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しっぽや(No.44~57)

ジュースが入ったコップを持つと
「ハッピーハロウィン!」
皆で乾杯する。
「とりあえず、ピザ注文しようぜ
 皆、何が食べたいか決まってるか?」
ゲンさんの問いかけに
「俺、チキンの入ってるのが良い」
「僕は、シーフードが良いです」
「サイドメニューも良いの?この、フリッターって食べてみたい」
「あ、なら、ナゲットも!」
皆が次々と答えていく。
「よし、んじゃ、これとこれをハーフ&ハーフで頼んで
 照り焼きソースのハーフ&ハーフはこれでいいか
 クリームソースはこれにして、と
 他にも食うものあるし、ピザは4枚で良いかな
 後は、サイドメニューっと」
ゲンさんは皆の希望をてきぱきとまとめ、注文してくれた。

ピザが無くてもテーブルの上はお菓子やサラダで埋まっている。
大皿に移されたカボチャの煮物を口にした長瀞さんが
「このそぼろあん、大変美味しく出来ていますね
 出汁は何を使っているのでしょうか?
 お肉は鳥ですか?」
日野に色々聞いていた。
「俺じゃよくわかんないよ、今度、婆ちゃんに聞いとく」
日野は困った顔をして笑っていた。

俺は持ってきたお菓子を開けていく。
「お、今日はオーソドックスにポテチとポッキーか」
話しかけてくるゲンさんに
「これだと、つまみにならなかった?」
俺はそう聞いてみる。
ハロウィンパーティーなので、お菓子のことしか頭になかったのだ。
「いやいや十分だ、他にも色々あるし
 白久用、今回はアラレじゃなくおかきか、渋いな~」
ニヤニヤ笑うゲンさんに
「いえ私用と言うわけではないので、皆様も召し上がってください」
白久が慌てて答えていた。

カズハさんも、持参したお菓子の袋を色々開けている。
「ハロウィンにカボチャ味は鉄板だけど被るかな、と思って
 カボチャチップにしてみました
 他にも色々野菜チップを用意してみたんですがどうでしょう
 砕けばカボチャサラダのトッピングにもなりますよ
 このインゲンチップ、そぼろあんにトッピングすると色合いも良さそうだし」
そんなカズハさんに向かい
「ヘルシーなお心遣い、傷み入ります」
長瀞さんが深々と頭を下げていた。

「これね、小石に見えるけど、チョコレートなんだよ
 後ね、このクッキー、猫の顔の形になってるの」
羽生が、持ってきたお菓子を広げている。
「本当だ、甘い!」
チョコを口にした空が驚いていた。
「猫型のお菓子ってよくあるけど、ハスキー型って無いんだよなー
 犬だとテリア型ばっか」
不満そうな空に
「和犬も無いよ」
諭すように黒谷が言っていた。

「ピザ来る前に、菓子で腹一杯になりそう」
日野がポッキーを摘みながら笑う。
「これくらい、お前にとっちゃ朝飯前だろ?」
俺はニヤリと笑って見せた。
「カボチャの煮物、美味しいよ
 お祖母さん、ほんと、料理上手だよな」
「婆ちゃんに言っとく
 今度遊びに来たとき、腕ふるってくれるよ」
そんな会話を交わす俺達の隣では、大人組の酒盛りが始まっていた。

「悪いな、こんな高い酒」
「いや、貰い物だし
 1人で開けるのも寂しいな、と思ってたから、丁度良かった」
ワイワイと話している皆の顔は、とても楽しそうだ。

「荒木、このオニオンチップをカボチャサラダにかけると、美味しいですよ
 野菜チップとは、このような食べ方もあるんですね」
白久が嬉しそうに話しかけてくる。
「本当?よし、俺もやってみよう」
日野じゃないけど、白久と居ても普通に楽しめる人達との集まりは、確かに心浮き立つ場であった。
ゲンさんが皆で集まりたがる気持ちがよくわかった。

そうこうしているうちにピザが届く。
「やっぱピザには、炭酸だよな」
そう主張する日野がコーラを開けたので、俺も分けてもらう。
「黒谷は?カルピス?ウーロン茶?」
日野に聞かれ
「カルピスをお願いします」
黒谷が嬉しそうに答える。
俺も慌てて
「白久は何飲む?」
そう聞いてみると
「荒木と、同じ物が良いです」
はにかんだ笑顔で白久が答えた。
「白久が炭酸飲むって、珍しいね」
日野からコーラを受け取り白久のコップに注ぎながら聞くと
「荒木と、同じ体験をしてみたいのです」
そう言って微笑んだ。

「ああ、確かにピザを食べた後に炭酸を飲むと、すっきりした感じになりますね
 これは、美味しい組み合わせです」
早速コーラを口にして、感心したように言う白久がとても可愛らしかった。
「でもさ、お煎餅にはお茶の方が合うよね
 白久と会ってから、俺、ちょっとお茶に目覚めた」
俺がヘヘッと笑うと、白久は嬉しそうに頷いた。

カボチャの煮物は皆に好評で、日野はホッとした顔をしていた。
「何か婆ちゃん、冬至とハロウィン、ゴッチャになってるみたいで」
照れた顔で頭を掻く日野に
「まあ、俺がガキの頃はハロウィンなんてやらなかったからな
 クリスマスはやったけどよ
 ハロウィンやらイースターやらが大々的になったのって、けっこー最近だよな」
ゲンさんの言葉に白久、黒谷、長瀞さんが頷いた。


「ハロウィンって、何でお菓子貰えるの?」
羽生が首を傾げると、皆黙ってしまう。
「そういや、何でだ?」
首を捻るゲンさんに
「日本語訳だと万聖祭でしたっけ?そう言えばこれってそもそも何のお祭りなんでしょうね」
カズハさんも首を捻る。
皆、何となく教師である中川先生に視線を送るが、先生も不思議そうな顔をしていた。

「ちょっと、調べるか」
中川先生がスマホを取り出して調べるのを、皆、興味深げに見つめている。
「あれ、起源はどうも古代ケルト人の収穫祭みたいだぞ?
 これに合わせてカトリック教会が11月1日を諸聖人の日、万聖節の設定にしたらしい
 10月31日は『All Hallows』のeve、『Hallows eve』が訛って『Halloween』と呼ばれるようになったって」
中川先生の言葉に、皆、わかったようなわからないような曖昧な顔を向けた。

「お菓子は?」
空が聞く。
「クリスマスの時期の酒宴の習慣に似た、ソウリングと呼ばれるヨーロッパの習慣から発展したとか」
中川先生も、自分で言っていて首を捻っている。
「何だか、純正なアメリカのお祭りって訳じゃなさそうだな
 それを、日本が訳も分からず真似してんだ」
ゲンさんが苦笑した。
「まあ、こういうのって、商品を売るために企業が盛り上げてる部分、ありますからね」
「バレンタインとか、その最たる物ですよね」
今まで深く考えた事はなかったけど、言われてみればよくわからず盛り上がってた気がする。

「でも、人の祭りに乗っかって楽しむのもありだよな
 楽しめれば、何でも良いのよ」
ゲンさんがヒヒッと笑った。
「そうですね、僕もこうやって皆で集まるの、楽しいです
 今まであんまりこーゆー催しに参加したこと無かったから
 空と一緒に楽しめて、嬉しいです」
カズハさんが照れた顔を見せた。
「俺も楽しい」
「ゲンさん、また誘って」
俺や日野の言葉に、ゲンさんは得意げな顔になって
「まかせとけ」
胸をドンと叩いて見せた。


それから12時近くまでパーティーは続き、お開きになる。
「お前ら、お泊まりなんだろ?
 まだ学生だし、普通は何か理由がないと外泊なんてさせてもらえないもんな
 これからも、こんな機会つくってやるからな」
ウインクするゲンさんに
「期待してます!」
俺と日野は元気にそう答えた。


白久と一緒に部屋に戻る。
「楽しかったね」
俺が言うと
「はい、ハロウィンパーティーなど初めていたしました
 荒木のこのお姿、大変可愛らしいですよ
 ロシアンブルーは、とても甘えっこな猫なんです」
白久がパーカーの上から俺の頭を撫でてくれる。
「白久のシェパードは恰好良いよ!」
俺は白久の腕に自分の腕を絡めて甘えて見せた。

「そういえば、ハロウィンって何で仮装するのか先生に聞きそびれた」
俺の言葉に
「私は『トリック オア トリート』と言うのが何なのか聞きそびれました」
白久も不思議そうな顔をする。
「『悪戯か、ごちそうか』って意味だよね」
俺が答えると
「私にとっては、荒木がごちそうです」
白久は悪戯っぽい笑顔で舌を出す。
俺は伸び上がって白久の耳元に口を寄せ
「悪戯、して良いよ」
そんな大胆な言葉を囁いた。

俺達は見つめ合って唇を重ねる。
白久の手がパーカーの中にもぐってきた。
そのままシャツの上から体を撫でられる。
胸の突起を撫でられると、思わず甘い声がもれてしまった。
「荒木…」
耳元で囁かれる白久の熱い言葉が、欲望をかき立てる。

白久は楽しむように、俺の体に手を這わせていく。
ジーンズの上から白久の手が俺の中心をなで上げると、俺はささやかな悪戯といった愛撫では我慢できなくなっていた。
「白久…、もっと…して」
白久の手に体を押しつけるようにしがみつく。
「はい」
上気した顔で答える白久が、俺の服を脱がせていった。
白久も服を脱ぎ、俺達はベッドに移動する。
白久のもたらしてくれる刺激に酔いしれ、深く繋がり合いながら、俺達は欲望を解放しあった。


「来年も、その次も、ずっとずっと、こうやってハロウィンを楽しみたいね」
白久の腕の中で俺が言うと
「また、お可愛らしい荒木のコスプレが見てみたいです
 アメリカンカールやアビシニアンも似合いそうですね」
白久も幸せそうに微笑んだ。
「俺も、可愛い白久が見たいかも
 トイプードルとか、ミニチュアダックスとか」
俺の言葉に
「荒木に可愛いと思っていただけるよう、頑張ります」
白久はそう答えて、そっと唇を合わせてくれた。

俺達はクスリと笑いあって相手の可愛い姿を想像しながら、眠りに落ちていくのであった。
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