紡歌

ザーーーーーーーーーーーーーーーーー
夜明け前、雨は本降りになった
翼宿はといえば、まだ柳宿を探していた
もう、半分諦めてはいたのだが
柳宿は、もう帰ってこないのではないだろうか
「・・・・・・・・・・・・・柳宿・・・」
走る足を止めて、翼宿は木の幹にもたれかかった
「・・・・・・・・・・すまんな。柳宿・・・」
唇を噛みしめると、どこからか柳宿の香がした
「柳宿!?」
翼宿が一歩進み出ると、その影はより一層濃くなった
柳宿が雨に打たれながら、こちらに向かってきている
「・・・・・・・・・・柳宿!!」
翼宿は柳宿の両肩を掴んで、引きとめた
「柳宿・・・おい!!大丈夫か、お前!!こんなに濡れて・・・どこ行っとったん!?」
「翼宿・・・ごめん」
「これでも着ておけ!!」
翼宿は自分の上着を柳宿にかけた
「・・・・・・・・・・・・・・・ごめん」
「何謝っとんねん・・・謝るのは俺の方で・・・」
「冷たくしてごめんね・・・」
柳宿は泣きだした
「気にしてへん。んな事気に病んでたんか?」
翼宿は、そっと柳宿の頭を撫でる
「あたしね・・・あたし・・・あんたが凄く大事だよ」
「・・・・・・・・・・・・・うん」
「だけど、ずっとずっと・・・このままでいたいの。あんたもあたしも馬鹿言い合ったり愚痴言い合ったり・・・そんな関係でいつまでも・・・」
「・・・・・・・・・・・・・そうか」
「そんな翼宿が・・・・・・・・・・・・好きなの」
翼宿は、その涙にこれ以上無理強いは出来なかった
「・・・・・・・・・おおきに。お前の気持ちはよう分かった」
「・・・・・・・・・・・・・・・っ・・・」
「俺もそうやな。こんな湿っぽい関係よりも、いつも通りの関係に戻った方が楽やわv」
見上げると、翼宿の変わらない笑顔
この笑顔に安心する
もう長い間・・・触れていなかったような気がするから
「ほな、戻るか。めっちゃ体冷えてるやろ。誰にも言うてへんから・・・美朱にも。安心せえや」
「・・・・・・・・・・・つっ!!!!」
背を見せた翼宿に柳宿はしがみつく
「柳宿・・・?」
「少しだけ・・・こうさせていて」
柳宿は、声を殺して泣いた
その体の震えが伝わってきて、翼宿は胸が張り裂けそうだった

・・・・・・・・・・・・・カタン
柳宿を寝かせ、翼宿は部屋を出た
朝焼けがじんわりと見えてきた
「もう朝やないか・・・」
翼宿は微笑した
「・・・・・・・・・・・・・・・ったく。世話のかける奴や」
「翼宿」
声をかけられ振り向くと、鬼宿が立っていた
「・・・・・・・・・・・たま。戻ったんか」
「あのさ・・・俺」
「何も聞かん。結構すっきりして帰ってきたみたいやで」
「・・・・・・・・・そうか」
「俺もお前も今回は引き分けって事でえぇんやないか?」
翼宿は笑う
「・・・・・・・・・・・・わりぃな」
「謝るな」
握手を求める鬼宿
「これからも一緒に美朱と・・・柳宿を護っていこうな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・分かり切ってる事、頼むな」
夜が明ける
二人の笑顔が見えた
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