな」
「僕と空も行きます
僕達はほうじ茶を持って行こうかな
出汁を加えると、天ぷら茶漬けもできるから」
ウラもカズハも笑って頷いてくれた。
「越してきたばっかりで一緒にご飯を食べられる友達が近所に住んでるなんて、嬉しいよ
良いところに来れたな、ふかやのおかげだ、ありがとう」
ナリが僕を見て優しく微笑んでくれる。
僕は幸せのあまり胸がいっぱいになってしまった。
「ナリのためなら、僕、何でもするからね」
僕の言葉に頼もしそうな視線を向けてくれるナリの存在が、愛しくてたまらなかった。
日付が変わる直前まで皆で楽しい時を過ごし、引っ越しパーティー兼プチ歓迎会はお開きとなった。
「じゃあ、また明日」
明日もまた楽しい時間を過ごせると思うだけで、僕はワクワクした気持ちになれた。
キッチンの片付けものを終え、僕とナリはインスタントコーヒーで一息つくことにした。
「幸せすぎて怖いって、こんな時のことを言うのかな
ふかやと会えてから、物事が良い方向に流れてばかりだ
今では、私の人生にふかやが居ない時間があったことの方が夢みたい
これからも、ずっと一緒にいてくれる?」
少し不安そうな瞳でナリが小首を傾げると、絹糸のような黒髪がサラリと揺れる。
「それは、僕のセリフだよ
もう2度と、飼い主が居ない状態には戻りたくない」
僕はテーブルの上に置かれているナリの手に自分の手を重ね、ギュッと握った。
「ふかやに選んでもらえて良かった」
ナリは僕の手を自分の口元に持って行き、口付けしてくれた。
体中に心地よい甘いしびれが走っていく。
「引っ越し翌日で片付けがあるだろうからって、明日は休みにして貰ってるんだ
新しいベッドの使い心地、試してみない?」
期待を込めて誘ってみると
「そうだね、今度のベッドはダブルサイズだものね
のびのび出来そう
夕飯食べ過ぎちゃったから、運動しなきゃ」
ナリは艶っぽくクスリと笑う。
「シャワールームも、こっちの部屋の方が広いよ
2人で入ってもゆったり出来るかな
でも僕は、ナリと密着して入りたいけど」
「私も」
僕達はクスクス笑いながら、これからの事を思い体を熱くする。
『なり、モウ寝ルノ?ボク、一緒ニ寝テアゲテモ良イヨ
可愛イボクト一緒ニ寝レバ、アッタカイカラ』
『アタシモ!アタシモなりトフカヤト一緒ニ寝ル』
部屋の隅でクツロいでいたヤマハとスズキが、僕達に近寄ってきた。
『あー、ごめん、夜の寝室は立ち入り禁止
お詫びに、チュルー出してあげるね
1日に2本も貰えるなんて、特別だよ』
僕は火照る頬をさすって、猫のおやつ入れからチュルーを2本取り出した。
僕の様子にナリも状況を察し
「ヤマハもスズキも、チュルー食べたらケージで寝よう
新しいフカフカした毛布をセットしてあるよ」
そう言って2匹を誘導してくれた。
チュルーを食べ終わり2匹が新しい毛布のチェックをしているうちに、ケージの扉を閉める。
「ヤマハとスズキには、夜は寂しい思いをさせちゃうかな
僕がナリを取っちゃったから」
脱衣所に移動して服を脱ぎながら、少し申し訳ない気持ちになってしまった。
「私は、ふかやが2匹と一緒に暮らしても良いって言ってくれた事が嬉しいよ
本当なら私のこと、独り占めしたいんじゃない?」
「うん、その気持ちもあるけど…
僕はナリの全てが好きなんだ
ヤマハとスズキも、ナリの一部だよ」
そう言うとナリは嬉しそうな顔になり
「ふかや、愛してる」
僕に抱きついて情熱的なキスをしてくれた。
僕達はそのままシャワールームで、ベッドで、激しく繋がりあった。
それは初めてナリと契ったときと同じような興奮と喜びを、僕にもたらしてくれる。
何度も繋がり欲望が治まった後の僕達は、心地よい疲れに支配されていた。
飼い主がいつも側に居てくれる幸せに包まれ、愛しい飼い主を腕に抱き、僕は安らぎの眠りに落ちていくのであった。
何となく僕達の間では『誰が一番飼い主の好みに合う物を作れるか』と言う雰囲気になっていた。
「ここはやはり、一番長く同じ時を過ごしている空に軍配が上がりそうだな」
スーパーまでの道を歩きながら大麻生が言うと、空は浮かない顔になった。
「俺、カズハに手料理っての食ってもらったこと、あんまりないんだ
オムレツにケチャップで字を書いたりしてるくらいでさ
カズハは俺に色々作ってくれて、俺が好きなもの知ってるのに
外食が多いから、カズハがどの店の何が好きかってのは知ってんだけど…
天ぷらなんて揚げたこと無いから、覚えたくてさ
大麻生、揚げ方教えて
俺、今まで愛玩犬の地位に甘えすぎてたかも
愛らしさだけじゃ、カズハの心は癒せても役に立てないって気が付いた」
突っ込みどころ満載の空の言葉だったけど、シュンとする彼が本気で飼い主の役に立ちたがっている気持ちは理解できる。
それは、僕も思っている事だったからだ。
「自分も長瀞にはまだまだ及ばない、日々勉強だよ
ウラは以前に飼っていただいたこともある方のお孫さんなので、自分でも好みが分かるのが強みだ
そういえば、ウラは最初から自分の料理には好意的であったな
それで彼に誉められたくて、レパートリーを増やしていったのだ
空はカズハとは違う生活をしていたのだから、お互いの好みを把握するところから始めて、作り方も学ぶと良い
自分より、カズハに教えてもらうと良いのではないか?
ウラもカズハに習って、色々な茶葉でミルクティーを淹れてくれるようになったよ
飼い主に作っていただくと、天上の飲み物のように格別だ」
ノロケで締められた大麻生の言葉を、僕も空も真剣に聞いていた。
「カズハが教えてくれるなら、俺、覚えられそうな気がする
頑張るよ」
空はいつもの調子に戻って朗らかに笑ってみせた。
「僕も負けないよ
習作作って、黒谷みたいに事務所の皆に食べてもらおっと」
僕も2人に宣言する。
「まずは、今夜の蕎麦用の天ぷら素材を選ぶところからだな
今回は大量に出来てしまいそうだ
新居を油臭くしてしまうだろう、すまないね」
苦笑する大麻生に
「大丈夫、今は良い消臭剤があるから
猫の体にも害のない物をナリと選んで、買ってあるんだ
人間の体って、案外丈夫だよね
犬だったときダメなことが平気になったりして、面白い」
僕は笑顔で答えた。
「そうそう、おかげでハンバーグもすき焼きもカレーも食べられる
掻き揚げに長ネギやタマネギが入ってたって大丈夫
飼い主と同じ物を食べられるんだ」
空の言葉に僕と大麻生は大きく頷いた。
飼い主と同じ体験が出来るこの体になれたことが、嬉しかった。
スーパーで飼い主の好むような食材を買い込んで、飼い主の待つ部屋に帰っていく。
それはとてもワクワクする行為だった。
「お帰りふかや、何だか凄い荷物だね」
ナリは僕達の荷物を見て目を丸くする。
「買い物袋から長ネギが見えるって、いかにも『買い物してきました』って感じ
お使い犬、可愛いな」
カズハに頭を撫でられて
「愛玩犬だって、これくらいは出来るんだ」
空は得意げな顔で笑っていた。
「これ、3日分くらいあるんじゃねーの?
3日連続パーティーってのも楽しそう
もっともこの量、日野ちゃんなら1日で食っちまうだろうけどな」
ウラが袋の中身を確認してキシシっと笑う。
「飼い主に喜んでもらいたくて、少し張り切りすぎてしまいました」
「ソウちゃんは頑張り屋だもんな
天ぷら、期待しちゃうぜ」
ウラに優しくキスをされて、大麻生は頬を染めて嬉しそうに頷いた。
『手伝うよ』と言う飼い主をリビングに残し、僕達はキッチンで天ぷらと格闘する。
「黒谷と白久は飼い主が出来てから、よく揚げ物するって言ってたよな
カズハ、野菜の素揚げが好きだから、それも作れるようになろっと」
「高校生は食べ盛りだから、揚げ物は鉄板だろう
ウラはどちらかというと炒め物が好きでな
それを丼物にすると喜んでくれるんだ」
「ナリは『季節を感じられる物』が好きだって言ってた
正月のお雑煮とかね
今回、フキノトウがあれば良かったのに
でも、春菊の掻き揚げも好きそうかも」
「ウラはエビが好きだから、小エビではなく剥(む)きエビを入れて良いかな」
「カズハは人参の掻き揚も好きだったな
人参、人間の体に良いんだって」
飼い主の好きなもののことを考えながら揚げていくと、予想通り大量の天ぷらが出来てしまった。
「明日も夕飯食べに来てよ
明日は残りを天丼にしよう」
僕が誘ったら
「良いね、カズハ、ナリやウラと気が合うみたいだから、きっと喜ぶよ」
「ウラも2人いると楽しそうだ
丼物が好きだし、天丼パーティーを喜ぶだろう」
2人とも快く頷いてくれる。
「カズハとウラが、ナリと仲良くなってくれて良かった
ありがとう」
僕が笑うと、2人も『お互い様だ』と笑ってくれるのであった。
飼い主達は僕達の作った大量の天ぷらに驚きつつも
「ありがとう、ふかや、こんなに揚げるの大変だったでしょ」
「すげー、どれも美味そう
やっぱ天ぷらは揚げたてが1番だよな
シンプルな蕎麦もぐっと美味くなる」
「春菊と人参とエビの掻き揚げだ
これ、お店では無い組み合わせだよね
凄く気になる」
それぞれ飼い犬を誉めてくれた。
それだけで頑張った甲斐があったと誇らかな気持ちになれる。
飼い主達の賛辞が、僕達のパワーの源(みなもと)と言ってもよかった。
皆で食べる揚げたての天ぷらは凄く美味しくて、つい食べ過ぎてしまった。
「明日は残りの天ぷらで天丼パーティーをしようと思うんだけど、また、食べに来てもらえるかな
もう飽きちゃった?
さっぱり食べられるよう、ショウガと大根下ろしをたっぷり入れようと思ってるんだ」
僕の言葉に
「良いね、参加するぜ!丼にするとひと味違う気がするんだよなー
食わせてもらってばっかってのも悪いし、俺とソウちゃんは浅漬けでも作って持ってくか
あれの素使うと、マジで刻んで漬けて揉むだけで出来んのな」
「僕と空も行きます
僕達はほうじ茶を持って行こうかな
出汁を加えると、天ぷら茶漬けもできるから」
ウラもカズハも笑って頷いてくれた。
「越してきたばっかりで一緒にご飯を食べられる友達が近所に住んでるなんて、嬉しいよ
良いところに来れたな、ふかやのおかげだ、ありがとう」
ナリが僕を見て優しく微笑んでくれる。
僕は幸せのあまり胸がいっぱいになってしまった。
「ナリのためなら、僕、何でもするからね」
僕の言葉に頼もしそうな視線を向けてくれるナリの存在が、愛しくてたまらなかった。
日付が変わる直前まで皆で楽しい時を過ごし、引っ越しパーティー兼プチ歓迎会はお開きとなった。
「じゃあ、また明日」
明日もまた楽しい時間を過ごせると思うだけで、僕はワクワクした気持ちになれた。
キッチンの片付けものを終え、僕とナリはインスタントコーヒーで一息つくことにした。
「幸せすぎて怖いって、こんな時のことを言うのかな
ふかやと会えてから、物事が良い方向に流れてばかりだ
今では、私の人生にふかやが居ない時間があったことの方が夢みたい
これからも、ずっと一緒にいてくれる?」
少し不安そうな瞳でナリが小首を傾げると、絹糸のような黒髪がサラリと揺れる。
「それは、僕のセリフだよ
もう2度と、飼い主が居ない状態には戻りたくない」
僕はテーブルの上に置かれているナリの手に自分の手を重ね、ギュッと握った。
「ふかやに選んでもらえて良かった」
ナリは僕の手を自分の口元に持って行き、口付けしてくれた。
体中に心地よい甘いしびれが走っていく。
「引っ越し翌日で片付けがあるだろうからって、明日は休みにして貰ってるんだ
新しいベッドの使い心地、試してみない?」
期待を込めて誘ってみると
「そうだね、今度のベッドはダブルサイズだものね
のびのび出来そう
夕飯食べ過ぎちゃったから、運動しなきゃ」
ナリは艶っぽくクスリと笑う。
「シャワールームも、こっちの部屋の方が広いよ
2人で入ってもゆったり出来るかな
でも僕は、ナリと密着して入りたいけど」
「私も」
僕達はクスクス笑いながら、これからの事を思い体を熱くする。
『なり、モウ寝ルノ?ボク、一緒ニ寝テアゲテモ良イヨ
可愛イボクト一緒ニ寝レバ、アッタカイカラ』
『アタシモ!アタシモなりトフカヤト一緒ニ寝ル』
部屋の隅でクツロいでいたヤマハとスズキが、僕達に近寄ってきた。
『あー、ごめん、夜の寝室は立ち入り禁止
お詫びに、チュルー出してあげるね
1日に2本も貰えるなんて、特別だよ』
僕は火照る頬をさすって、猫のおやつ入れからチュルーを2本取り出した。
僕の様子にナリも状況を察し
「ヤマハもスズキも、チュルー食べたらケージで寝よう
新しいフカフカした毛布をセットしてあるよ」
そう言って2匹を誘導してくれた。
チュルーを食べ終わり2匹が新しい毛布のチェックをしているうちに、ケージの扉を閉める。
「ヤマハとスズキには、夜は寂しい思いをさせちゃうかな
僕がナリを取っちゃったから」
脱衣所に移動して服を脱ぎながら、少し申し訳ない気持ちになってしまった。
「私は、ふかやが2匹と一緒に暮らしても良いって言ってくれた事が嬉しいよ
本当なら私のこと、独り占めしたいんじゃない?」
「うん、その気持ちもあるけど…
僕はナリの全てが好きなんだ
ヤマハとスズキも、ナリの一部だよ」
そう言うとナリは嬉しそうな顔になり
「ふかや、愛してる」
僕に抱きついて情熱的なキスをしてくれた。
僕達はそのままシャワールームで、ベッドで、激しく繋がりあった。
それは初めてナリと契ったときと同じような興奮と喜びを、僕にもたらしてくれる。
何度も繋がり欲望が治まった後の僕達は、心地よい疲れに支配されていた。
飼い主がいつも側に居てくれる幸せに包まれ、愛しい飼い主を腕に抱き、僕は安らぎの眠りに落ちていくのであった。