しっぽや(No.135～144)
「荒木、明けましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします」
白久は優しく微笑みながら、俺にペコリと頭を下げた。
ワイルドな格好をしていても、いつもの白久であるようだ。
「あ、うん
明けましておめでとう
今年もよろしくね」
俺も慌てて返事を返す。
日野と黒谷も同じようなやり取りをしていた。
「今日は朝からカズハ様にトリミング？と言うのでしょうか
髪を整えてもらいました
服も見繕っていただいたのです
おかしくは無いですか？
道行く人が、私とすれ違うときに視線を合わせないようにしているような気がして…」
戸惑い気味の白久に
「おかしくないよ！凄い格好良い！
そっか、カズハさんトリマーだもんな、こんなことも出来るんだ」
俺は微笑んでみせた。
頭を撫でてあげたかったけど、せっかくプロにセットしてもらったのだからと我慢する。
「飼い主と合流したから、他人の目はもう大丈夫
むしろ俺が『正月だからって、飼い犬にメチャクチャ気合い入った格好をさせているバ飼い主』に見られるよ
あー、俺ももっと気合い入れた格好にすれば良かった」
頬を膨らませる俺に
「荒木はいつでも、大変お可愛らしいので大丈夫です」
白久は期待通りの言葉を言ってくれた。
そんなやり取りをしていると、ホームに電車が到着する。
俺達は話を切り上げて、電車に乗りこんだ。
車内はそれなりに混んでいる。
皆俺達と同じように、この先にあるお寺に初詣に行くのだろう。
白久ははぐれないよう、俺の腰に手を回し寄り添ってくれていた。
乗客数はどんどん増えていき、お寺がある駅に着く頃には朝のラッシュ時と変わらない混雑状況になる。
駅について大量に吐き出された人波にモミクチャにされたが、俺達は何とかバラケずに改札を抜けることが出来た。
「凄い混雑、去年ってこんなんだったっけ？」
「去年初詣に行ったのは３日だったから、もう少し人が少なかったような気がする」
移動する大勢の人に混じり、俺達も少しずつ進んで行く。
「荒木、どうもこの先、入場規制を行っているようです
人の流れが止まっております」
背の高い白久が遠くを確認して教えてくれる。
「せっかく早目に来たのにね
日野、苦しくないですか？」
黒谷が人に埋もれている日野（俺もだけど…）に声をかけていた。
「大丈夫、どうせ今日は泊まりだし、ゆっくり行こうよ
黒谷と密着しながら歩けるなんて、滅多にないしさ」
日野は黒谷にすり寄っていく。
俺も真似して白久の側に密着してみる。
白久が手を握ってくれて、俺は幸せな気分に浸り境内を目指してノロノロと歩くのだった。
俺達はゆっくり進みながら、予定を確認する。
「今年も屋台制覇するだろう？そう思って、朝はあんまり食べないできたんだ」
「もちろん！目指せ、全制覇だぜ」
こんな時の日野は本当に頼もしい。
「カズハ君のところでマイボトルを借りて、イヤーズティーを煎れてきました
喉が渇いたら言ってくださいね」
「今年はマリーゴールドという花の入ったものと、糀（こうじ）とあられが入ったものだそうです
どちらも良い香りでしたよ」
犬達もそつなく頼もしかった。
「こんなにワイルドに格好いいのに、マイボトル持参って」
「やっぱ、うちの犬達ってギャップ萌の極みだよな」
俺と日野の自慢げな囁き合いに、犬達は誇らかな気分になっているようだった。
山門をくぐってから１時間近くかかって、やっと境内が見えてくる。
「いつもなら２０分位で行けるんだけどな」
「時間かかった分、念入りにお参りしないと」
「今年は、超神頼みしちゃうぜ」
「確かに」
俺も日野も、だんだん真剣になってくる。
最後には自分の能力が物を言うとはわかっていても、得意な問題が出題されていますように、くらいの頼み事はしたい。
俺は奮発して５００円玉を賽銭箱に投げ入れると、熱心に拝んでしまうのであった。
「ふう」
長々と祈った俺が顔を上げると、案の定、人混みに紛れて日野と黒谷の姿を見失っていたが白久は側にいてくれた。
２年目ともなると手慣れたもので、直ぐに白久が気配で黒谷を見つけて合流し皆でおみくじを引く。
全員が『吉』という結果に驚き『平等だ』と言って笑い合った後、去年のように手分けして屋台の食べ物をゲットすることにした。
そんなとき、ふかやから飼って欲しいと思える人がいる、と黒谷のスマホに連絡が入った。
これからその相手の依頼を受けるため、現場に向かうらしい。
犬のふかやに頼まれた猫の捜索依頼であるという情報が、俺と白久の出会いを思い起こさせて心配になってしまった。
黒谷のスマホを借りて、励ましの言葉を送ることしか出来ない自分がもどかしい。
日野も心配して、ふかやにメッセージを送っていた。
それから俺達は境内に着くまでの遅れを取り戻すようテキパキ動き、昼過ぎにはテント内で大量の食料を堪能することが出来ていた。
「飼い主と食べる屋台の味、美味しいです」
頬を染める飼い犬が格好いいのに可愛くて、俺も日野も顔が緩みっぱなしになるのであった。
「今年も屋台堪能しまっくた、満足」
日野と黒谷は今回も最後は甘酒で初詣を締めくくっている。
俺は白久に煎れてもらった糀とあられ入りのイヤーズティーを飲んでいた。
夕方になり寒くなってきたため冷えた身体に、温かく甘い紅茶が染み渡っていく。
「また来年も、４人で初詣に来よう」
俺の言葉に、皆嬉しそうに頷いてくれた。
帰りはスムーズに移動出来て、７時過ぎには影森マンションに着くことが出来た。
俺と日野は各々、飼い犬の部屋に帰っていく。
これからは飼い犬と２人っきりの甘い時間が待っている。
俺は嬉しい期待で胸がドキドキしてきた。
「荒木、こちらはお年玉です」
白久が分厚いポチ袋を手渡してくれる。
「ありがと
あの、俺も白久にお年玉的な物があるんだ
いや、俺からじゃなくて、親父からなんだけど」
そう言って細長い箱を手渡すと
「お父様から？私がいただいても、よろしいのですか？」
白久はとても驚いた顔になる。
「うん、多分まだ親父の中で白久とハチ公が被ってんだよ
待たせないよう気を付けろって言われた」
俺は少し苦笑する。
「俺とお揃いの腕時計なんだ
白久、腕時計なんて付ける？」
白久は丁寧に包装紙を剥がし箱の中身を改め
「荒木とお揃い…」
腕時計を手にとって幸せそうな顔になった。
「付けてあげる」
俺は時計を白久の左手首に巻いてあげた。
自分の時計も見えるように手を差しだして
「ほら、お揃い」
そう示して見せた。
腕時計の赤いバンドは、白久にとても似合っていた。
「私は、これからも荒木と同じ時を刻んでゆけるのですね」
白久は時計を見て声を詰まらせる。
親父のプレゼントは、白久の中でもっと違う意味の物に変化しているようであった。
「荒木、一生お側に居させてください」
俺を抱きしめてくる白久の必死な想いが切なかった。
「うん、ずっと一緒だから」
俺も白久を抱きしめ返し、そう宣言する。
そしてそっと頭を撫でてあげた。
「セットが崩れそうだったから、今日は撫でられなかったんだ
もうどこにも行かないから、乱れちゃってもいいよね
この髪型、凄く格好いいよ
今度カズハさんにお礼言っとかなきゃ
そんで、たまにはこうやってセットしてもらおう」
俺は笑って、もう少し乱暴に撫でてあげる。
「荒木に気に入っていただけて、良かったです
荒木の格好良い飼い犬でいられるよう、頑張ります」
健気な飼い犬に、俺は軽いキスをした。
「今夜はこのまましてもらって良い？」
ついばむように唇を合わせながら、俺は期待した顔できいてしまう。
いつもとは違うワイルドな白久と繋がってみたい欲望を、押さえきれなくなっていた。
「もちろんです」
彼は大きく頷き、俺の服を脱がせ始めた。
白久は合わせていた唇を、頬や首筋に移動させ俺を刺激していく。
乱れた白久の髪の間から、シルバーのイヤーカフスがチラチラとのぞいていた。
「これもカズハさんに借りたの？空に似合いそうだね
でも、白久にも似合ってる」
俺は白久の髪を撫でながらそう話しかけた。
「こちらは、ウラが大麻生に用意した物を借りたのです
荒木に気に入っていただけそうな柄を選んでみました」
「そっか、ウラって大麻生に着けさせる小物にも気を使ってるもんね
？俺の好きそうな柄」
不審に思いよくよく見ると、小さく肉球のシルエットが掘られている。
「可愛い！こんなのあるんだ
俺も受験済んだら、白久に着けさせる小物とか選んでみようかな
今まで首輪しかあげたことなかったし」
自分で白久を仕立て上げることを考えて、ワクワクしてくる。
「どうか私を荒木好みの所有物にしてください」
倒錯的な白久の懇願に
「うん、白久は俺のだから」
俺は素直に頷いていた。
俺達は舌を絡ませ合って唇をむさぼりあう。
白久の指は俺の胸の突起を優しく強く刺激し続けていた。
同時に俺自身にも指を絡みつかせ、上下に動かして刺激を送ってくれる。
「ん…、ああ…」
さすがにもう、余分なことを考えている余裕は無くなっていた。
早く一つになりたくて
「来て…、白久と…繋がりたい…」
俺は大胆な言葉を口にする。
白久は俺の足を抱え上げむき出しになった部分に唾液を塗り込むと、逞しいモノでゆっくりと貫いてくれた。
「あ！ああっ…」
満たされて歓喜の声を上げる俺を、白久が荒々しく揺さぶってくる。
俺自身を刺激している白久の指の動きは、激しさを増していく。
俺達は繋がりながら唇を合わせ、お互いの存在を強烈に感じ合っていた。
「白久っ…」
俺が想いを解放すると
「荒木…」
白久も俺の中に熱い想いを放ってくれる。
１度だけでは情熱の波は去らず、俺達はその後も何度も想いを確かめ合った。
白久の腕の中で、俺は年の始めから一緒に過ごせる嬉しさを感じていた。
お年玉をもらえる嬉しいイベントであるのに、白久と出会う前の正月の記憶が色褪せていることに気が付いた。
白久との出会いを思い出し
「ふかやから連絡無いね、上手くいったのかな」
思わず呟いた俺に
「特別報酬を貰えていると良いのですが」
白久が悪戯っぽそうな返事を返してきた。
「特別報酬の詳しい内容は、俺達だけの秘密だからね」
日野の前でそれをバラされそうになった時の羞恥がよみがえり顔が熱くなる。
「はい、飼い主との秘密が増えていくのは、良いものですね」
嬉しそうな声の白久に
「そうだね」
俺は笑って答え、彼の温もりに溶け込むように意識を手放すのであった。
今年もよろしくお願いします」
白久は優しく微笑みながら、俺にペコリと頭を下げた。
ワイルドな格好をしていても、いつもの白久であるようだ。
「あ、うん
明けましておめでとう
今年もよろしくね」
俺も慌てて返事を返す。
日野と黒谷も同じようなやり取りをしていた。
「今日は朝からカズハ様にトリミング？と言うのでしょうか
髪を整えてもらいました
服も見繕っていただいたのです
おかしくは無いですか？
道行く人が、私とすれ違うときに視線を合わせないようにしているような気がして…」
戸惑い気味の白久に
「おかしくないよ！凄い格好良い！
そっか、カズハさんトリマーだもんな、こんなことも出来るんだ」
俺は微笑んでみせた。
頭を撫でてあげたかったけど、せっかくプロにセットしてもらったのだからと我慢する。
「飼い主と合流したから、他人の目はもう大丈夫
むしろ俺が『正月だからって、飼い犬にメチャクチャ気合い入った格好をさせているバ飼い主』に見られるよ
あー、俺ももっと気合い入れた格好にすれば良かった」
頬を膨らませる俺に
「荒木はいつでも、大変お可愛らしいので大丈夫です」
白久は期待通りの言葉を言ってくれた。
そんなやり取りをしていると、ホームに電車が到着する。
俺達は話を切り上げて、電車に乗りこんだ。
車内はそれなりに混んでいる。
皆俺達と同じように、この先にあるお寺に初詣に行くのだろう。
白久ははぐれないよう、俺の腰に手を回し寄り添ってくれていた。
乗客数はどんどん増えていき、お寺がある駅に着く頃には朝のラッシュ時と変わらない混雑状況になる。
駅について大量に吐き出された人波にモミクチャにされたが、俺達は何とかバラケずに改札を抜けることが出来た。
「凄い混雑、去年ってこんなんだったっけ？」
「去年初詣に行ったのは３日だったから、もう少し人が少なかったような気がする」
移動する大勢の人に混じり、俺達も少しずつ進んで行く。
「荒木、どうもこの先、入場規制を行っているようです
人の流れが止まっております」
背の高い白久が遠くを確認して教えてくれる。
「せっかく早目に来たのにね
日野、苦しくないですか？」
黒谷が人に埋もれている日野（俺もだけど…）に声をかけていた。
「大丈夫、どうせ今日は泊まりだし、ゆっくり行こうよ
黒谷と密着しながら歩けるなんて、滅多にないしさ」
日野は黒谷にすり寄っていく。
俺も真似して白久の側に密着してみる。
白久が手を握ってくれて、俺は幸せな気分に浸り境内を目指してノロノロと歩くのだった。
俺達はゆっくり進みながら、予定を確認する。
「今年も屋台制覇するだろう？そう思って、朝はあんまり食べないできたんだ」
「もちろん！目指せ、全制覇だぜ」
こんな時の日野は本当に頼もしい。
「カズハ君のところでマイボトルを借りて、イヤーズティーを煎れてきました
喉が渇いたら言ってくださいね」
「今年はマリーゴールドという花の入ったものと、糀（こうじ）とあられが入ったものだそうです
どちらも良い香りでしたよ」
犬達もそつなく頼もしかった。
「こんなにワイルドに格好いいのに、マイボトル持参って」
「やっぱ、うちの犬達ってギャップ萌の極みだよな」
俺と日野の自慢げな囁き合いに、犬達は誇らかな気分になっているようだった。
山門をくぐってから１時間近くかかって、やっと境内が見えてくる。
「いつもなら２０分位で行けるんだけどな」
「時間かかった分、念入りにお参りしないと」
「今年は、超神頼みしちゃうぜ」
「確かに」
俺も日野も、だんだん真剣になってくる。
最後には自分の能力が物を言うとはわかっていても、得意な問題が出題されていますように、くらいの頼み事はしたい。
俺は奮発して５００円玉を賽銭箱に投げ入れると、熱心に拝んでしまうのであった。
「ふう」
長々と祈った俺が顔を上げると、案の定、人混みに紛れて日野と黒谷の姿を見失っていたが白久は側にいてくれた。
２年目ともなると手慣れたもので、直ぐに白久が気配で黒谷を見つけて合流し皆でおみくじを引く。
全員が『吉』という結果に驚き『平等だ』と言って笑い合った後、去年のように手分けして屋台の食べ物をゲットすることにした。
そんなとき、ふかやから飼って欲しいと思える人がいる、と黒谷のスマホに連絡が入った。
これからその相手の依頼を受けるため、現場に向かうらしい。
犬のふかやに頼まれた猫の捜索依頼であるという情報が、俺と白久の出会いを思い起こさせて心配になってしまった。
黒谷のスマホを借りて、励ましの言葉を送ることしか出来ない自分がもどかしい。
日野も心配して、ふかやにメッセージを送っていた。
それから俺達は境内に着くまでの遅れを取り戻すようテキパキ動き、昼過ぎにはテント内で大量の食料を堪能することが出来ていた。
「飼い主と食べる屋台の味、美味しいです」
頬を染める飼い犬が格好いいのに可愛くて、俺も日野も顔が緩みっぱなしになるのであった。
「今年も屋台堪能しまっくた、満足」
日野と黒谷は今回も最後は甘酒で初詣を締めくくっている。
俺は白久に煎れてもらった糀とあられ入りのイヤーズティーを飲んでいた。
夕方になり寒くなってきたため冷えた身体に、温かく甘い紅茶が染み渡っていく。
「また来年も、４人で初詣に来よう」
俺の言葉に、皆嬉しそうに頷いてくれた。
帰りはスムーズに移動出来て、７時過ぎには影森マンションに着くことが出来た。
俺と日野は各々、飼い犬の部屋に帰っていく。
これからは飼い犬と２人っきりの甘い時間が待っている。
俺は嬉しい期待で胸がドキドキしてきた。
「荒木、こちらはお年玉です」
白久が分厚いポチ袋を手渡してくれる。
「ありがと
あの、俺も白久にお年玉的な物があるんだ
いや、俺からじゃなくて、親父からなんだけど」
そう言って細長い箱を手渡すと
「お父様から？私がいただいても、よろしいのですか？」
白久はとても驚いた顔になる。
「うん、多分まだ親父の中で白久とハチ公が被ってんだよ
待たせないよう気を付けろって言われた」
俺は少し苦笑する。
「俺とお揃いの腕時計なんだ
白久、腕時計なんて付ける？」
白久は丁寧に包装紙を剥がし箱の中身を改め
「荒木とお揃い…」
腕時計を手にとって幸せそうな顔になった。
「付けてあげる」
俺は時計を白久の左手首に巻いてあげた。
自分の時計も見えるように手を差しだして
「ほら、お揃い」
そう示して見せた。
腕時計の赤いバンドは、白久にとても似合っていた。
「私は、これからも荒木と同じ時を刻んでゆけるのですね」
白久は時計を見て声を詰まらせる。
親父のプレゼントは、白久の中でもっと違う意味の物に変化しているようであった。
「荒木、一生お側に居させてください」
俺を抱きしめてくる白久の必死な想いが切なかった。
「うん、ずっと一緒だから」
俺も白久を抱きしめ返し、そう宣言する。
そしてそっと頭を撫でてあげた。
「セットが崩れそうだったから、今日は撫でられなかったんだ
もうどこにも行かないから、乱れちゃってもいいよね
この髪型、凄く格好いいよ
今度カズハさんにお礼言っとかなきゃ
そんで、たまにはこうやってセットしてもらおう」
俺は笑って、もう少し乱暴に撫でてあげる。
「荒木に気に入っていただけて、良かったです
荒木の格好良い飼い犬でいられるよう、頑張ります」
健気な飼い犬に、俺は軽いキスをした。
「今夜はこのまましてもらって良い？」
ついばむように唇を合わせながら、俺は期待した顔できいてしまう。
いつもとは違うワイルドな白久と繋がってみたい欲望を、押さえきれなくなっていた。
「もちろんです」
彼は大きく頷き、俺の服を脱がせ始めた。
白久は合わせていた唇を、頬や首筋に移動させ俺を刺激していく。
乱れた白久の髪の間から、シルバーのイヤーカフスがチラチラとのぞいていた。
「これもカズハさんに借りたの？空に似合いそうだね
でも、白久にも似合ってる」
俺は白久の髪を撫でながらそう話しかけた。
「こちらは、ウラが大麻生に用意した物を借りたのです
荒木に気に入っていただけそうな柄を選んでみました」
「そっか、ウラって大麻生に着けさせる小物にも気を使ってるもんね
？俺の好きそうな柄」
不審に思いよくよく見ると、小さく肉球のシルエットが掘られている。
「可愛い！こんなのあるんだ
俺も受験済んだら、白久に着けさせる小物とか選んでみようかな
今まで首輪しかあげたことなかったし」
自分で白久を仕立て上げることを考えて、ワクワクしてくる。
「どうか私を荒木好みの所有物にしてください」
倒錯的な白久の懇願に
「うん、白久は俺のだから」
俺は素直に頷いていた。
俺達は舌を絡ませ合って唇をむさぼりあう。
白久の指は俺の胸の突起を優しく強く刺激し続けていた。
同時に俺自身にも指を絡みつかせ、上下に動かして刺激を送ってくれる。
「ん…、ああ…」
さすがにもう、余分なことを考えている余裕は無くなっていた。
早く一つになりたくて
「来て…、白久と…繋がりたい…」
俺は大胆な言葉を口にする。
白久は俺の足を抱え上げむき出しになった部分に唾液を塗り込むと、逞しいモノでゆっくりと貫いてくれた。
「あ！ああっ…」
満たされて歓喜の声を上げる俺を、白久が荒々しく揺さぶってくる。
俺自身を刺激している白久の指の動きは、激しさを増していく。
俺達は繋がりながら唇を合わせ、お互いの存在を強烈に感じ合っていた。
「白久っ…」
俺が想いを解放すると
「荒木…」
白久も俺の中に熱い想いを放ってくれる。
１度だけでは情熱の波は去らず、俺達はその後も何度も想いを確かめ合った。
白久の腕の中で、俺は年の始めから一緒に過ごせる嬉しさを感じていた。
お年玉をもらえる嬉しいイベントであるのに、白久と出会う前の正月の記憶が色褪せていることに気が付いた。
白久との出会いを思い出し
「ふかやから連絡無いね、上手くいったのかな」
思わず呟いた俺に
「特別報酬を貰えていると良いのですが」
白久が悪戯っぽそうな返事を返してきた。
「特別報酬の詳しい内容は、俺達だけの秘密だからね」
日野の前でそれをバラされそうになった時の羞恥がよみがえり顔が熱くなる。
「はい、飼い主との秘密が増えていくのは、良いものですね」
嬉しそうな声の白久に
「そうだね」
俺は笑って答え、彼の温もりに溶け込むように意識を手放すのであった。
