しっぽや(No.58~69)
食べ終わった空がお茶を飲んでいるタイミングで事務所のドアがノックされた。
知らない人間の気配であるため、依頼人のようであった。
暫くすると
「チワワの依頼だ、誰が出る?」
黒谷の声が聞こえてくる。
「白久、まだ食ってるだろ?誕生日なんだし、ゆっくりしなよ」
空はそう言って笑うと
「俺が出るぜ」
ソファーから立ち上がり、控え室を出ていった。
「白久、貴方誕生日を覚えていたのですか?」
長瀞が驚いた顔を向けてきた。
「いえ、荒木が決めてくださったのです」
私は黒谷と空にした話を長瀞にも伝える。
「成る程、初めて契った日ですか」
長瀞は感心したように頷いた。
「荒木様は、素敵なことを考えますね
誕生日ではないですが、私とゲンにとっての特別な日は一緒に暮らし始めた日です
影森マンションではなく、別の場所ですけどね
再び飼い主と共に暮らせる事は、大いなる喜びでした
新郷が桜様と一緒に暮らし始めた日を記念日だと言っていたので、真似させてもらったのです
飼い主が出来たのは私が先でしたが、飼い主と一緒に暮らし始めたのは新郷が先で、それが少し羨ましかったから」
長瀞は懐かしそうな顔になる。
「誕生日ならお昼は事務所でビニ弁なんて食べずに、せめてファミレスにでも行けば良かったのでは?」
食後のお茶を煎れてくれた長瀞にそう聞かれ
「ファミレスには夕飯で行きたくて
私と荒木の思い出の店なのです」
私は1年前を思い出して答えた。
きっと、荒木もそう思っていてくれているという予感があった。
「そうなのですか
私も久しぶりに、ゲンとイタ飯でも食べに行こうかな」
長瀞は幸せそうに微笑んだ。
その後、長瀞や双子は捜索に出て行った。
私は控え室ではなく、事務所で荒木を待っていた。
階段を上がってくる愛しい飼い主の気配を察し、私の心が浮き立った。
「荒木、シロの誕生日を考えてくれたんだって?ありがとう
今日、シロを休みにしてあげれば良かったかな」
やってきた荒木に、黒谷がそう言葉をかける。
荒木は私に『捜索に出ていて欲しい』と言い、午前中の私の成果を誉めて頭を撫でてくださった。
私が捜索を頑張りたいと思っていたことを、荒木は感じていてくれた。
それはとても嬉しいことであった。
荒木が事務所に来てから、依頼人がやってくる。
ミックス犬の依頼であった。
「私が参ります」
チワワを探しに行っている空はまだ事務所に戻ってきていない。
伺うような黒谷の視線に頷いて、私は率先して依頼人の話を聞くと捜索に出かけた。
依頼のあったミックス犬は、すぐに見つかった。
飼い主に遊んでもらいたくて、気を引くために脱走したのだ。
家の近くをウロウロしている気配で、その居所は用意に察しが付いた。
犬が居なくなったことを心配した飼い主がすぐに依頼しに来てくれたため、事故にあう前に保護出来たのは幸いであった。
『帰れる家、待っていてくれる飼い主がいるのは、とても幸せなことなのですよ
自らその幸せを放棄してはいけません』
私はそう伝えながら、事務所で荒木が待っていてくれる幸せを感じていた。
事務所に戻り事の顛末を荒木に伝えると、彼は俯いてしまう。
クロスケ殿が脱走してから、すぐに依頼に来なかったことを悔やんでいるのだろう。
「自ら姿を消そうとした者の捜索は、難航します
お役に立てず、申し訳ありませんでした」
私はそう言うと、そっと荒木に寄り添った。
荒木は甘えるように私の胸に頭をすり付け『白久は頑張ってくれたよ』と言ってくれた。
業務終了30分前に、私と荒木は仕事を上がらせてもらった。
事務所を出た私達の足は、夕飯を食べるため自然とファミレスに向かっていた。
1年前、私は荒木と共に初めてファミレスに行く約束をしたのだ。
その時はクロスケ殿の事があり行きそびれてしまったが、1週間遅れでその約束は果たされた。
そんなことを懐かしく思い出していると
「今日は誕生日プレゼントで、俺のおごり」
荒木がそう言って笑ってくれる。
「ありがとうございます
今日はチーズインハンバーグにいたします」
私は幸せな気持ちでいっぱいになってしまう。
飼い主に気にかけてもえることが、とても嬉しく感じられた。
夕飯を終えた私達は、影森マンションに帰って行く。
今日は私の誕生日であると共に、2人の記念日だ。
荒木にも喜んでもらいたくて、私なりに色々準備していたことがあった。
荒木には先にシャワーを使ってもらい、その間に私はケーキの用意をする。
ひろせに教えてもらい、自分でシフォンケーキを焼いたのだ。
『荒木は肉球の模様がお好きだから』
あの模様が上手く描けるよう、私は密かに練習していた。
今こそ、その成果をお見せする時だ、と私は慎重にケーキにチョコペンを走らせる。
出来上がった肉球ケーキを荒木はとても喜んでくれて、私のケーキに祝いの言葉を書いてくれた。
その心遣いに胸が熱くなり、荒木への愛が増していくのであった。
ケーキの他にも、クリスタルクラスターを荒木にプレゼントする。
荒木のお誕生日に日野様が水晶のブレスをプレゼントしていたので、あると便利だと三峰様が用立ててくださったのだ。
水晶の結晶がひとかたまりになって形を成すそれは、私達化生を連想させた。
一人一人は小さな水晶でも、それが集まると何かを成し遂げられる気がする。
クリスタルクラスターの様に、飼い主を休ませる場になりたいと私は密かに思うのであった。
荒木も、私にプレゼントを用意してくれていた。
それは、黒くて立派な新しい首輪だった。
飼い主からいただける首輪、それは飼い犬の何よりの証だ。
荒木に所有されている喜びが、胸一杯に広がっていく。
自分が荒木のものであるという誇らかな思いで、心が満たされる。
首輪を付けた私を、荒木は愛おしそうに見つめ
「格好いい」
と言ってキスをしてくれた。
「気に入っていただけたのなら、光栄です」
誇らかな思いのまま、私も荒木にキスを返す。
私達は抱き合って、熱く唇を重ねていた。
「このまま、荒木をプレゼントでいただいてもよろしいでしょうか」
熱い想いが高まった私が飼い主に甘えるように問いかけると、荒木は了承してくれる。
私は荒木を抱いてベッドに移動すると、プレゼントの包装紙を開けるようなときめきと共に彼の服を脱がせていった。
『誕生日』ということで、荒木にねだってみたいことがもう一つあった。
いつも新郷に自慢されていた『甘噛み』。
飼い主に歯を立てるなど本当に喜ばれる事なのか、疑問であると共に興味があったのだ。
そのため、新郷にやり方を教わっていた。
桜様がお好きだというそれを、私も荒木に試してみたかった。
プレゼントをねだる私に
「俺に出来ることなら何でも…」
荒木はそう言ってくれた。
「お嫌でしたら、制止のご命令を」
私はそう言い添えて、彼の肌に舌を這わせていく。
そしてその肌に、そっと歯を立ててみた。
荒木の体がビクリと反応する。
しかし、制止の命令はかからなかった。
けっして傷つけないよう細心の注意を払いながら、歯を立てる場所を変えていく。
舌で荒木の肌をなぞり、試すように色々な場所を噛んでいった。
荒木は、私の想像以上の反応を返してくれる。
「あっ…しろ…くっ…、しろくっ…」
私の手の内にある荒木自身が、たちまち堅くなっていく。
明らかに、いつもより反応が良かった。
熱い声で名前を呼ばれると、私自身も激しく反応してしまった。
新郷が言っていたことは真実であった、と私は身を持って理解した。
飼い主と過ごした時が長い者の言うことは、やはり勉強になるものだ。
私達は何度も激しく繋がりあい、想いを確かめ合った。
それは、1年前に初めて荒木と契った時のような感動的な一時であった。
荒木があまりに可愛いかったので、私は翌日が休みではないことを失念してしまった。
私の腕の中の荒木は、心なしかぐったりしている。
「荒木、お体は大丈夫ですか」
心配した私が問うと荒木は『プレゼントを気に入ってもらえたなら良かった』と言ってくれた。
私の胸に顔を埋め笑顔になる荒木に、愛しい想いが増していく。
「甘噛み、お気に召していただけたようで良かったです
これからも新郷に色々習って、荒木にもっと気持ち良くなってもらえるよう頑張ります」
私の言葉で、荒木の頬が赤く染まる。
「白久、他の人の前でそれを言っちゃダメだよ」
拗ねたように見上げてくる荒木に
「はい、このことは2人だけの秘密ですね」
私は笑いながら答えた。
「桜さんって、いつもあんなハードなことされてるのかな…」
荒木は真っ赤になって呟いている。
「いえ、新郷に言わせると、これはほんの序の口らしく
荒木はまだ高校生だからこの辺まで、と習いました」
私が答えると
「あれで、序の口…」
荒木は呆然と呟いた。
「白久、徐々にで良いからね」
慌てたような荒木に
「ええ、私達は私達のペースで時を重ねてまいりましょう
新郷達が10年以上かけてきた道を一足飛びに体験してしまうのは、もったいないですから」
私はそう言葉をかけた。
「うん、俺達も10年、20年、もっとずっとずっと先まで同じ時を過ごしていこう
まだ1年目、でも、もう1年経ったんだね
色々あったけど、良い1年だったな…」
「私もです、化生してからこんなにも濃密な時を過ごしたことはありません」
私が荒木を強く抱きしめると、荒木も抱きしめ返してくれる。
「荒木、愛しております」
「白久、愛してる」
私達は愛を囁きながら抱きしめあってお互いの温もりを感じ、安らぎの眠りに落ちていくのであった。
知らない人間の気配であるため、依頼人のようであった。
暫くすると
「チワワの依頼だ、誰が出る?」
黒谷の声が聞こえてくる。
「白久、まだ食ってるだろ?誕生日なんだし、ゆっくりしなよ」
空はそう言って笑うと
「俺が出るぜ」
ソファーから立ち上がり、控え室を出ていった。
「白久、貴方誕生日を覚えていたのですか?」
長瀞が驚いた顔を向けてきた。
「いえ、荒木が決めてくださったのです」
私は黒谷と空にした話を長瀞にも伝える。
「成る程、初めて契った日ですか」
長瀞は感心したように頷いた。
「荒木様は、素敵なことを考えますね
誕生日ではないですが、私とゲンにとっての特別な日は一緒に暮らし始めた日です
影森マンションではなく、別の場所ですけどね
再び飼い主と共に暮らせる事は、大いなる喜びでした
新郷が桜様と一緒に暮らし始めた日を記念日だと言っていたので、真似させてもらったのです
飼い主が出来たのは私が先でしたが、飼い主と一緒に暮らし始めたのは新郷が先で、それが少し羨ましかったから」
長瀞は懐かしそうな顔になる。
「誕生日ならお昼は事務所でビニ弁なんて食べずに、せめてファミレスにでも行けば良かったのでは?」
食後のお茶を煎れてくれた長瀞にそう聞かれ
「ファミレスには夕飯で行きたくて
私と荒木の思い出の店なのです」
私は1年前を思い出して答えた。
きっと、荒木もそう思っていてくれているという予感があった。
「そうなのですか
私も久しぶりに、ゲンとイタ飯でも食べに行こうかな」
長瀞は幸せそうに微笑んだ。
その後、長瀞や双子は捜索に出て行った。
私は控え室ではなく、事務所で荒木を待っていた。
階段を上がってくる愛しい飼い主の気配を察し、私の心が浮き立った。
「荒木、シロの誕生日を考えてくれたんだって?ありがとう
今日、シロを休みにしてあげれば良かったかな」
やってきた荒木に、黒谷がそう言葉をかける。
荒木は私に『捜索に出ていて欲しい』と言い、午前中の私の成果を誉めて頭を撫でてくださった。
私が捜索を頑張りたいと思っていたことを、荒木は感じていてくれた。
それはとても嬉しいことであった。
荒木が事務所に来てから、依頼人がやってくる。
ミックス犬の依頼であった。
「私が参ります」
チワワを探しに行っている空はまだ事務所に戻ってきていない。
伺うような黒谷の視線に頷いて、私は率先して依頼人の話を聞くと捜索に出かけた。
依頼のあったミックス犬は、すぐに見つかった。
飼い主に遊んでもらいたくて、気を引くために脱走したのだ。
家の近くをウロウロしている気配で、その居所は用意に察しが付いた。
犬が居なくなったことを心配した飼い主がすぐに依頼しに来てくれたため、事故にあう前に保護出来たのは幸いであった。
『帰れる家、待っていてくれる飼い主がいるのは、とても幸せなことなのですよ
自らその幸せを放棄してはいけません』
私はそう伝えながら、事務所で荒木が待っていてくれる幸せを感じていた。
事務所に戻り事の顛末を荒木に伝えると、彼は俯いてしまう。
クロスケ殿が脱走してから、すぐに依頼に来なかったことを悔やんでいるのだろう。
「自ら姿を消そうとした者の捜索は、難航します
お役に立てず、申し訳ありませんでした」
私はそう言うと、そっと荒木に寄り添った。
荒木は甘えるように私の胸に頭をすり付け『白久は頑張ってくれたよ』と言ってくれた。
業務終了30分前に、私と荒木は仕事を上がらせてもらった。
事務所を出た私達の足は、夕飯を食べるため自然とファミレスに向かっていた。
1年前、私は荒木と共に初めてファミレスに行く約束をしたのだ。
その時はクロスケ殿の事があり行きそびれてしまったが、1週間遅れでその約束は果たされた。
そんなことを懐かしく思い出していると
「今日は誕生日プレゼントで、俺のおごり」
荒木がそう言って笑ってくれる。
「ありがとうございます
今日はチーズインハンバーグにいたします」
私は幸せな気持ちでいっぱいになってしまう。
飼い主に気にかけてもえることが、とても嬉しく感じられた。
夕飯を終えた私達は、影森マンションに帰って行く。
今日は私の誕生日であると共に、2人の記念日だ。
荒木にも喜んでもらいたくて、私なりに色々準備していたことがあった。
荒木には先にシャワーを使ってもらい、その間に私はケーキの用意をする。
ひろせに教えてもらい、自分でシフォンケーキを焼いたのだ。
『荒木は肉球の模様がお好きだから』
あの模様が上手く描けるよう、私は密かに練習していた。
今こそ、その成果をお見せする時だ、と私は慎重にケーキにチョコペンを走らせる。
出来上がった肉球ケーキを荒木はとても喜んでくれて、私のケーキに祝いの言葉を書いてくれた。
その心遣いに胸が熱くなり、荒木への愛が増していくのであった。
ケーキの他にも、クリスタルクラスターを荒木にプレゼントする。
荒木のお誕生日に日野様が水晶のブレスをプレゼントしていたので、あると便利だと三峰様が用立ててくださったのだ。
水晶の結晶がひとかたまりになって形を成すそれは、私達化生を連想させた。
一人一人は小さな水晶でも、それが集まると何かを成し遂げられる気がする。
クリスタルクラスターの様に、飼い主を休ませる場になりたいと私は密かに思うのであった。
荒木も、私にプレゼントを用意してくれていた。
それは、黒くて立派な新しい首輪だった。
飼い主からいただける首輪、それは飼い犬の何よりの証だ。
荒木に所有されている喜びが、胸一杯に広がっていく。
自分が荒木のものであるという誇らかな思いで、心が満たされる。
首輪を付けた私を、荒木は愛おしそうに見つめ
「格好いい」
と言ってキスをしてくれた。
「気に入っていただけたのなら、光栄です」
誇らかな思いのまま、私も荒木にキスを返す。
私達は抱き合って、熱く唇を重ねていた。
「このまま、荒木をプレゼントでいただいてもよろしいでしょうか」
熱い想いが高まった私が飼い主に甘えるように問いかけると、荒木は了承してくれる。
私は荒木を抱いてベッドに移動すると、プレゼントの包装紙を開けるようなときめきと共に彼の服を脱がせていった。
『誕生日』ということで、荒木にねだってみたいことがもう一つあった。
いつも新郷に自慢されていた『甘噛み』。
飼い主に歯を立てるなど本当に喜ばれる事なのか、疑問であると共に興味があったのだ。
そのため、新郷にやり方を教わっていた。
桜様がお好きだというそれを、私も荒木に試してみたかった。
プレゼントをねだる私に
「俺に出来ることなら何でも…」
荒木はそう言ってくれた。
「お嫌でしたら、制止のご命令を」
私はそう言い添えて、彼の肌に舌を這わせていく。
そしてその肌に、そっと歯を立ててみた。
荒木の体がビクリと反応する。
しかし、制止の命令はかからなかった。
けっして傷つけないよう細心の注意を払いながら、歯を立てる場所を変えていく。
舌で荒木の肌をなぞり、試すように色々な場所を噛んでいった。
荒木は、私の想像以上の反応を返してくれる。
「あっ…しろ…くっ…、しろくっ…」
私の手の内にある荒木自身が、たちまち堅くなっていく。
明らかに、いつもより反応が良かった。
熱い声で名前を呼ばれると、私自身も激しく反応してしまった。
新郷が言っていたことは真実であった、と私は身を持って理解した。
飼い主と過ごした時が長い者の言うことは、やはり勉強になるものだ。
私達は何度も激しく繋がりあい、想いを確かめ合った。
それは、1年前に初めて荒木と契った時のような感動的な一時であった。
荒木があまりに可愛いかったので、私は翌日が休みではないことを失念してしまった。
私の腕の中の荒木は、心なしかぐったりしている。
「荒木、お体は大丈夫ですか」
心配した私が問うと荒木は『プレゼントを気に入ってもらえたなら良かった』と言ってくれた。
私の胸に顔を埋め笑顔になる荒木に、愛しい想いが増していく。
「甘噛み、お気に召していただけたようで良かったです
これからも新郷に色々習って、荒木にもっと気持ち良くなってもらえるよう頑張ります」
私の言葉で、荒木の頬が赤く染まる。
「白久、他の人の前でそれを言っちゃダメだよ」
拗ねたように見上げてくる荒木に
「はい、このことは2人だけの秘密ですね」
私は笑いながら答えた。
「桜さんって、いつもあんなハードなことされてるのかな…」
荒木は真っ赤になって呟いている。
「いえ、新郷に言わせると、これはほんの序の口らしく
荒木はまだ高校生だからこの辺まで、と習いました」
私が答えると
「あれで、序の口…」
荒木は呆然と呟いた。
「白久、徐々にで良いからね」
慌てたような荒木に
「ええ、私達は私達のペースで時を重ねてまいりましょう
新郷達が10年以上かけてきた道を一足飛びに体験してしまうのは、もったいないですから」
私はそう言葉をかけた。
「うん、俺達も10年、20年、もっとずっとずっと先まで同じ時を過ごしていこう
まだ1年目、でも、もう1年経ったんだね
色々あったけど、良い1年だったな…」
「私もです、化生してからこんなにも濃密な時を過ごしたことはありません」
私が荒木を強く抱きしめると、荒木も抱きしめ返してくれる。
「荒木、愛しております」
「白久、愛してる」
私達は愛を囁きながら抱きしめあってお互いの温もりを感じ、安らぎの眠りに落ちていくのであった。