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しっぽや(No.11~22)

あの会見から3年以上が過ぎ、今日、影森マンションの入居者第1号として、俺とナガトが引っ越してきた。
「ギリギリ間に合った、ってとこかな
 さすがにもう、ナガトより俺の方が年上に見えるようになってたから
 ちぇっ、俺ももうすぐ30代突入か
 オッサンの仲間入りだ」
溜め息をつく俺に
「ゲン、貴方の物の考え方、柔軟性は以前とちっとも変わってませんよ
 とても若々しくて、新鮮です」
ナガトはソッと寄り添ってくれる。
「黒谷と白久も、すぐに引っ越して来ることになってます
 あの2人にここの備え付けの家電、使いこなせるでしょうかね
 私はゲンがいるから、彼等より現代に詳しくなりました」
そう言って、ナガトは面白そうに笑う。

「ここ、ペット可だから、マリちゃんとも暮らせるしな
 明日、迎えに行かなくちゃ
 俺、両手に華じゃん!ウハウハじゃん!」
両手をワキワキさせる俺に
「あの、でも、夜間はマリさん、寝室には出入り禁止にしてくださいね」
ナガトが申し訳なさそうな顔を向ける。
「そりゃ、俺もさすがにそれは邪魔されたくない」
俺はナガトにそう言ってキスをした。

「どれ、荷物整理は明日からにして、今日は新しいベッドのスプリングを確かめるとするか」
俺の言葉に
「そうですね」
ナガトが潤んだ瞳を向けてくる。
俺達は軽く唇を合わせると山積みの段ボール箱の間をすり抜け、寝室に向かうのであった。

ナガトのため、化生のためにしてやりたい事も、まだまだ山積みだ。
けれどもその山を、俺達は2人で1歩づつ乗り越えて行くことが出来ると信じている。
彼等の愛に応えるため、俺はこの先も頑張っていくことが出来るのだ。
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