しっぽや(No.58~69)
俺達はすでに馴染みになったファミレスに移動する。
事前に話し合っていたわけではないが、2人の足は自然と店に向かっていたのだ。
「今日は誕生日プレゼントで、俺のおごり」
俺が笑って声をかけると
「ありがとうございます
今日はチーズインハンバーグにいたします」
白久は、少し懐かしそうな顔で微笑んで答えた。
ファミレスでの白久の行動は、すっかり板に付いたものとなっている。
『初めて来た時は、どこかオドオドしてたっけ』
俺は1年前を思い出し、笑ってしまった。
「1年前の私は、飼い主に巡り会えない日々を空しく数えておりました
けれども荒木と出会い、飼っていただいてからは荒木の笑顔を数えております
幸せを数えているのです」
白久は俺を見ながら、嬉しそうにそう言った。
「誕生日、おめでとう
何歳って言えばいいのかな
歳って言うか、出会ってからの年月の方がしっくりくる数え方か」
「1年、ですね
これからも、数字が増えていくと思うと楽しみで仕方ありません
新郷にはよく『俺は飼ってもらってから10年以上経ってる、二桁だ』と自慢されますから」
苦笑する白久に
「俺達だって、10年くらいすぐだよ!
って、10年後の自分って想像付かないけど」
俺は舌を出して見せた。
「そうだ、ひろせに教えてもらって、ケーキを焼いたのです
ここではデザートを食べないで、部屋に来てください」
白久が思い出したようにそう言った。
「自分の誕生日ケーキ、自分で焼いたの?」
俺が聞くと
「誕生日でもありますが、記念日でもあります
荒木に記念日の贈り物をしたくて」
白久は優しく微笑んだ。
「楽しみ!」
白久らしい細やかな気遣いが嬉しくて、俺も笑顔になった。
夕飯を食べ終わり一息付いた俺達は、影森マンションの白久の部屋に帰っていく。
そこはすでに『自分の部屋』と同じ感覚になる場所であった。
「ケーキの準備をしますので、先にシャワーをお使いください」
白久を洗ってあげようと思ってたけど、そう言われた俺は素直にシャワーを浴びた。
『そういえば、夏は俺がシャワー浴びてる間、白久はいつもご飯の支度しててくれたっけ』
そんなことを思い出す。
着替えて部屋に戻ると、テーブルの上には生クリームが添えられたシフォンケーキとコーヒーがのっていた。
ケーキの上には、チョコで肉球が描かれている。
「可愛い!」
俺が笑うと
「荒木はこの模様がお好きなようですので
犬の身であれば、自前のスタンプを押せたのですが
人の身になりたくて化生したのに、犬の身を恋しいと思う日が来るとは面白いものです」
白久は悪戯っぽく笑った。
「肉球描いたチョコペンって、まだ残ってる?」
「少しなら残ってます」
俺は白久からチョコペンを受け取ると、白久のケーキに『お誕生日おめでとう』の文字を書き足した。
『誕』の字がかなり潰れてしまったが、白久はとても喜んでくれた。
ケーキを食べてくつろぐ俺に
「荒木に、プレゼントがあるのです」
白久は引き出しから布に包まれた物を取り出してきた。
「白久の誕生日なんだから、いいのに」
俺は慌ててしまうが
「今日は私たち2人の記念日ですから」
白久は優しく微笑んでいる。
渡された物の布をめくると、固まりの水晶があった。
「こちらは、クリスタルクラスターです
荒木、誕生日に日野様から水晶のブレスをいただいていましたね
クラスターには浄化作用がありますので、あのブレス、使用していない時はこの上で休ませてあげてください
こちらのクラスターも、三峰様が用立ててくださったのです」
白久の説明に、俺は感心してしまう。
「へー、そんなことするんだ
クラスターか、水晶の固まりって何だか神秘的でキレイだね」
嬉しくなって、俺はそれをしげしげと眺めてみた。
「ありがとう、大事にする
部屋に飾って、ブレスのせておくよ」
俺の言葉に、白久は嬉しそうに笑っていた。
「あの、俺も白久にプレゼントがあるんだけど…」
先に素敵な物を貰ってしまったので、俺はそれを渡すのを躊躇ってしまう。
「前のプレゼントと被ってて、ごめん」
モジモジと差し出した紙袋を、白久は大事そうに受け取ってくれた。
袋から出した物を見て白久の顔が輝いた。
それは、黒い大型犬用の首輪であった。
「白久、ハロウィンの時、黒のスーツ着てたでしょ
あれ見て、白久の毛色って黒も似合うな、って
前にあげたのは赤い首輪だったから、今度は黒を用意してみたんだ
普段、使えないものだけど…白久に合いそうだったから…つい」
言い訳じみたことを言う俺を、白久は抱きしめてくれた。
「荒木に首輪をいただけると、飼われているという実感が強くなります
所有されている喜びに満たされるのです」
倒錯的な言葉ではあったが、白久が嬉しそうなのでホッとしてしまった。
「着けてみてもよろしいでしょうか」
そう聞いてくる白久に
「うん、着けて見せて
でも、首輪してるとこは俺以外に見せちゃダメだからね」
俺はそう命令する。
「はい」
白久は神妙な顔で頷いて、首輪を着けて見せてくれた。
思った通り、黒い首輪は白久によく似合っていた。
赤い首輪のような華やかな可愛らしさではなく、ワイルドな格好良さを引き立たせてくれる。
「格好いい」
俺は思わず、白久にキスをした。
「気に入っていただけたのなら、光栄です」
白久は誇らしそうな顔になり、キスを返してくれる。
俺達は抱き合いながら、唇を重ね合った。
徐々に息が荒くなっていく。
「このまま、荒木をプレゼントにいただいてもよろしいでしょうか」
耳元で熱く囁く白久に
「首輪、苦しくない?
なら、俺も、このままして欲しい…」
俺はつい大胆なお願いをしてしまう。
白久は頷いて、俺を抱き上げベッドまで運ぶと服を脱がせていった。
自分も服を脱ぎ、首輪を身につけただけの状態になる。
そんな状態の白久に抱かれていると、本当に大型犬といるような倒錯的な気分になってしまった。
「荒木、誕生日のプレゼントをもう少しねだってしまってもよろしいでしょうか」
上気した顔の白久が上から俺の顔をのぞきこんできた。
「うん、俺に出来ることなら何でも…」
熱い吐息と共に答えると
「いつも新郷に自慢されていたので、私も試してみたかったのです
お嫌でしたら制止のご命令を」
白久はそう言いながら、俺の肌に舌を這わせ始めた。
それはいつものように情熱的な愛撫で、俺の体はすぐに反応しはじめてしまう。
その愛撫に、変化が現れた。
白久が俺の肌にそっと歯を立てたのだ。
全く痛みは感じられない、けれどもそれはとても刺激的な感触で、俺は思わず甘い悲鳴を上げてしまった。
「ひっ…あっ、あ…くっ」
俺の反応を伺っていた白久が、再び歯を立ててくる。
『これ…前に新郷が言ってた…「甘噛み」?』
うっすらとそんなことを考えるが、白久が送ってくる刺激の前に思考はすぐにトロケてしまう。
俺はいつも以上に激しく白久を求め、白久はそれに応えてくれた。
俺達は激しく繋がりあい、愛を確かめていく。
それは今までになく濃厚で、濃密な時間に感じられた。
「荒木、お体は大丈夫ですか」
行為の後、白久がそっと聞いてきた。
「荒木があまりに可愛らしい声を出すので、こちらも押さえがきかなくなってしまいました
明日も学校があるのに、申し訳ありません」
労るように俺の髪を撫でながら言う白久に
「プレゼント…気に入ってくれた?」
伺うように聞いてみる。
「もちろんです!
荒木からしかいただけない、とても愛らしい最高のプレゼントでした」
白久の返事は照れくさくも、誇らかな気分にさせてくれるものであった。
「なら、良かった」
俺はヘヘッと笑うと、白久の胸に顔を埋める。
規則正しい白久の鼓動が、愛を囁いてくれているようであった。
「クロスケが死んで、1年経っちゃったんだ
もう去年を思い出しても、クロスケはそこにいない
クロスケがいた時間から、俺はどんどん遠ざかってる」
俺の言葉に、白久は息を飲む。
「私がもっと、クロスケ殿と想念を通わせられていたら…」
無念そうな白久に
「でもね、去年を思い出すと白久が居るんだ
俺のために必死に猫を探そうとしてくれた、優しくて大きな犬
クロスケからは遠ざかっても、白久とはどんどん近くなる」
俺は白久の胸に、そっとキスをする。
「クロスケ…カシスの中に居たとき、俺のこと何か言ってた?」
それから未練がましいとは思ったけど、気になっていたことを思い切って聞いてみた。
「カシス君を荒木のお家にお届けしたとき、クロスケ殿は私に
『荒木は寂しがり屋だから、側にいてやってくれ』と」
白久の答えに
『俺のこと、気にしてくれてたんだ』
俺は目頭が熱くなる。
「そして『自分は、お父様の側にいるから』ともおっしゃっていて…」
白久は言いにくそうに、言葉をつないだ。
それを聞いた俺は、思わずため息をついてしまう。
「クロスケは本当に親父に執着してんだから、まったく」
つい不満を口に出してしまうが
「でも、俺には白久がいるからいいんだ
ずっと、側にいてくれるんだろ?」
甘えるように白久の胸に頬ずりして聞いてみる。
「もちろんです
これはクロスケ殿に頼まれたからではなく、私自身の意志ですから
どうかこれからも、ずっと荒木のお側に居させてください」
白久はキッパリと宣言するように答えた。
最高の忠犬からの最高の答えに満足した俺は
「白久、愛してる」
そう言って、白久と唇を合わせた。
「荒木、私も愛しております」
白久も俺を抱きしめて、キスをしてくれた。
俺達はこれから先の未来に向かい、安らかな眠りへと落ちてゆくのであった。
事前に話し合っていたわけではないが、2人の足は自然と店に向かっていたのだ。
「今日は誕生日プレゼントで、俺のおごり」
俺が笑って声をかけると
「ありがとうございます
今日はチーズインハンバーグにいたします」
白久は、少し懐かしそうな顔で微笑んで答えた。
ファミレスでの白久の行動は、すっかり板に付いたものとなっている。
『初めて来た時は、どこかオドオドしてたっけ』
俺は1年前を思い出し、笑ってしまった。
「1年前の私は、飼い主に巡り会えない日々を空しく数えておりました
けれども荒木と出会い、飼っていただいてからは荒木の笑顔を数えております
幸せを数えているのです」
白久は俺を見ながら、嬉しそうにそう言った。
「誕生日、おめでとう
何歳って言えばいいのかな
歳って言うか、出会ってからの年月の方がしっくりくる数え方か」
「1年、ですね
これからも、数字が増えていくと思うと楽しみで仕方ありません
新郷にはよく『俺は飼ってもらってから10年以上経ってる、二桁だ』と自慢されますから」
苦笑する白久に
「俺達だって、10年くらいすぐだよ!
って、10年後の自分って想像付かないけど」
俺は舌を出して見せた。
「そうだ、ひろせに教えてもらって、ケーキを焼いたのです
ここではデザートを食べないで、部屋に来てください」
白久が思い出したようにそう言った。
「自分の誕生日ケーキ、自分で焼いたの?」
俺が聞くと
「誕生日でもありますが、記念日でもあります
荒木に記念日の贈り物をしたくて」
白久は優しく微笑んだ。
「楽しみ!」
白久らしい細やかな気遣いが嬉しくて、俺も笑顔になった。
夕飯を食べ終わり一息付いた俺達は、影森マンションの白久の部屋に帰っていく。
そこはすでに『自分の部屋』と同じ感覚になる場所であった。
「ケーキの準備をしますので、先にシャワーをお使いください」
白久を洗ってあげようと思ってたけど、そう言われた俺は素直にシャワーを浴びた。
『そういえば、夏は俺がシャワー浴びてる間、白久はいつもご飯の支度しててくれたっけ』
そんなことを思い出す。
着替えて部屋に戻ると、テーブルの上には生クリームが添えられたシフォンケーキとコーヒーがのっていた。
ケーキの上には、チョコで肉球が描かれている。
「可愛い!」
俺が笑うと
「荒木はこの模様がお好きなようですので
犬の身であれば、自前のスタンプを押せたのですが
人の身になりたくて化生したのに、犬の身を恋しいと思う日が来るとは面白いものです」
白久は悪戯っぽく笑った。
「肉球描いたチョコペンって、まだ残ってる?」
「少しなら残ってます」
俺は白久からチョコペンを受け取ると、白久のケーキに『お誕生日おめでとう』の文字を書き足した。
『誕』の字がかなり潰れてしまったが、白久はとても喜んでくれた。
ケーキを食べてくつろぐ俺に
「荒木に、プレゼントがあるのです」
白久は引き出しから布に包まれた物を取り出してきた。
「白久の誕生日なんだから、いいのに」
俺は慌ててしまうが
「今日は私たち2人の記念日ですから」
白久は優しく微笑んでいる。
渡された物の布をめくると、固まりの水晶があった。
「こちらは、クリスタルクラスターです
荒木、誕生日に日野様から水晶のブレスをいただいていましたね
クラスターには浄化作用がありますので、あのブレス、使用していない時はこの上で休ませてあげてください
こちらのクラスターも、三峰様が用立ててくださったのです」
白久の説明に、俺は感心してしまう。
「へー、そんなことするんだ
クラスターか、水晶の固まりって何だか神秘的でキレイだね」
嬉しくなって、俺はそれをしげしげと眺めてみた。
「ありがとう、大事にする
部屋に飾って、ブレスのせておくよ」
俺の言葉に、白久は嬉しそうに笑っていた。
「あの、俺も白久にプレゼントがあるんだけど…」
先に素敵な物を貰ってしまったので、俺はそれを渡すのを躊躇ってしまう。
「前のプレゼントと被ってて、ごめん」
モジモジと差し出した紙袋を、白久は大事そうに受け取ってくれた。
袋から出した物を見て白久の顔が輝いた。
それは、黒い大型犬用の首輪であった。
「白久、ハロウィンの時、黒のスーツ着てたでしょ
あれ見て、白久の毛色って黒も似合うな、って
前にあげたのは赤い首輪だったから、今度は黒を用意してみたんだ
普段、使えないものだけど…白久に合いそうだったから…つい」
言い訳じみたことを言う俺を、白久は抱きしめてくれた。
「荒木に首輪をいただけると、飼われているという実感が強くなります
所有されている喜びに満たされるのです」
倒錯的な言葉ではあったが、白久が嬉しそうなのでホッとしてしまった。
「着けてみてもよろしいでしょうか」
そう聞いてくる白久に
「うん、着けて見せて
でも、首輪してるとこは俺以外に見せちゃダメだからね」
俺はそう命令する。
「はい」
白久は神妙な顔で頷いて、首輪を着けて見せてくれた。
思った通り、黒い首輪は白久によく似合っていた。
赤い首輪のような華やかな可愛らしさではなく、ワイルドな格好良さを引き立たせてくれる。
「格好いい」
俺は思わず、白久にキスをした。
「気に入っていただけたのなら、光栄です」
白久は誇らしそうな顔になり、キスを返してくれる。
俺達は抱き合いながら、唇を重ね合った。
徐々に息が荒くなっていく。
「このまま、荒木をプレゼントにいただいてもよろしいでしょうか」
耳元で熱く囁く白久に
「首輪、苦しくない?
なら、俺も、このままして欲しい…」
俺はつい大胆なお願いをしてしまう。
白久は頷いて、俺を抱き上げベッドまで運ぶと服を脱がせていった。
自分も服を脱ぎ、首輪を身につけただけの状態になる。
そんな状態の白久に抱かれていると、本当に大型犬といるような倒錯的な気分になってしまった。
「荒木、誕生日のプレゼントをもう少しねだってしまってもよろしいでしょうか」
上気した顔の白久が上から俺の顔をのぞきこんできた。
「うん、俺に出来ることなら何でも…」
熱い吐息と共に答えると
「いつも新郷に自慢されていたので、私も試してみたかったのです
お嫌でしたら制止のご命令を」
白久はそう言いながら、俺の肌に舌を這わせ始めた。
それはいつものように情熱的な愛撫で、俺の体はすぐに反応しはじめてしまう。
その愛撫に、変化が現れた。
白久が俺の肌にそっと歯を立てたのだ。
全く痛みは感じられない、けれどもそれはとても刺激的な感触で、俺は思わず甘い悲鳴を上げてしまった。
「ひっ…あっ、あ…くっ」
俺の反応を伺っていた白久が、再び歯を立ててくる。
『これ…前に新郷が言ってた…「甘噛み」?』
うっすらとそんなことを考えるが、白久が送ってくる刺激の前に思考はすぐにトロケてしまう。
俺はいつも以上に激しく白久を求め、白久はそれに応えてくれた。
俺達は激しく繋がりあい、愛を確かめていく。
それは今までになく濃厚で、濃密な時間に感じられた。
「荒木、お体は大丈夫ですか」
行為の後、白久がそっと聞いてきた。
「荒木があまりに可愛らしい声を出すので、こちらも押さえがきかなくなってしまいました
明日も学校があるのに、申し訳ありません」
労るように俺の髪を撫でながら言う白久に
「プレゼント…気に入ってくれた?」
伺うように聞いてみる。
「もちろんです!
荒木からしかいただけない、とても愛らしい最高のプレゼントでした」
白久の返事は照れくさくも、誇らかな気分にさせてくれるものであった。
「なら、良かった」
俺はヘヘッと笑うと、白久の胸に顔を埋める。
規則正しい白久の鼓動が、愛を囁いてくれているようであった。
「クロスケが死んで、1年経っちゃったんだ
もう去年を思い出しても、クロスケはそこにいない
クロスケがいた時間から、俺はどんどん遠ざかってる」
俺の言葉に、白久は息を飲む。
「私がもっと、クロスケ殿と想念を通わせられていたら…」
無念そうな白久に
「でもね、去年を思い出すと白久が居るんだ
俺のために必死に猫を探そうとしてくれた、優しくて大きな犬
クロスケからは遠ざかっても、白久とはどんどん近くなる」
俺は白久の胸に、そっとキスをする。
「クロスケ…カシスの中に居たとき、俺のこと何か言ってた?」
それから未練がましいとは思ったけど、気になっていたことを思い切って聞いてみた。
「カシス君を荒木のお家にお届けしたとき、クロスケ殿は私に
『荒木は寂しがり屋だから、側にいてやってくれ』と」
白久の答えに
『俺のこと、気にしてくれてたんだ』
俺は目頭が熱くなる。
「そして『自分は、お父様の側にいるから』ともおっしゃっていて…」
白久は言いにくそうに、言葉をつないだ。
それを聞いた俺は、思わずため息をついてしまう。
「クロスケは本当に親父に執着してんだから、まったく」
つい不満を口に出してしまうが
「でも、俺には白久がいるからいいんだ
ずっと、側にいてくれるんだろ?」
甘えるように白久の胸に頬ずりして聞いてみる。
「もちろんです
これはクロスケ殿に頼まれたからではなく、私自身の意志ですから
どうかこれからも、ずっと荒木のお側に居させてください」
白久はキッパリと宣言するように答えた。
最高の忠犬からの最高の答えに満足した俺は
「白久、愛してる」
そう言って、白久と唇を合わせた。
「荒木、私も愛しております」
白久も俺を抱きしめて、キスをしてくれた。
俺達はこれから先の未来に向かい、安らかな眠りへと落ちてゆくのであった。