しっぽや(No.135~144)
「占いって言っても、私、こっちではペットと飼い主の相性占い専門でやってみようかなって思ってるんだ
以前にも何度かやったことがあってね、結構評判良かったんだよ
それで練習台、というのも失礼だけど慣れるために少し試してみたくてさ
ペット飼ってる人じゃないとだめだから、中々頼める人いなくて
化生はペット、と言うには特殊だからね」
「それで、俺かタケぽんなのか」
俺はやっと納得がいった。
「え?日野に説明されてなかったの?」
「あいつ、何にも言わなかったよ
多分、俺がビビるの見て楽しんでたんだ
霊感のある占い師、とか大仰に言ってんだもんなー」
ムクレる俺に
「日野と仲が良いんだね、仲の良い友達がいるのは良いことだよ
私もバイク仲間とは良い友達なんだ
だから皆でツーリング行くの楽しいんだよね」
ナリは笑いながら言ってくれた。
「ナリ、バイク乗るの?」
俺は彼の言葉に反応してしまう。
しっぽやで役立つために車の免許を取ろうと思っているが、バイクも良いなと思っていたからだ。
「うん、実家とふかやのとこを行き来するのは身軽だからバイクが多いよ
だから影森マンションの来客用バイクスペース、常時確保してもらってるんだ
今も停めてあるけど、見たい?」
羨ましそうな顔をしてしまったのだろう、ナリがそう問いかけてくる。
「見たい!帰りに、ちょっとだけマンション寄って見ていこうかな
でも白久と夕飯食べる時間が減っちゃうかも…」
悩む俺に
「バイク見に来て、白久の部屋に泊めてもらったら?
そうすれば遅くなっても大丈夫でしょ」
ナリが甘い誘惑の言葉を囁いた。
その提案には激しく心ひかれたが
「今日は家に帰るって親に言ってきちゃったし…
受験間際すぎて、親父が反対すると思う」
俺はため息を付いてしまった。
「そっか、今だと試験まで1ヶ月切ってるもんね
じゃあ、私が勉強見てあげるっての建前にしちゃう?
一応、大学生の時は家庭教師のバイトしてたんだよ
後で親御さんに電話して聞いてみよう、こういう頼みごとはメールじゃだめだからね」
「良いの?」
俺はナリの言葉でテンションが上がっていった。
「練習に付き合ってもらうお礼」
ナリは悪戯っぽく笑うと、ウインクしてみせた。
「ありがとう、ナリって最高!」
俺は思わず立ち上がって彼に抱きついてしまう。
ナリは優しく頭を撫でてくれた。
「このカードで占うんだ」
やっと占いをやってみようと言うことになって、ナリがカードを取り出した。
そのカードには怪しげなイラストは描かれていなかった。
むしろ
「何これ、可愛くて格好良い」
どのカードにも割とリアルな野生動物の絵が描かれていて、観賞用のイラストカードと言われても納得してしまう様な物であった。
「これはアニマルメディスンカードって言って、ネイティブ・アメリカン由来の物なんだけど…
まあ、詳しい講釈は置いておこうか
あんまり専門的なこととか言うと、また荒木に怪しい人だと思われるから」
ナリはクスクス笑っている。
「自分の猫、カシスだっけ?その子のことを考えながらカードを混ぜてみて」
カード占い、なんて初めての俺はテーブルの上に裏返しに置かれている複数枚のカードを、恐る恐る両手で混ぜてみた。
「そうしたらカードを1枚ずつ取って、今から言う順番に置いてみて」
「え?上から何番目を取れば良いの?」
「適当に好きな物を選んで良いんだよ、正解とか無いから」
ナリの言葉に従って、俺はカードを指示された場所に置いていく。
「それじゃ、視てみようか」
ナリはそう言うと、裏返しに置かれていたカードをめくって絵柄を確認しながら解説してくれた。
「何か、言われてみると当たってるかも」
俺はその解説に、驚きを隠せなかった。
「特にここ、カシスが俺のことせっかちだって思ってるってとこ」
「そう?荒木、そんなにせっかちそうには見えないから解釈間違えたかな、ってちょっと不安だったけど」
ナリは首を捻っている。
「自分でもせっかちだって思ってなかったよ
けど、カシスの前だと『お皿片づけたいから早く食べろ』とか『トイレ掃除するから早く用足ししろ』とか、そんな態度取ってた
カシス、俺の態度ちゃんと見てたんだな」
俺は頭を掻くしかなかった。
「ああ、成る程ね
それって全ての飼い主に当てはまりそうで、耳が痛いよ」
ナリも苦笑している。
「でもさ、これが当たってるって事は、ここの『カシスは俺のこと好き』って言うのも当たってるって事だよね」
俺にはナリやタケぽんみたいに特殊能力が無いから、こうやって目に見える形でカシスに好かれていることがわかるのは嬉しいことだった。
「ナリの占い、絶対受けるよ
やっぱさ、好かれてるってわかってても形にして見たい愛ってあるもん
今回の俺みたいに、意外なことがわかったりするしさ」
熱く語る俺に
「そうだね」
ナリは優しく微笑んで頷いてくれた。
一通り占いが終わると
「さて、それじゃ勉強しようか
荒木、学校帰りだし参考書持ってるよね、出して」
ナリがそんなことを言い出した。
「勉強…やっぱするの?」
「もちろんだよ、親御さんに完全な嘘付くの悪いもの
予備校1コマ分くらいはやらなくちゃ」
真面目な顔のナリに負け、俺はジブシブながら参考書とノートを取りだした。
しかし家庭教師の経験者だけあって、ナリの教え方はわかりやすかった。
「ナリ、もっと早く化生の飼い主になってくれれば良かったのに
そしたら専属家庭教師になってもらって、予備校なんて行かなくても良かったかも」
俺は思わず不満をもらしてしまう。
「いや、占い師兼家庭教師じゃ信用無さ過ぎでしょ
正式に雇ってくれる親御さん居ないよ
前は『現役大学生』って肩書きがあったから出来たようなものだし
とは言え、占いが軌道に乗るまでの繋ぎの家庭教師か…
荒木と日野はすぐに受験が終わっちゃうから、食い詰めたらタケぽんにでもタカらせてもらおうかな」
「それ良いかも、あいつ去年の夏休みの宿題、日野に頼んで2日分くらいの調理パン奢らされてた」
「日野の2日分って…凄い量じゃない?
私とふかや、2人で2日は生き延びられそう」
俺達は声を上げて笑ってしまった。
ナリはすっかり化生の飼い主たちと馴染んで、仲間になっていた。
しっぽや業務終了後、俺と白久、ナリとふかやは4人でファミレスで夕飯を食べてから影森マンションに帰る。
部屋に行く前に駐車場に寄って、ナリのバイクを見せてもらった。
「格好いい」
それはきれいに磨かれていて、ナリが大切に扱っていることを物語っていた。
「そう、バイクは何と言ってもそれにつきるんだよね
小回りが利くから便利とか、利便性は後から付いてくる
日野にも言ったけど、免許取るなら協力するよ
私の後ろはふかや専用だから乗せてあげられないんだ
是非、自分で免許取って乗ってみて」
嬉しそうなナリを見て
『この人、本当にバイク好きなんだな』
何だか俺も嬉しくなってしまう。
「取り敢えず、しっぽやの足として使いたいから車の免許優先で考えるけど、バイクの免許取るときは色々教えてください」
頭を下げる俺に
「もちろんだよ
受験勉強より熱心に教えちゃうかも」
ナリは楽しそうに笑っていた。
白久の部屋に帰り荷物を置くと、俺は制服のままクッションに座り込んだ。
「急に泊まることにしちゃってごめんね
受験終わるまでもう来れないと思ってたから、俺的には嬉しいんだけど」
伺うように白久を見つめてしまう。
「荒木に来ていただけて、私もとても嬉しいです
お父様に許可を取ってくださったナリのおかげですね
ふかやは良い飼い主を選びました」
白久もスーツのまま俺の隣に座り、甘えるように体を寄せてくる。
「猫の捜索に失敗したのにふかやを受け入れてくれたナリは、荒木のように優しい方だと思います
もっとも、長瀞の手伝いでナリの猫は無事に発見出来たのですが」
俯く白久に抱きついて
「クロスケは寿命だった…
白久だって、クロスケの亡骸(なきがら)を見つけてくれたよ」
俺はそう言うとそっとキスをした。
「何か、この格好でこの部屋にいると、最初の頃を思い出すね
地図を広げて捜索範囲を考えたりしてさ
犬の捜索だったらそんなことしなくても発見できるのに、あの時の白久、本当に頑張ってくれてたんだね
2人で一緒に地図見て考えるの、俺、何か楽しくなってきてたんだ」
「私も荒木と居られるあの時間は、至福の時でした
もちろん、急に泊まりに来てくれた飼い主と居られる今もとても幸せです」
俺達は抱き合いながら唇を合わせあった。
知り合った頃のような軽い触れ合いでは満足できなくなっていた。
「ん…」
合わせた唇から甘い吐息がもれてしまう。
「荒木…」
キスの合間に名前を呼ばれ、俺は白久に対する想いが我慢できなくなる。
「白久…して…」
制服のボタンが外され下着を脱がされていく。
その後を追うように白久の舌が移動する。
ゾクゾクするような感覚に俺自身が激しく反応していった。
俺の制服を脱がし終わった白久が自らも服を脱ぎ、逞しい裸体を惜しげもなく晒していく。
あの腕に抱かれるのだと思うと、さらに興奮していくのを感じていた。
俺達はベッドに移動して舌を絡め合う激しいキスを交わしながら抱き合った。
この場所は、今では2人だけの聖域にも近い場所になっている。
そこで何度も繋がりあう行為は、体だけではなく心まで確実に繋がっていることを感じさせた。
想いを解放しあった後の心地よい疲れのなか、俺は満ち足りた想いで白久の腕に抱かれていた。
「ふかやとナリって、俺達の出会いを思い出させるね」
「きっと2人も私達のように幸せな飼い犬と飼い主になりますよ」
「ナリの方が人生の先輩なのに俺が化生飼いの先輩って、何か不思議
ナリに先輩飼い主の貫禄見せなきゃ」
「私はふかやに先輩飼い犬としてのアドバイスをしてあげなくては」
俺達はクスクスと笑いあい、ナリがプレゼントしてくれたお泊まり時間を満喫するのであった。
以前にも何度かやったことがあってね、結構評判良かったんだよ
それで練習台、というのも失礼だけど慣れるために少し試してみたくてさ
ペット飼ってる人じゃないとだめだから、中々頼める人いなくて
化生はペット、と言うには特殊だからね」
「それで、俺かタケぽんなのか」
俺はやっと納得がいった。
「え?日野に説明されてなかったの?」
「あいつ、何にも言わなかったよ
多分、俺がビビるの見て楽しんでたんだ
霊感のある占い師、とか大仰に言ってんだもんなー」
ムクレる俺に
「日野と仲が良いんだね、仲の良い友達がいるのは良いことだよ
私もバイク仲間とは良い友達なんだ
だから皆でツーリング行くの楽しいんだよね」
ナリは笑いながら言ってくれた。
「ナリ、バイク乗るの?」
俺は彼の言葉に反応してしまう。
しっぽやで役立つために車の免許を取ろうと思っているが、バイクも良いなと思っていたからだ。
「うん、実家とふかやのとこを行き来するのは身軽だからバイクが多いよ
だから影森マンションの来客用バイクスペース、常時確保してもらってるんだ
今も停めてあるけど、見たい?」
羨ましそうな顔をしてしまったのだろう、ナリがそう問いかけてくる。
「見たい!帰りに、ちょっとだけマンション寄って見ていこうかな
でも白久と夕飯食べる時間が減っちゃうかも…」
悩む俺に
「バイク見に来て、白久の部屋に泊めてもらったら?
そうすれば遅くなっても大丈夫でしょ」
ナリが甘い誘惑の言葉を囁いた。
その提案には激しく心ひかれたが
「今日は家に帰るって親に言ってきちゃったし…
受験間際すぎて、親父が反対すると思う」
俺はため息を付いてしまった。
「そっか、今だと試験まで1ヶ月切ってるもんね
じゃあ、私が勉強見てあげるっての建前にしちゃう?
一応、大学生の時は家庭教師のバイトしてたんだよ
後で親御さんに電話して聞いてみよう、こういう頼みごとはメールじゃだめだからね」
「良いの?」
俺はナリの言葉でテンションが上がっていった。
「練習に付き合ってもらうお礼」
ナリは悪戯っぽく笑うと、ウインクしてみせた。
「ありがとう、ナリって最高!」
俺は思わず立ち上がって彼に抱きついてしまう。
ナリは優しく頭を撫でてくれた。
「このカードで占うんだ」
やっと占いをやってみようと言うことになって、ナリがカードを取り出した。
そのカードには怪しげなイラストは描かれていなかった。
むしろ
「何これ、可愛くて格好良い」
どのカードにも割とリアルな野生動物の絵が描かれていて、観賞用のイラストカードと言われても納得してしまう様な物であった。
「これはアニマルメディスンカードって言って、ネイティブ・アメリカン由来の物なんだけど…
まあ、詳しい講釈は置いておこうか
あんまり専門的なこととか言うと、また荒木に怪しい人だと思われるから」
ナリはクスクス笑っている。
「自分の猫、カシスだっけ?その子のことを考えながらカードを混ぜてみて」
カード占い、なんて初めての俺はテーブルの上に裏返しに置かれている複数枚のカードを、恐る恐る両手で混ぜてみた。
「そうしたらカードを1枚ずつ取って、今から言う順番に置いてみて」
「え?上から何番目を取れば良いの?」
「適当に好きな物を選んで良いんだよ、正解とか無いから」
ナリの言葉に従って、俺はカードを指示された場所に置いていく。
「それじゃ、視てみようか」
ナリはそう言うと、裏返しに置かれていたカードをめくって絵柄を確認しながら解説してくれた。
「何か、言われてみると当たってるかも」
俺はその解説に、驚きを隠せなかった。
「特にここ、カシスが俺のことせっかちだって思ってるってとこ」
「そう?荒木、そんなにせっかちそうには見えないから解釈間違えたかな、ってちょっと不安だったけど」
ナリは首を捻っている。
「自分でもせっかちだって思ってなかったよ
けど、カシスの前だと『お皿片づけたいから早く食べろ』とか『トイレ掃除するから早く用足ししろ』とか、そんな態度取ってた
カシス、俺の態度ちゃんと見てたんだな」
俺は頭を掻くしかなかった。
「ああ、成る程ね
それって全ての飼い主に当てはまりそうで、耳が痛いよ」
ナリも苦笑している。
「でもさ、これが当たってるって事は、ここの『カシスは俺のこと好き』って言うのも当たってるって事だよね」
俺にはナリやタケぽんみたいに特殊能力が無いから、こうやって目に見える形でカシスに好かれていることがわかるのは嬉しいことだった。
「ナリの占い、絶対受けるよ
やっぱさ、好かれてるってわかってても形にして見たい愛ってあるもん
今回の俺みたいに、意外なことがわかったりするしさ」
熱く語る俺に
「そうだね」
ナリは優しく微笑んで頷いてくれた。
一通り占いが終わると
「さて、それじゃ勉強しようか
荒木、学校帰りだし参考書持ってるよね、出して」
ナリがそんなことを言い出した。
「勉強…やっぱするの?」
「もちろんだよ、親御さんに完全な嘘付くの悪いもの
予備校1コマ分くらいはやらなくちゃ」
真面目な顔のナリに負け、俺はジブシブながら参考書とノートを取りだした。
しかし家庭教師の経験者だけあって、ナリの教え方はわかりやすかった。
「ナリ、もっと早く化生の飼い主になってくれれば良かったのに
そしたら専属家庭教師になってもらって、予備校なんて行かなくても良かったかも」
俺は思わず不満をもらしてしまう。
「いや、占い師兼家庭教師じゃ信用無さ過ぎでしょ
正式に雇ってくれる親御さん居ないよ
前は『現役大学生』って肩書きがあったから出来たようなものだし
とは言え、占いが軌道に乗るまでの繋ぎの家庭教師か…
荒木と日野はすぐに受験が終わっちゃうから、食い詰めたらタケぽんにでもタカらせてもらおうかな」
「それ良いかも、あいつ去年の夏休みの宿題、日野に頼んで2日分くらいの調理パン奢らされてた」
「日野の2日分って…凄い量じゃない?
私とふかや、2人で2日は生き延びられそう」
俺達は声を上げて笑ってしまった。
ナリはすっかり化生の飼い主たちと馴染んで、仲間になっていた。
しっぽや業務終了後、俺と白久、ナリとふかやは4人でファミレスで夕飯を食べてから影森マンションに帰る。
部屋に行く前に駐車場に寄って、ナリのバイクを見せてもらった。
「格好いい」
それはきれいに磨かれていて、ナリが大切に扱っていることを物語っていた。
「そう、バイクは何と言ってもそれにつきるんだよね
小回りが利くから便利とか、利便性は後から付いてくる
日野にも言ったけど、免許取るなら協力するよ
私の後ろはふかや専用だから乗せてあげられないんだ
是非、自分で免許取って乗ってみて」
嬉しそうなナリを見て
『この人、本当にバイク好きなんだな』
何だか俺も嬉しくなってしまう。
「取り敢えず、しっぽやの足として使いたいから車の免許優先で考えるけど、バイクの免許取るときは色々教えてください」
頭を下げる俺に
「もちろんだよ
受験勉強より熱心に教えちゃうかも」
ナリは楽しそうに笑っていた。
白久の部屋に帰り荷物を置くと、俺は制服のままクッションに座り込んだ。
「急に泊まることにしちゃってごめんね
受験終わるまでもう来れないと思ってたから、俺的には嬉しいんだけど」
伺うように白久を見つめてしまう。
「荒木に来ていただけて、私もとても嬉しいです
お父様に許可を取ってくださったナリのおかげですね
ふかやは良い飼い主を選びました」
白久もスーツのまま俺の隣に座り、甘えるように体を寄せてくる。
「猫の捜索に失敗したのにふかやを受け入れてくれたナリは、荒木のように優しい方だと思います
もっとも、長瀞の手伝いでナリの猫は無事に発見出来たのですが」
俯く白久に抱きついて
「クロスケは寿命だった…
白久だって、クロスケの亡骸(なきがら)を見つけてくれたよ」
俺はそう言うとそっとキスをした。
「何か、この格好でこの部屋にいると、最初の頃を思い出すね
地図を広げて捜索範囲を考えたりしてさ
犬の捜索だったらそんなことしなくても発見できるのに、あの時の白久、本当に頑張ってくれてたんだね
2人で一緒に地図見て考えるの、俺、何か楽しくなってきてたんだ」
「私も荒木と居られるあの時間は、至福の時でした
もちろん、急に泊まりに来てくれた飼い主と居られる今もとても幸せです」
俺達は抱き合いながら唇を合わせあった。
知り合った頃のような軽い触れ合いでは満足できなくなっていた。
「ん…」
合わせた唇から甘い吐息がもれてしまう。
「荒木…」
キスの合間に名前を呼ばれ、俺は白久に対する想いが我慢できなくなる。
「白久…して…」
制服のボタンが外され下着を脱がされていく。
その後を追うように白久の舌が移動する。
ゾクゾクするような感覚に俺自身が激しく反応していった。
俺の制服を脱がし終わった白久が自らも服を脱ぎ、逞しい裸体を惜しげもなく晒していく。
あの腕に抱かれるのだと思うと、さらに興奮していくのを感じていた。
俺達はベッドに移動して舌を絡め合う激しいキスを交わしながら抱き合った。
この場所は、今では2人だけの聖域にも近い場所になっている。
そこで何度も繋がりあう行為は、体だけではなく心まで確実に繋がっていることを感じさせた。
想いを解放しあった後の心地よい疲れのなか、俺は満ち足りた想いで白久の腕に抱かれていた。
「ふかやとナリって、俺達の出会いを思い出させるね」
「きっと2人も私達のように幸せな飼い犬と飼い主になりますよ」
「ナリの方が人生の先輩なのに俺が化生飼いの先輩って、何か不思議
ナリに先輩飼い主の貫禄見せなきゃ」
「私はふかやに先輩飼い犬としてのアドバイスをしてあげなくては」
俺達はクスクスと笑いあい、ナリがプレゼントしてくれたお泊まり時間を満喫するのであった。