Sunshine*Rainbow

「それでは、皆さーん!これから、体育館に移動して入園式を始めまーす!お隣になった子と手をつないでくださーい!」
「はーい!!」
男女入れ違いで二列になる園児達
ゆずも自分の場所を探して歩き回る
そんな娘の姿を見て、柳宿はくすっと笑った

あんなに大きくなっちゃって・・・
ついこの前までまだ歩けなかったのに

娘の成長が、柳宿にとって何よりも嬉しかった

「・・・・・・・ねえ。あの子でしょ?七星さんの子・・・」
「全然似てないわね・・・どちらかというとお母さん似かしら?」
「まあ、人相悪い顔に生まれなかっただけよかったんじゃない?」
そんな会話が陰で繰り返されている事に、柳宿は気づかなかった

「あ。ゆずちゃん」
「ん???」
「僕と一緒の列だよ~」
「あ・・・さっきの・・・光喜君だよね?よろしくね~v」
「うん・・・よろしく・・・」
先程、挨拶した白鳥光喜君だと、ゆずは思った
手をつなごうとすると、すぐさま光喜は母親に引っ張られた
「・・・・・・・光喜。ゆずちゃんとはなるべく仲良くしないでね?」
「え・・・何で?」
「お母さん、ゆずちゃんの事あまり好きじゃないの。だから、光喜にも仲良くしないでほしいのよ」
「・・・・・・・・・・・・・分かった」
その光景を、柳宿も見ていた
ゆずが、一瞬寂しそうな顔をしたのを見逃さなかった

全ての園児と保護者が席につき、式は丁重に執り行われた
「・・・・・・・・あの。白鳥さん」
隣に座っている白鳥に、柳宿は声をかける
「な・・・何でしょう?七星さん」
「うちのゆずが・・・お宅の息子さんに何かしましたでしょうか?先程、ゆずから引き離しているように見えましたので・・・」
「あらあ?そうでしたかしら?光喜の服にゴミがついていたから、取ってあげただけですよ?」
娘の反応から、とてもそうは見えなかったが・・・
柳宿は、式の最中なのでそれ以上咎める事は出来なかった

「それでは、皆さん!明日から、元気に幼稚園に来てくださいね!」
「はぁ~い!!」
「柳宿!!終わったよ~」
「お疲れ様!お家に帰っておやつ食べようか!」
柳宿は、何事もなかったかのように駆け寄るゆずに何事もなかったように微笑みかけた
「・・・・・・・・・・・・・あの。七星さん?」
「はい?」
そこに、担任の雀村が近寄って来た
「少しお話があるのですが・・・よろしいでしょうか?」
「はい。じゃあ、ゆず。少しお外で遊んでて?」
「は~い」

「あの・・・先生。ゆずが何か・・・?」
「突然すみません。ゆずちゃんに入園していただくからには、七星さんにお話しておかなければいけない事がありまして」
「何か・・・?」
「実は、ゆずちゃんのお父様のお話なんです」
「え・・・うちの主人がですか・・・?」
「あの・・・とっても派手な容貌の方だと聞いているのですが・・・お仕事はどちらの方で?」
「あ・・・紅炎建設です」
「ゆずちゃんのお父様が何か悪い事をされていた人なのではないかと、近所で噂がたっておりまして・・・」
その言葉に、ハッとなった
「あの・・・主人は決してそのような事はしていません。確かに、誤解されるような身なりはしていて、私からも言っているんですが・・・
昔から派手な事が大好きといいますか・・・だけど、それは嗜好であって実際に悪い事をしているとかそういった事はないんです」
「奥様に暴力をふるってるのではないかという噂もあるんですよ」
「いえ・・・決してそんな事は・・・」
「ゆずちゃんを見れば分かります。素直な子だなと一目見ただけで分かりますし、お母様もそのような方だという事も」
「先生・・・」
「私は担任なので、園児には平等に接するつもりです。ただ、ご近所の方がお子さんに悪い事を吹き込まなければ良いのですが・・・
それだけが心配なんです。なので、お母様には、きちんとゆずちゃんを見ていてあげてほしいのです」
まさか、近所でそんな噂が立っているとは知らなかった
「はい・・・ありがとうございます」
それでも、忠告してくれた担任に感謝の気持ちを込めてお礼を言った

「ゆず!」
園庭では、ゆずが砂場遊びをして遊んでいた
「柳宿!」
「遅れてごめんね!」
「うん!ちょうど、お山が出来たところなんだ!」
ゆずが、4つの山を指さした
「これがゆずのでね~これが柳宿ので~これが翼宿ので~これがユウのだよ!」
その光景を見て、柳宿は切なくなった
「・・・・・・・・・・ゆず。お父さんは、本当は凄く優しい人なんだって分かるよね?」
「え?」
「お父さんね。今は素直じゃないけど、昔はすっごく優しい人だったんだよ。ゆずが生まれた時、雪の中を子犬みたいに走り回って本当に喜んでくれたの」
「そうなんだ~」
「だけど、今はきっとお仕事が忙しいから、余裕なくなってるだけだと思うんだ。ゆずは、パパの事好き?」
「うん!!ゆず、翼宿と柳宿、どっちも好き~!!」
屈託のない笑みで笑うゆずに、柳宿は泣きそうになったが無理に笑顔を作った

世間の誤解から生まれた冷たい目
だけど、私はこの子を護っていかなければいけないんだ
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