FIRE BOYS

「お疲れ。小山田君」
「理事長・・・お疲れ様です」
「先日の火事、大変でしたね」
「全くです・・・翼宿の奴が無茶しおって・・・」
「上から報告は受けていますよ」
理事長は、苦笑い
「しかし・・・それと同時に、あの時救助した少年の母親からも連絡を受けましてね」
「・・・は」
「瓦礫の下敷きになっている間、翼宿君は、少年に自分の身の上話を聞かせたそうです」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「少年の不安は和らぎ、勇気づけられていたと言っていました」
「・・・・・・・・・・・そうですか」
「将来は、彼のような救命士になりたいと言っていたそうですよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・それはそれで大変ですが」
小山田はそう言いつつも、笑みを零していた

「採用が二人ーーーーーーーーーーーー!?」
翼宿の雄たけびが、ロッカールーム中に響き渡る
「いって!いっててて・・・」
「まだ、腕に響くやろーが!つか、そんな騒がんでも、みんな知ってる」
あれから、一週間
徐々に訓練生の数も減ってきて、残りは功児率いる四班と翼宿率いる五班だけになった
「俺・・・自信ない」
「何言ってるんだよ!だいぶ、教官にも怒られなくなったじゃん!」
「そうですよ!・・・って、僕もまだまだですけど」
「こらこら!張宿!すぐに落ち込むなってーの!」
しかし、この田端を除く七人の結束は強かった
だからこそ、この七人がバラバラになるのは寂しい

「・・・・・・・・・・・・・あれ?」
「どないした?張宿」
寮への帰路で、張宿は声をあげた
「おばあちゃん!?」
「へ?」
門で、こちらを見ながらニコニコ笑っている
「おばあちゃん、どうしたの!?」
「いやねえ・・・横浜に用事があって、ちょっと様子を見に来たんだよ」
「そんな・・・連絡くらいよこしてよぉ~」
「あら。訓練生の方々かい?」
「あ・・・うん。皆さん。こちらは、青森に住んでいる僕の祖母です」
「青森?お前、上京してきたんかいな?」
「どうしても、救命士になりたくて・・・」
「それで?今日は、彼女とデートではないのかい?」
「あ・・・それは」
「「「彼女???」」」

「こっちに、彼女がおるやと???」
「はい・・・実は、僕が訓練を逃げ出してはいまいかと、いつも祖母から電話を貰っていて・・・図星の事は言えないし、遂、「こっちで支えてくれる人もいるから大丈夫」って言っちゃって・・・そしたら、おばあちゃんがそれを彼女だと勘違いして・・・」
「支えてくれる人」とは、翼宿の事だったのだが
「なるほどなあ~・・・偵察に来たっちゅう訳か」
功児が、腕組みをする
「・・・で」
「で」
「で?」
居酒屋で向かい合う七人
そして、柳宿の姿
「・・・・・・・・・・・・・・柳宿さん、お願いします!」
「・・・・・・・・・・・いや・・・あたし、そういうのは・・・」
「えぇやんか、柳宿ぉ!俺らの仲やろぉv一つ代役買ってくれや!」
翼宿の頼みでも、さすがに・・・翼宿の前でOKを出せない
しかし
「お前も、救急隊員に羨ましがられるかもしれんで~!あの柳宿がいっちょ前に彼氏連れてるてv」
その一言に、カチンと来た柳宿
「・・・・・いいわよ」
「へ???」
「いいわよ~v張宿君!一緒に色々なトコデートしようねぇvvv」
「え~~~???いいんですかっ!?」
人間関係を把握しやすい功児は、はぁとため息をついた

「・・・・・・・・・・・あの。柳宿さん」
「何?」
「本当によかったんでしょうか・・・?」
「いいのいいの!別に嫌じゃないし!」
「・・・・・・・・・・本当は、翼宿さんの事気になってるんじゃないですか?」
「え?」
「分かります。頼まれた時、凄く戸惑ってましたから」
「そんな訳ないでしょー?誰があんなデリカシー馬鹿!」
「あ・・・祖母です」
喫茶店で待ち合わせしていた張宿と柳宿
張宿の祖母の姿が見えた
「・・・・あらあら。お待たせしました」
「おばあちゃん。こちらがその・・・」
「柳宿です。よろしくお願いします」
「あら・・・あなたが・・・」
祖母は、嬉しそうに目を細める

「ドリンク買ってきます!待っててください!」
翼宿と張宿が自主練をしていた港に3人はいた
「あらあら。あんなにはしゃいで大丈夫かしら」
祖母は、愉快そうに笑う
「今日は、ありがとうございました」
「いいえ」
「張宿も、いい人達に恵まれたみたいで・・・安心しましたわ」
「そうですね・・・訓練生もみんないい人たちですよ」
「お知り合いなんですか?」
「はい。同期なんで・・・結構飲んだりしています」
「そうなんですか・・・この間、少しお会いしましたけど、関西系の方が多いんですか?」
「はい。根性も人一倍で、特に張宿君と仲がいいです」
「そうですか・・・それは、気合いが入りますね」
祖母は、港の海岸を眺める
「あの子、昔からいじめられていましてね」
「え?」
「私も心配だったんです。いきなり、人を助ける仕事がしたいって言ってきて」
「・・・・・・・・・・・・」
「だけど、今は暖かい人たちに囲まれている」
「・・・・・・・・・・・・」
「それだけで、あの子を育てた甲斐があります」
鴎が、遠くで泣いていた
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