しっぽや(No.1~10)
ゴホゴホと咽せながら波久礼が立ち上がり
「三峰様、申し訳ございません」
深々と頭を下げる。
「わかればよろしい
それよりも波久礼、荒木がお主にこれを買ってくださったのだぞ
よくよくお礼を申し上げるように」
ミイちゃんはそう言うと、トリカラが入った袋を波久礼に差し出した。
『しまった、化生なら玉葱平気だから、メンチにしてあげれば良かった!
ってゆーか、犬だと思ってたから、トリカラ3個プレゼントって…
ショボ過ぎる』
俺は、とんでもなく恥ずかしくなってくる。
波久礼は袋の中身を確かめると瞳を輝かせ
「これを私に?
何とお優しい方なのでしょう」
そう言って、ハッとしたように白久を見た。
白久は
「かまいませんよ、私は首輪を新調していただきましたから」
少し、勝ち誇ったように答える。
「貴方様に対する暴言、平にご容赦ください」
波久礼は俺に深々と頭を下げた。
土下座しそうな勢いだったので
「いや、いいって、そんなトリカラくらいで
今度はちゃんとメンチ買ってあげるから」
俺は慌ててそう言った。
「白久、お前は良い飼い主に巡り会えたのだな」
波久礼は羨ましそうな視線を白久に向ける。
「はい!」
白久は誇らかに頷いた。
『何か、化生って餌付け簡単なんじゃ…』
俺は、少し疲れた思いでそんな事を考えた。
「荒木は、見事私の依頼を達成しました
黒谷、成功報酬は荒木のバイト料に加算しなさい」
ミイちゃんがそう命令すると
「かしこまりました、三峰様」
黒谷がうやうやしく頭を下げる。
「えっ?いや、俺、何もしてないし
何か殆ど働いてないのに、今月けっこーバイト料貰ったから
いいですよ、ミ…っと、三峰様」
黒谷より偉いと言うことに思い至り、俺は焦ってそう言った。
「荒木、どうか『ミイちゃん』とお呼びください
人の友として存在出来る事もまた、我ら化生の誉れなのです」
ミイちゃんはニッコリと笑った。
それは、あどけない少女の笑顔であったので
「うん!」
俺は素直に頷いた。
「白久の飼い主がどのような方なのか、確認しようと来てみたのですが
思った以上に良い方で、安堵しました
後は、黒谷と波久礼に良い方が現れてくれると安心なのだけれど」
ミイちゃんが溜め息をつきながら2人を見る。
黒谷は苦笑し、波久礼は
「三峰様をお守りするのが、武州(ぶしゅう)を名乗る私の今の使命です!」
生真面目にそう答えた。
「そんな事の為に化生したのではないでしょうに…」
ミイちゃんは、呆れた顔になる。
でもそれは、出来の悪い子供を見守る、慈愛に満ちた母親の顔に思えた。
「さて、私達はそろそろお暇いたします
白久、お昼ご飯をまだ食べてないのでしょう?
お騒がせして、ごめんなさいね」
ミイちゃんが申し訳なさそうに白久に謝った。
「荒木に教えていただいたので、早速帰りに首輪と、りーどとやらを買わないと
波久礼には何色が似合うかのう」
「私は以前、外出の際には黒い首輪をしておりました
あのお方は、とても似合うと誉めてくださって…
出来れば、黒が良いのですが」
楽しそうにそんな会話をしだしたミイちゃんと波久礼に
「人に首輪付けて、リードで繋いで表歩いちゃ駄目!!
変なプレイ中だと思われて、波久礼さんが逮捕されちゃうよ!!
2人でスマホでも持って、連絡取り合えば迷子にならないから!」
俺は思わずそう叫んでいた。
ミイちゃんと波久礼は顔を見合わせて
「なる程、あれは移動中の通信機器でしたか!」
「移動中は大抵気配で探しあっていたから、そのような用途に思い至りませんでした
電話とは、家からかけるものだとばかり思っていましたので」
感心したように俺を見つめてくる。
『もしかして、スマホが固定電話感覚だったの?
化生の認識能力は、激しくズレてる…』
俺はまた疲れた思いにおそわれるのであった。
「三峰様、申し訳ございません」
深々と頭を下げる。
「わかればよろしい
それよりも波久礼、荒木がお主にこれを買ってくださったのだぞ
よくよくお礼を申し上げるように」
ミイちゃんはそう言うと、トリカラが入った袋を波久礼に差し出した。
『しまった、化生なら玉葱平気だから、メンチにしてあげれば良かった!
ってゆーか、犬だと思ってたから、トリカラ3個プレゼントって…
ショボ過ぎる』
俺は、とんでもなく恥ずかしくなってくる。
波久礼は袋の中身を確かめると瞳を輝かせ
「これを私に?
何とお優しい方なのでしょう」
そう言って、ハッとしたように白久を見た。
白久は
「かまいませんよ、私は首輪を新調していただきましたから」
少し、勝ち誇ったように答える。
「貴方様に対する暴言、平にご容赦ください」
波久礼は俺に深々と頭を下げた。
土下座しそうな勢いだったので
「いや、いいって、そんなトリカラくらいで
今度はちゃんとメンチ買ってあげるから」
俺は慌ててそう言った。
「白久、お前は良い飼い主に巡り会えたのだな」
波久礼は羨ましそうな視線を白久に向ける。
「はい!」
白久は誇らかに頷いた。
『何か、化生って餌付け簡単なんじゃ…』
俺は、少し疲れた思いでそんな事を考えた。
「荒木は、見事私の依頼を達成しました
黒谷、成功報酬は荒木のバイト料に加算しなさい」
ミイちゃんがそう命令すると
「かしこまりました、三峰様」
黒谷がうやうやしく頭を下げる。
「えっ?いや、俺、何もしてないし
何か殆ど働いてないのに、今月けっこーバイト料貰ったから
いいですよ、ミ…っと、三峰様」
黒谷より偉いと言うことに思い至り、俺は焦ってそう言った。
「荒木、どうか『ミイちゃん』とお呼びください
人の友として存在出来る事もまた、我ら化生の誉れなのです」
ミイちゃんはニッコリと笑った。
それは、あどけない少女の笑顔であったので
「うん!」
俺は素直に頷いた。
「白久の飼い主がどのような方なのか、確認しようと来てみたのですが
思った以上に良い方で、安堵しました
後は、黒谷と波久礼に良い方が現れてくれると安心なのだけれど」
ミイちゃんが溜め息をつきながら2人を見る。
黒谷は苦笑し、波久礼は
「三峰様をお守りするのが、武州(ぶしゅう)を名乗る私の今の使命です!」
生真面目にそう答えた。
「そんな事の為に化生したのではないでしょうに…」
ミイちゃんは、呆れた顔になる。
でもそれは、出来の悪い子供を見守る、慈愛に満ちた母親の顔に思えた。
「さて、私達はそろそろお暇いたします
白久、お昼ご飯をまだ食べてないのでしょう?
お騒がせして、ごめんなさいね」
ミイちゃんが申し訳なさそうに白久に謝った。
「荒木に教えていただいたので、早速帰りに首輪と、りーどとやらを買わないと
波久礼には何色が似合うかのう」
「私は以前、外出の際には黒い首輪をしておりました
あのお方は、とても似合うと誉めてくださって…
出来れば、黒が良いのですが」
楽しそうにそんな会話をしだしたミイちゃんと波久礼に
「人に首輪付けて、リードで繋いで表歩いちゃ駄目!!
変なプレイ中だと思われて、波久礼さんが逮捕されちゃうよ!!
2人でスマホでも持って、連絡取り合えば迷子にならないから!」
俺は思わずそう叫んでいた。
ミイちゃんと波久礼は顔を見合わせて
「なる程、あれは移動中の通信機器でしたか!」
「移動中は大抵気配で探しあっていたから、そのような用途に思い至りませんでした
電話とは、家からかけるものだとばかり思っていましたので」
感心したように俺を見つめてくる。
『もしかして、スマホが固定電話感覚だったの?
化生の認識能力は、激しくズレてる…』
俺はまた疲れた思いにおそわれるのであった。