しっぽや(No.44~57)
「荒木…」
日野が肘でそっと俺をつついてきた。
「あ、うん」
俺も頷いてテーブルの下に置いておいた包みを取り出した。
「あの、ゲンさん
俺と荒木から、ゲンさんへのクリスマスプレゼントがあるんです」
「ゲンさんにはいつもお世話になってるからさ
大したもんじゃないけど受け取ってください」
俺たちが差し出した包みを、ゲンさんはポカンとした顔で見つめている。
しかしすぐに手を振って
「いや、いいって、それは自分の飼い犬に用意してやりな」
慌てたようにそう言った。
「飼い犬用はちゃんと用意したから大丈夫
これは、ゲンさん用だから」
「日野と2人で選んだんだ」
俺は包みをゲンさんの手に押しつけた。
「ありがと、かえって気を使わせちまったみたいで、悪いな」
ゲンさんは申し訳なさそうな顔になったが、プレゼントを受け取ってくれた。
「開けてみて、似合うと思うけど」
日野の言葉で、ゲンさんが包みを開く。
中には黒いニットの帽子が入っている。
「頭、寒いんじゃないかなーって思って
派手な柄だと本当に芸人みたいになるから、シンプルなのにしたんだよ」
「1本だけ白いラインが入ってるのは、長瀞さんをイメージしてみた
背広には合わないから、部屋で使ってね
風邪、ひかないように」
俺たちの言葉で、ゲンさんの顔が歪む。
「何だよ、お前ら、格好いいなー」
目尻に滲んだ涙を乱暴に拭うと、ゲンさんは帽子を被ってみせた。
「似合うか?」
照れた顔のゲンさんに
「「似合う!」」
俺と日野は笑顔を向ける。
「ありがとうございます」
長瀞さんが優しい笑顔を俺たちに向けてくれた。
あらかた料理を食べ終わった頃
「よし!そろそろケーキに登場してもらうか」
ゲンさんがそう言って立ち上がる。
「あの、よかったらこれ淹れませんか?
クリスマスティーなんです
ケーキにあうかと思って、持ってきてみました」
カズハさんが小さな包みを差し出した。
「この店のは、葡萄の香りが爽やかなやつなんだぜ」
空が得意げな顔で解説する。
事前にカズハさんと飲んでいるのだろう。
「クリスマスティー?
そういえばこの時期、お茶屋さんで見かけますね
よくわからなくて今まで買ってみたことはありませんでした」
長瀞さんに興味深げに手元をのぞき込まれ
「お店によって、ブレンドされている物が違うんですよ
つい、色んなお店の物を買ってしまって
季節限定に弱いんですよね
今はニューイヤーティーをチェックしています」
カズハさんが照れたように頭を掻いた。
その後、カズハさんと長瀞さんがキッチンに紅茶を淹れに行く。
入れ替わりで、ゲンさんがクリスマスケーキを持ってあらわれた。
「じゃーん、ケーキ入刀!」
けっこう大きなサイズのホールケーキが2個、テーブルの真ん中に置かれた。
料理の皿は片付けられているので、お茶会みたいな雰囲気になっている。
「サンタのとこは、荒木少年と日野少年に進呈しよう
羽生にはチョコプレートな
もう1個のチョコプレートは空にするか?」
ゲンさんが手際良くケーキを切り分けていく。
「欲しい!カズハと半分こするんだ」
瞳を輝かせる空に、ゲンさんがチョコプレート付きケーキの皿を手渡した。
「俺も、サトシと半分こする」
羽生も受け取った皿を嬉しそうに見つめていた。
俺もサンタ付きケーキを手渡される。
『これ、白久と分けたら頭と胴で半分こだよな…』
ちょっとグロい気もするけど俺も白久とクリスマスを分け合いたかった。
砂糖菓子のサンタの首をモいで白久のケーキの上にのせる。
「半分こ」
俺がそう言って笑うと、白久は嬉しそうに顔を輝かせた。
俺と白久のケーキの上は惨殺死体が転がっているようになってしまったが、お揃いの物を食べられる事が嬉しかった。
見ると、日野も黒谷のケーキにサンタの頭を置いている。
凄惨な現場が広がっていることが可笑しくて、俺は笑ってしまう。
日野も俺達のケーキを見て、吹き出していた。
「クリスマス・サスペンス劇場だな」
ゲンさんの言葉に、中川先生も吹き出した。
カズハさんの淹れてくれた紅茶は空の言う通りほんのり葡萄の香りがして、甘いケーキによくあっていた。
「美味しい、口の中がさっぱりしますね
こんなの初めて飲んだ」
俺が言うと
「気に入ってもらえたなら良かったです
別のお店のも持ってくればよかったかな
いつも買いすぎて、年が明けてもクリスマスティー飲んでるから」
カズハさんは照れた顔で微笑んでいた。
「喜びは倍になる
分かちあえる人達がいるってのは、良いもんだ」
ゲンさんがしみじみとそんなことを言っている。
「ですね」
俺もつくづく頷いてしまう。
「新年会は、鍋しような」
「ゲンさん、まさか闇鍋?」
「そうそう、余ったおせちを適当にぶっ込んで
って、ちゃんとした鍋にするっつーの」
そんな感じで楽しい雰囲気のまま、クリスマスパーティーは過ぎて行くのであった。
「ちょっと気が早いけど『良いお年を』」
そんな挨拶で締めくくり、楽しかったパーティーは12時近くに解散となった。
俺と白久、日野と黒谷は最上階に移動する。
「そだ、荒木にもクリスマスプレゼント」
部屋の前での別れ際、日野がそう言ってビニール袋を手渡してきた。
「え?いいよ」
日野に対して何のプレゼントも用意してなかった俺は、慌ててしまう。
「いや、たいしたもんじゃないって
パン買いに行ったとき、ついでに買ったんだ
明日の朝食にでもしてよ
この時期、あちこちで見かけるからつい買っちゃうんだよな、シュトーレン
カズハさんがクリスマスティー買っちゃうの、わかるなー」
日野はエヘヘッと笑う。
「シュトーレン?」
耳慣れない言葉に、俺は首を傾げた。
「ドイツのクリスマスケーキみたいなもんかな
フルーツやナッツたっぷりの堅いパウンドケーキって感じ
日持ちさせるため、けっこう酒がきついのもあるけどさ
ここのパン屋のはまろやかなんだ」
日野はニコヤカに袋を押しつけてくる。
「ありがと
俺も、今度何かおごるよ」
袋を受け取り俺がそう言うと
「購買の焼きそばパンとハムカツサンドな」
日野は二ヤッと笑って答えた。
「だから、購買のは難易度高過ぎだって」
俺がムクレて見せると、日野は楽しそうに笑っていた。
白久の部屋に帰ると、俺は置いておいた鞄から包みを取り出して白久に手渡した。
「メリークリスマス、これ、プレゼント」
白久は驚いた顔になるが、すぐに
「ありがとうございます」
そう言って俺を抱きしめてくれた。
「クリスマス、今まで漠然としたお祭りとしか感じていませんでしたが
今年のクリスマスは、特別なものになりました」
白久の声は微かに震えている。
「今年だけじゃない、これからずっと、俺たちのクリスマスは特別だよ
クリスマス以外だって、白久といる時間は特別なんだ
嬉しくてドキドキして、楽しい想いをプレゼントしてもらえるから」
俺は白久の胸に頬ずりして甘えてみせた。
「私も、荒木にプレゼントを用意してみたのですが
お気に召しますでしょうか
人にプレゼントを選ぶといっても、勝手が分からなくて」
白久は引き出しから包みを取り出した。
「白久が俺のために選んでくれたの?」
俺はそれだけで嬉しくなってしまう。
「開けて良い?」
高揚する気分のままそう聞くと
「私も、開けてよろしいでしょうか?」
白久も頬を赤らめて聞いてくる。
「うん、一緒に開けよう!」
俺たちはワクワクしながら包みを開けていった。
「「あ」」
思わず、同時に声を上げてしまう。
中に入っていた物はデザインや材質は全く違うけど同じ物、『手袋』だった。
「一緒にいるときは手を繋げますが、一人の時は寒いのではないかと選んでみたのです」
「俺も!俺もそう思ってた
それに白久は外で捜索するから、寒そうだなって
プレゼント、お揃いだったね」
俺たちは顔を見合わせて笑顔になる。
「今は、一緒にいるので手を繋げますね」
白久が俺の手をそっと握った。
温かな紅茶を飲んできた後なので手は冷たくなかったが、触れた白久の手の温もりが心地よい。
俺は繋いだ白久の手を引き寄せて、その甲にキスをした。
「白久の手、温かいね」
そう言いながら、唇を移動させる。
「荒木の手も温かいです」
白久が顔を寄せてきた。
俺もそれに応え白久を見つめる。
俺達はそのまま唇を重ね合った。
「唇はもっと温かいですね」
囁く白久の言葉に被せるように
「体は、もっともっと温かいよ
…確かめてみて」
俺はそんな大胆なことを言っていた。
「はい」
白久は上気した顔で頷くと、俺を抱き上げベッドまで運んでくれた。
衣服を脱ぎ捨て、俺達は素肌を重ね合う。
直に触れるお互いの肌は熱いくらいであった。
「荒木…」
「白久…」
名前を呼び合う吐息も熱い。
体の中心も、とても熱くなっていた。
俺の肌を移動する白久の唇、優しく刺激してくる白久の手、白久の温もりの全てが愛おしい。
体だけではなく心も熱くなっていた俺達は、何度も繋がり合った。
お互いの存在を確認し、何度も熱い想いを解放しあい、やがて穏やかな温もりに満たされる。
「荒木、私という存在を受け入れてくださって、ありがとうございます」
白久が想いを込めて伝えた言葉に
「白久、俺を選んでくれてありがとう」
抱きしめられた彼の胸の中で、俺もそう答えた。
「メリークリスマス」
眠りの波に捕らわれる直前、俺は白久に呟いた。
「メリークリスマス」
白久から優しい返事が返ってくる。
これからも、心も体もいつだって白久と一緒だと感じながら、俺は意識を温かな闇に手放していった。
日野が肘でそっと俺をつついてきた。
「あ、うん」
俺も頷いてテーブルの下に置いておいた包みを取り出した。
「あの、ゲンさん
俺と荒木から、ゲンさんへのクリスマスプレゼントがあるんです」
「ゲンさんにはいつもお世話になってるからさ
大したもんじゃないけど受け取ってください」
俺たちが差し出した包みを、ゲンさんはポカンとした顔で見つめている。
しかしすぐに手を振って
「いや、いいって、それは自分の飼い犬に用意してやりな」
慌てたようにそう言った。
「飼い犬用はちゃんと用意したから大丈夫
これは、ゲンさん用だから」
「日野と2人で選んだんだ」
俺は包みをゲンさんの手に押しつけた。
「ありがと、かえって気を使わせちまったみたいで、悪いな」
ゲンさんは申し訳なさそうな顔になったが、プレゼントを受け取ってくれた。
「開けてみて、似合うと思うけど」
日野の言葉で、ゲンさんが包みを開く。
中には黒いニットの帽子が入っている。
「頭、寒いんじゃないかなーって思って
派手な柄だと本当に芸人みたいになるから、シンプルなのにしたんだよ」
「1本だけ白いラインが入ってるのは、長瀞さんをイメージしてみた
背広には合わないから、部屋で使ってね
風邪、ひかないように」
俺たちの言葉で、ゲンさんの顔が歪む。
「何だよ、お前ら、格好いいなー」
目尻に滲んだ涙を乱暴に拭うと、ゲンさんは帽子を被ってみせた。
「似合うか?」
照れた顔のゲンさんに
「「似合う!」」
俺と日野は笑顔を向ける。
「ありがとうございます」
長瀞さんが優しい笑顔を俺たちに向けてくれた。
あらかた料理を食べ終わった頃
「よし!そろそろケーキに登場してもらうか」
ゲンさんがそう言って立ち上がる。
「あの、よかったらこれ淹れませんか?
クリスマスティーなんです
ケーキにあうかと思って、持ってきてみました」
カズハさんが小さな包みを差し出した。
「この店のは、葡萄の香りが爽やかなやつなんだぜ」
空が得意げな顔で解説する。
事前にカズハさんと飲んでいるのだろう。
「クリスマスティー?
そういえばこの時期、お茶屋さんで見かけますね
よくわからなくて今まで買ってみたことはありませんでした」
長瀞さんに興味深げに手元をのぞき込まれ
「お店によって、ブレンドされている物が違うんですよ
つい、色んなお店の物を買ってしまって
季節限定に弱いんですよね
今はニューイヤーティーをチェックしています」
カズハさんが照れたように頭を掻いた。
その後、カズハさんと長瀞さんがキッチンに紅茶を淹れに行く。
入れ替わりで、ゲンさんがクリスマスケーキを持ってあらわれた。
「じゃーん、ケーキ入刀!」
けっこう大きなサイズのホールケーキが2個、テーブルの真ん中に置かれた。
料理の皿は片付けられているので、お茶会みたいな雰囲気になっている。
「サンタのとこは、荒木少年と日野少年に進呈しよう
羽生にはチョコプレートな
もう1個のチョコプレートは空にするか?」
ゲンさんが手際良くケーキを切り分けていく。
「欲しい!カズハと半分こするんだ」
瞳を輝かせる空に、ゲンさんがチョコプレート付きケーキの皿を手渡した。
「俺も、サトシと半分こする」
羽生も受け取った皿を嬉しそうに見つめていた。
俺もサンタ付きケーキを手渡される。
『これ、白久と分けたら頭と胴で半分こだよな…』
ちょっとグロい気もするけど俺も白久とクリスマスを分け合いたかった。
砂糖菓子のサンタの首をモいで白久のケーキの上にのせる。
「半分こ」
俺がそう言って笑うと、白久は嬉しそうに顔を輝かせた。
俺と白久のケーキの上は惨殺死体が転がっているようになってしまったが、お揃いの物を食べられる事が嬉しかった。
見ると、日野も黒谷のケーキにサンタの頭を置いている。
凄惨な現場が広がっていることが可笑しくて、俺は笑ってしまう。
日野も俺達のケーキを見て、吹き出していた。
「クリスマス・サスペンス劇場だな」
ゲンさんの言葉に、中川先生も吹き出した。
カズハさんの淹れてくれた紅茶は空の言う通りほんのり葡萄の香りがして、甘いケーキによくあっていた。
「美味しい、口の中がさっぱりしますね
こんなの初めて飲んだ」
俺が言うと
「気に入ってもらえたなら良かったです
別のお店のも持ってくればよかったかな
いつも買いすぎて、年が明けてもクリスマスティー飲んでるから」
カズハさんは照れた顔で微笑んでいた。
「喜びは倍になる
分かちあえる人達がいるってのは、良いもんだ」
ゲンさんがしみじみとそんなことを言っている。
「ですね」
俺もつくづく頷いてしまう。
「新年会は、鍋しような」
「ゲンさん、まさか闇鍋?」
「そうそう、余ったおせちを適当にぶっ込んで
って、ちゃんとした鍋にするっつーの」
そんな感じで楽しい雰囲気のまま、クリスマスパーティーは過ぎて行くのであった。
「ちょっと気が早いけど『良いお年を』」
そんな挨拶で締めくくり、楽しかったパーティーは12時近くに解散となった。
俺と白久、日野と黒谷は最上階に移動する。
「そだ、荒木にもクリスマスプレゼント」
部屋の前での別れ際、日野がそう言ってビニール袋を手渡してきた。
「え?いいよ」
日野に対して何のプレゼントも用意してなかった俺は、慌ててしまう。
「いや、たいしたもんじゃないって
パン買いに行ったとき、ついでに買ったんだ
明日の朝食にでもしてよ
この時期、あちこちで見かけるからつい買っちゃうんだよな、シュトーレン
カズハさんがクリスマスティー買っちゃうの、わかるなー」
日野はエヘヘッと笑う。
「シュトーレン?」
耳慣れない言葉に、俺は首を傾げた。
「ドイツのクリスマスケーキみたいなもんかな
フルーツやナッツたっぷりの堅いパウンドケーキって感じ
日持ちさせるため、けっこう酒がきついのもあるけどさ
ここのパン屋のはまろやかなんだ」
日野はニコヤカに袋を押しつけてくる。
「ありがと
俺も、今度何かおごるよ」
袋を受け取り俺がそう言うと
「購買の焼きそばパンとハムカツサンドな」
日野は二ヤッと笑って答えた。
「だから、購買のは難易度高過ぎだって」
俺がムクレて見せると、日野は楽しそうに笑っていた。
白久の部屋に帰ると、俺は置いておいた鞄から包みを取り出して白久に手渡した。
「メリークリスマス、これ、プレゼント」
白久は驚いた顔になるが、すぐに
「ありがとうございます」
そう言って俺を抱きしめてくれた。
「クリスマス、今まで漠然としたお祭りとしか感じていませんでしたが
今年のクリスマスは、特別なものになりました」
白久の声は微かに震えている。
「今年だけじゃない、これからずっと、俺たちのクリスマスは特別だよ
クリスマス以外だって、白久といる時間は特別なんだ
嬉しくてドキドキして、楽しい想いをプレゼントしてもらえるから」
俺は白久の胸に頬ずりして甘えてみせた。
「私も、荒木にプレゼントを用意してみたのですが
お気に召しますでしょうか
人にプレゼントを選ぶといっても、勝手が分からなくて」
白久は引き出しから包みを取り出した。
「白久が俺のために選んでくれたの?」
俺はそれだけで嬉しくなってしまう。
「開けて良い?」
高揚する気分のままそう聞くと
「私も、開けてよろしいでしょうか?」
白久も頬を赤らめて聞いてくる。
「うん、一緒に開けよう!」
俺たちはワクワクしながら包みを開けていった。
「「あ」」
思わず、同時に声を上げてしまう。
中に入っていた物はデザインや材質は全く違うけど同じ物、『手袋』だった。
「一緒にいるときは手を繋げますが、一人の時は寒いのではないかと選んでみたのです」
「俺も!俺もそう思ってた
それに白久は外で捜索するから、寒そうだなって
プレゼント、お揃いだったね」
俺たちは顔を見合わせて笑顔になる。
「今は、一緒にいるので手を繋げますね」
白久が俺の手をそっと握った。
温かな紅茶を飲んできた後なので手は冷たくなかったが、触れた白久の手の温もりが心地よい。
俺は繋いだ白久の手を引き寄せて、その甲にキスをした。
「白久の手、温かいね」
そう言いながら、唇を移動させる。
「荒木の手も温かいです」
白久が顔を寄せてきた。
俺もそれに応え白久を見つめる。
俺達はそのまま唇を重ね合った。
「唇はもっと温かいですね」
囁く白久の言葉に被せるように
「体は、もっともっと温かいよ
…確かめてみて」
俺はそんな大胆なことを言っていた。
「はい」
白久は上気した顔で頷くと、俺を抱き上げベッドまで運んでくれた。
衣服を脱ぎ捨て、俺達は素肌を重ね合う。
直に触れるお互いの肌は熱いくらいであった。
「荒木…」
「白久…」
名前を呼び合う吐息も熱い。
体の中心も、とても熱くなっていた。
俺の肌を移動する白久の唇、優しく刺激してくる白久の手、白久の温もりの全てが愛おしい。
体だけではなく心も熱くなっていた俺達は、何度も繋がり合った。
お互いの存在を確認し、何度も熱い想いを解放しあい、やがて穏やかな温もりに満たされる。
「荒木、私という存在を受け入れてくださって、ありがとうございます」
白久が想いを込めて伝えた言葉に
「白久、俺を選んでくれてありがとう」
抱きしめられた彼の胸の中で、俺もそう答えた。
「メリークリスマス」
眠りの波に捕らわれる直前、俺は白久に呟いた。
「メリークリスマス」
白久から優しい返事が返ってくる。
これからも、心も体もいつだって白久と一緒だと感じながら、俺は意識を温かな闇に手放していった。