しっぽや(No.32~43)
side〈MINANO〉
カシス君の捜索を終え駅へと向かう道を歩きながら、私は自然と顔が綻んでしまうのを感じていた。
明戸からも浮かれた気分が感じられる。
私達はどちらともなく顔を見合わせると
「フフフッ」
そう笑いあってしまった。
「荒木、あのチビスケに『愛してる』だって
猫の気持ち、わかってるじゃん」
明戸が満足げな笑顔になった。
「白久は良い飼い主と巡り会えたようですね」
私も笑みを浮かべてしまう。
「今でも思い出しますよ
初めて荒木が事務所に来た時、うたた寝していた白久が跳ね起きてソワソワしだしたことを」
クスクス笑いながら言った私の言葉に
「あん時は何事かとビックリしたなー
おまけに猫の捜索依頼なのに、自分が出るとか言い出して
長瀞は出てたし、黒猫だっつーから俺達が出ようと思ってたのにな」
明戸がうんうんと相槌を打つ。
「白久は長く独りだったから、本当に良かったです」
私がしみじみと言うと
「白久、俺達と居ても寂しそうな顔することあったもんな
荒木に飼ってもらってからは、いつも幸せそうだ」
明戸も頷いた。
「今、俺達に飼い主はいないけど、きっとあの時の白久よりは寂しくないんだろうな
俺にはお前がいる」
私を見つめてくる明戸を見つめ返して
「そうですね、同じ孤独を知っている同胞(はらから)がいる
それは何よりの慰めになります
明戸と一緒に化生出来て良かった」
心からの言葉を口にした。
「あのお方の膝の温もりは恋しいけど、お前と寝てても温かいしさ」
明戸の言葉に
「ええ、あの冷たい土砂の中、明戸の温もりだけは感じられましたよ」
私は微笑んでそう答えた。
生前、土砂に飲み込まれた時、この温もりだけは離すまいと私は必死に祈ったのだ。
「あ、そろそろ事務所、閉まってるかな」
明戸が腕時計を確認して舌を出す。
「でも、黒谷が待っててくれているでしょう
彼は所員全員が事務所に帰還してくるまで、残っていてくれますからね」
私の言葉に
「黒谷はその辺マメでキチンとしてるもんな
白久もだけど、俺達、黒谷にも良くしてもらったっけ
黒谷にも飼い主があらわれて良かったよ
しかし、黒谷は飼い主が出来て浮かれ具合に磨きがかかったけどな」
明戸がカラカラと笑った。
「帰ったら、黒谷を夕飯に誘ってみましょうか?
今日は日野はバイトに来ないし、久しぶりに彼と食事するのも良いかと」
私の提案で
「良いね、秋っぽくサンマにでもする?
もう生サンマが安く出回り始めてるしさ
今年のサンマは脂がのってて最高!
去年はそうでもなかったから、余計美味く感じるぜ」
明戸が舌なめずりをする。
「部屋に匂いがついてしまっても、サンマは塩焼きが良いですね
大根おろしもタップリ付けて」
「同感!」
私達はそんな事を話し合い手を繋ぎながら、しっぽや事務所へ帰って行く。
繋いだ手の先にある魂の片割れの存在を何よりの心の支えにしながら、私達は今日も飼い主と巡り会える日を待っているのであった。
カシス君の捜索を終え駅へと向かう道を歩きながら、私は自然と顔が綻んでしまうのを感じていた。
明戸からも浮かれた気分が感じられる。
私達はどちらともなく顔を見合わせると
「フフフッ」
そう笑いあってしまった。
「荒木、あのチビスケに『愛してる』だって
猫の気持ち、わかってるじゃん」
明戸が満足げな笑顔になった。
「白久は良い飼い主と巡り会えたようですね」
私も笑みを浮かべてしまう。
「今でも思い出しますよ
初めて荒木が事務所に来た時、うたた寝していた白久が跳ね起きてソワソワしだしたことを」
クスクス笑いながら言った私の言葉に
「あん時は何事かとビックリしたなー
おまけに猫の捜索依頼なのに、自分が出るとか言い出して
長瀞は出てたし、黒猫だっつーから俺達が出ようと思ってたのにな」
明戸がうんうんと相槌を打つ。
「白久は長く独りだったから、本当に良かったです」
私がしみじみと言うと
「白久、俺達と居ても寂しそうな顔することあったもんな
荒木に飼ってもらってからは、いつも幸せそうだ」
明戸も頷いた。
「今、俺達に飼い主はいないけど、きっとあの時の白久よりは寂しくないんだろうな
俺にはお前がいる」
私を見つめてくる明戸を見つめ返して
「そうですね、同じ孤独を知っている同胞(はらから)がいる
それは何よりの慰めになります
明戸と一緒に化生出来て良かった」
心からの言葉を口にした。
「あのお方の膝の温もりは恋しいけど、お前と寝てても温かいしさ」
明戸の言葉に
「ええ、あの冷たい土砂の中、明戸の温もりだけは感じられましたよ」
私は微笑んでそう答えた。
生前、土砂に飲み込まれた時、この温もりだけは離すまいと私は必死に祈ったのだ。
「あ、そろそろ事務所、閉まってるかな」
明戸が腕時計を確認して舌を出す。
「でも、黒谷が待っててくれているでしょう
彼は所員全員が事務所に帰還してくるまで、残っていてくれますからね」
私の言葉に
「黒谷はその辺マメでキチンとしてるもんな
白久もだけど、俺達、黒谷にも良くしてもらったっけ
黒谷にも飼い主があらわれて良かったよ
しかし、黒谷は飼い主が出来て浮かれ具合に磨きがかかったけどな」
明戸がカラカラと笑った。
「帰ったら、黒谷を夕飯に誘ってみましょうか?
今日は日野はバイトに来ないし、久しぶりに彼と食事するのも良いかと」
私の提案で
「良いね、秋っぽくサンマにでもする?
もう生サンマが安く出回り始めてるしさ
今年のサンマは脂がのってて最高!
去年はそうでもなかったから、余計美味く感じるぜ」
明戸が舌なめずりをする。
「部屋に匂いがついてしまっても、サンマは塩焼きが良いですね
大根おろしもタップリ付けて」
「同感!」
私達はそんな事を話し合い手を繋ぎながら、しっぽや事務所へ帰って行く。
繋いだ手の先にある魂の片割れの存在を何よりの心の支えにしながら、私達は今日も飼い主と巡り会える日を待っているのであった。