紡歌

バタンッ
ハァハァハァハァ・・・
柳宿は、急いで自室に戻り、戸を閉めた
「何よ・・・何なのよ」
そのまま、へたり込む
翼宿・・・冗談にしても度が過ぎる
あんな真剣な声は聞いた事がない
「あたしは・・・どうすればいいの・・・?」
コンコン
戸を叩く音にびくつく
「柳宿・・・?俺、鬼宿だけど」
柳宿は静かに戸を開く
「鬼宿・・・」
鬼宿は何も見なかったような顔で微笑む
「ちょっと・・・いいか?」

「恥ずかしいトコ、見られちゃったわね・・・」
「いや。平気だよ」
鬼宿に茶を薦めて、一息つく
「俺・・・翼宿の気持ち知ってたから」
「そうだったんだ」
「自分でもよく分からないんだってさ。許してやれよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「まあ、よく分からないのに、あんな事する方が俺には分からないけどさ」
「あたしは、全然気づかなかった。確かに、あいつの事・・・友達以上には思ってた。
だけど、恋愛対象には見た事なくて・・・だけど、あいつも男なんだなって思い始めて・・・でも、こんな事ってあっていいのか・・・」
「星宿様とは、違う気持ちなんだろ?」
「そうなのよ・・・星宿様は憧れであって、翼宿は親友のような・・・その枠からは決して外れられないような・・・」
では、自分は柳宿にとって何なのか
鬼宿はため息をつくと、柳宿の頭を撫でた
「お前は自分に正直に答えを出した方がいいんじゃねえか?あんまり悩むなよ」
顔をあげた柳宿の表情は、狂おしい程愛おしくて
「・・・・・・・・・・・・・ありがとう」
そんな彼を見て、一番に湧きあがった感情は翼宿に対する怒りだった

翼宿は、まだ稽古場にいた
揺れる俵を見ながら、翼宿は丸太に座っていた
「・・・・・・・・・・・・俺、ホンマにどないしたんや」
しかし、それでも彼の笑顔を思うと体が熱くなる
「俺・・・もしも、あの時逃げられなかったらあのまま・・・?」
「そういう中途半端な気持ちが一番苛つくんだよな」
鬼宿が、背中越しにこう言った
「・・・・・・・・・・・・・たま」
「柳宿を悩ませて、何が面白いんだよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「俺、あいつに悲しい顔させる奴は・・・・・・・・・・・・・・許さない」
「たま・・・?」
翼宿は振り返る
「お前・・・」
「俺だって、お前に偉そうな事言える立場じゃねえよ。だけど、俺・・・やっと気づいたんだ」
「ちょお待てや・・・美朱は」
「俺・・・悔しいよ。お前ならずっと柳宿を笑わせてやれる。星宿様の事も忘れられるくらいにあいつを楽しませてやれるって思ってた。だけど、お前がその役目を果たせないなら、俺がしてやりたい」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
翼宿は、唇を噛み締める
「俺・・・絶対にお前を超えてやるからな」
柳宿の笑顔が見たい
だからこそ、壊した友情
4/10ページ
スキ