しっぽや(No.58~69)
side〈TAKESHI〉
俺に新たな飼い猫が出来た。
その猫は、俺にとって初めての『恋人』でもあるのだ。
愛しい猫の名は『ひろせ』、彼は柔らかな長い髪が美しいノルウェージャンフォレストキャットの化生であった。
朝、ベッドの中の俺はフワフワの毛が頬に触れる感触で意識が浮上する。
その優しい感触を楽しみたくて寝たふりをしていると、その毛は頬を撫でながら首の辺りに移動した。
「ひろせ、くすぐったいよ」
俺は幸せな気持ちに包まれながら、呟いてみる。
するとその毛はギュウギュウと俺の首を押し始めた。
「ちょ、ひろせ?苦し…」
俺がもがくと
「ふあ~ん」
不機嫌な猫の泣き声が返ってくる。
今度こそ、俺の意識はハッキリと覚醒した。
「何だ、銀次か」
俺の首の上には本物の猫、チンチラシルバーの銀次が陣取って不満げな顔で俺を見下ろしていたのだ。
「お前、首には乗るなよ、マジで苦しいんだって」
俺は上体を起こし銀次を抱っこしてやった。
「うー」
しかし銀次は不機嫌な顔で尻尾を大きく左右に振っている。
銀次はひろせのことに気付いているようで、焼き餅を焼いているのか最近やたらと俺にからんでくるのだ。
そんな銀次をなだめようと
「よし朝ご飯にしよう、何が良いかな、シンバ?プチプチ?」
俺はベッドから起き出して、キャットフードの小袋を物色し始めた。
お皿にカリカリを出して銀次が食べ始めたのを見届けた後、俺はスマホを手に取った。
「まだ、6時半じゃん」
春休み中なのにいつもと同じ時間に起こされているため、健康的な生活をしている気がする。
ふと、さっきの自分の呟きがよみがえってきた。
『俺、銀次のことひろせと間違えたのか…
って、何でベッドにひろせがいる設定なんだよ、俺!
ひろせと一緒に寝てるなんて…あー、もう!』
俺は1人で赤くなりながらブンブンと頭を振ってみた。
しかしそれで気分がスッキリすることはなく、ひろせの優しい笑顔が思い出され余計に悶々としてしまう。
『ゲンちゃんがあんなメール寄越すから、変に意識しちゃうじゃないか』
それは、俺の歓迎会を開いてくれるという内容の物であった。
歓迎会なんて何だか照れくさいけど、嬉しくもある。
『今年は桜の開花が早いみたいだな(*^_^*)
学生組が春休み中にちょうど満開になりそうなんで、今回の歓迎会は夜桜見物しながら、と洒落込もうや(^_^)b
風流だね~(´ー`)
当日の夜、雨じゃないことを祈ろうぜ(*^ー゚)
と言うわけで、今回のミッションテーマは「桜」♪
どんな物を桜に見立てるか、はたまた桜自体を用意するかは各々のセンスに任せるぜ☆
タケぽん、ひろせ組は「桜菓子・洋」!
桜満開とは言え夜はまだ冷えるから、温かい飲み物も用意してもらえると嬉しいかな(*´▽`*)
風邪ひかないよう、上着はちゃんと着てこいよ(・∀・)
歓迎会の後、ひろせの部屋にお泊まりするか?
一応、タケぽんの父ちゃんには「遅くなるから俺の家に泊める」って連絡しといたからな( ´艸`)
まあ、俺の家もひろせの家も影森マンションだから、全くの嘘って訳でもないんだが…
健闘を祈る(≧∇≦*)』
メールにはそんなことが書かれていた。
『ひろせの部屋に泊まる…
ってことは、その、あれ、だよな』
ひろせとは、キスは何度もしている。
けれど、それ以上のことはまだしていなかった。
『俺みたいなガキが、ひろせと…そんな、良いのかな
でも初めてで失敗したら、俺、絶対立ち直れない!』
ゲンちゃんからメールを貰ってからの俺は、『ひろせの部屋に泊まる』と言うことを意識しっぱなしでいつにも増して痛い奴になっていた。
ひろせはと言うと
「長瀞に聞いたんですけど、歓迎会って持ち寄りパーティーなんですって
何だか楽しそうですよね
僕達のミッションは「桜菓子・洋」
カズハさん辺りが「和」なのかな
何を用意するか、一緒に考えましょう
タケシと一緒に何かが出来るって、嬉しいな」
そんな感じで盛り上がっていた。
歓迎会の後に俺が泊まる、と言うことについては特に意識しているようにみられなかった。
無邪気なその笑顔を見ていると、ますます自分がイヤらしい人間に思えてくる。
あまり考え込みすぎて俺のイヤらしい妄想がひろせにバレると困るので、彼と居るときは持って行くお菓子のことを集中して考えていた。
「あの、良かったら持って行くお菓子を一緒に作ってもらえませんか
どうせなら、手作りの物を用意したくて」
モジモジと誘うひろせに
「もちろんだよ!ひろせ1人に作らせるなんて悪いもん
俺でよければこき使ってよ」
俺はもっともらしく答えるのであった。
俺に新たな飼い猫が出来た。
その猫は、俺にとって初めての『恋人』でもあるのだ。
愛しい猫の名は『ひろせ』、彼は柔らかな長い髪が美しいノルウェージャンフォレストキャットの化生であった。
朝、ベッドの中の俺はフワフワの毛が頬に触れる感触で意識が浮上する。
その優しい感触を楽しみたくて寝たふりをしていると、その毛は頬を撫でながら首の辺りに移動した。
「ひろせ、くすぐったいよ」
俺は幸せな気持ちに包まれながら、呟いてみる。
するとその毛はギュウギュウと俺の首を押し始めた。
「ちょ、ひろせ?苦し…」
俺がもがくと
「ふあ~ん」
不機嫌な猫の泣き声が返ってくる。
今度こそ、俺の意識はハッキリと覚醒した。
「何だ、銀次か」
俺の首の上には本物の猫、チンチラシルバーの銀次が陣取って不満げな顔で俺を見下ろしていたのだ。
「お前、首には乗るなよ、マジで苦しいんだって」
俺は上体を起こし銀次を抱っこしてやった。
「うー」
しかし銀次は不機嫌な顔で尻尾を大きく左右に振っている。
銀次はひろせのことに気付いているようで、焼き餅を焼いているのか最近やたらと俺にからんでくるのだ。
そんな銀次をなだめようと
「よし朝ご飯にしよう、何が良いかな、シンバ?プチプチ?」
俺はベッドから起き出して、キャットフードの小袋を物色し始めた。
お皿にカリカリを出して銀次が食べ始めたのを見届けた後、俺はスマホを手に取った。
「まだ、6時半じゃん」
春休み中なのにいつもと同じ時間に起こされているため、健康的な生活をしている気がする。
ふと、さっきの自分の呟きがよみがえってきた。
『俺、銀次のことひろせと間違えたのか…
って、何でベッドにひろせがいる設定なんだよ、俺!
ひろせと一緒に寝てるなんて…あー、もう!』
俺は1人で赤くなりながらブンブンと頭を振ってみた。
しかしそれで気分がスッキリすることはなく、ひろせの優しい笑顔が思い出され余計に悶々としてしまう。
『ゲンちゃんがあんなメール寄越すから、変に意識しちゃうじゃないか』
それは、俺の歓迎会を開いてくれるという内容の物であった。
歓迎会なんて何だか照れくさいけど、嬉しくもある。
『今年は桜の開花が早いみたいだな(*^_^*)
学生組が春休み中にちょうど満開になりそうなんで、今回の歓迎会は夜桜見物しながら、と洒落込もうや(^_^)b
風流だね~(´ー`)
当日の夜、雨じゃないことを祈ろうぜ(*^ー゚)
と言うわけで、今回のミッションテーマは「桜」♪
どんな物を桜に見立てるか、はたまた桜自体を用意するかは各々のセンスに任せるぜ☆
タケぽん、ひろせ組は「桜菓子・洋」!
桜満開とは言え夜はまだ冷えるから、温かい飲み物も用意してもらえると嬉しいかな(*´▽`*)
風邪ひかないよう、上着はちゃんと着てこいよ(・∀・)
歓迎会の後、ひろせの部屋にお泊まりするか?
一応、タケぽんの父ちゃんには「遅くなるから俺の家に泊める」って連絡しといたからな( ´艸`)
まあ、俺の家もひろせの家も影森マンションだから、全くの嘘って訳でもないんだが…
健闘を祈る(≧∇≦*)』
メールにはそんなことが書かれていた。
『ひろせの部屋に泊まる…
ってことは、その、あれ、だよな』
ひろせとは、キスは何度もしている。
けれど、それ以上のことはまだしていなかった。
『俺みたいなガキが、ひろせと…そんな、良いのかな
でも初めてで失敗したら、俺、絶対立ち直れない!』
ゲンちゃんからメールを貰ってからの俺は、『ひろせの部屋に泊まる』と言うことを意識しっぱなしでいつにも増して痛い奴になっていた。
ひろせはと言うと
「長瀞に聞いたんですけど、歓迎会って持ち寄りパーティーなんですって
何だか楽しそうですよね
僕達のミッションは「桜菓子・洋」
カズハさん辺りが「和」なのかな
何を用意するか、一緒に考えましょう
タケシと一緒に何かが出来るって、嬉しいな」
そんな感じで盛り上がっていた。
歓迎会の後に俺が泊まる、と言うことについては特に意識しているようにみられなかった。
無邪気なその笑顔を見ていると、ますます自分がイヤらしい人間に思えてくる。
あまり考え込みすぎて俺のイヤらしい妄想がひろせにバレると困るので、彼と居るときは持って行くお菓子のことを集中して考えていた。
「あの、良かったら持って行くお菓子を一緒に作ってもらえませんか
どうせなら、手作りの物を用意したくて」
モジモジと誘うひろせに
「もちろんだよ!ひろせ1人に作らせるなんて悪いもん
俺でよければこき使ってよ」
俺はもっともらしく答えるのであった。