FIRE BOYS

「柳宿。昇格試験の結果が来てるわよ」
「え・・・?」
張宿の死から、一週間
柳宿の元に、その後すぐに受けた昇格試験の結果が届いていた
「・・・・・・・・・・・・・」
唾を飲み込み、そっと封を切る・・・

「採用試験の内容は、綱渡り全般と救助の流れ。それと筆記試験だ!いいな!?」
「よぉし!!」
七人の採用試験が始まる
綱渡りの試験
いつも二番手の翼宿だったが
今日は、田端に相当の差をつけられている
「翼宿!がんばれ!!」
「・・・・つっ・・・!!」
翼宿は、いつになく調子が出ていなかった
やはり・・・彼の死が影響しているのだろうか
小山田は、顔をしかめた

カァカァカァカァ
全ての試験が終わり、翼宿は夕闇に包まれた訓練台を見上げていた
「よ」
「よぉ」
「お疲れ」
「・・・・・・・・・ああ」
功児が声をかける
元気のない親友
「はよう元気・・・出せや」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「みんな、同じ気持ちや」
「・・・・・・・・・・・・・・・せやな」
「やけど・・・お前は、すぐに顔に出るからなあ」
「ははっ・・・分かってるやん」
未だに、一番張宿の死から立ち直れていないのは翼宿だった
「だけどな・・・俺ら、これからもっと過酷な現場に立ち向かわなあかんのかもしれんのやで」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「ホンマに、大事な奴を・・・護れへんで」
「大事な奴・・・か」
翼宿は微笑をすると、鞄を持ち上げた
「俺は、お前らがこれから誰一人欠けずに、どこかで元気に暮らしててくれればそれでえぇんよ」
「翼宿・・・」
今の翼宿には、仲間を失う事が一番怖かった
だから・・・本当に大事な奴の存在にはまだ気づく事が出来なかった

寮への帰り道を一人で歩く
訓練以外の時は、なるべく一人になりたかった
すると、河原に見覚えのある後ろ姿が見えた
「・・・・・・・・柳宿?」
近寄って、声をかける
「・・・・・・・・・・・翼宿」
「・・・何してん。ぼーっとして」
「何でも・・・たまに、一人になりたくて」
「奇遇やなあ。俺もや」
妙に落ち着いた声に、柳宿の鼓動はほんの少し鳴る
「元気ないじゃない?」
「お前もやないか」
また、二人は同時に黙る
「・・・・・・・・・・・・落ちちゃった。昇格試験」
「え?」
「何か色々ありすぎたせいかな・・・それとも、これがあたしの実力なのかな」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「救急隊員、あたしには向いてないのかもなあ・・・やめちゃおっかな。実家に帰って、服屋の手伝いでもしちゃおっかなあ」
今まで、幾度となく叱られ、その度に凹んできた
最近、やっと先輩のフォローが出来るようになってきたのに、これでまた逆戻り
柳宿の気合いは、すっかりなくなってしまっていた
「・・・・・・・・・・・・・・・・・阿呆くさ」
「・・・・・・・・・・・・・・・え?」
「そんな気持ちになるんなら、辞めてまえ」
「なっ・・・」
「やる気なくすわ。一緒におるこっちまで」
なぜか、翼宿は苛々していた
自分だって落ち込んでいた筈なのに
「・・・・・・・・・・あんたなんかに、あたしの気持ちが分かってたまるもんですか」
「ああ~ちっとも分からん!お前みたいな情けなくてしょーもない女の気持ちなんかなあ」
「何よ、その言い方!!あたしのこれまでの頑張りなんて、何も知らない癖に!」
「今、投げ出そうとしてたやろーが!そんな奴が努力語るな、ボケ!」
柳宿の瞳に、涙が滲んだ
「あんたって奴は・・・!!」
柳宿は、立ちあがった
「馬鹿!大嫌い!!もう二度と顔見せないで!!」
そのまま、彼女は駆け出して行った
「・・・・・・・・・・ふん」
翼宿は、芝生に寝転がった
張宿の死
試験の出来
お互い、全てが上手く行かなかった
分かち合うべき筈が・・・傷つけてしまった
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