紡歌

「よう、翼宿。昨日は悪かったな。あれから、美朱合流しなかったんだって?」
翌朝、鬼宿は翼宿に話しかける
「おう。何や、せっかく付き合ってやってたのに、あいついなくなってしもてん」
「ごめんな。あいつ、亢宿に花を送りに行ったんだよ。許してやってくれ」
「・・・・・・・・・・・・ま、えぇけど。何や、仲直りしたんか?」
「ああ。何とか理由は聞き出せたよ。俺らが頑張るしかねぇよなって」
「そか」
「何だよ、お前?元気ないな?」
「別に・・・」
翼宿は、鬼宿に背中を向ける
鬼宿は首を傾げる
「たま・・・俺、やってもうたんや」
「へ?何をだよ?」
「あいつの事、仲間やと思ってたのに・・・汚らしい男やな、俺は」
「翼宿?」
「俺・・・柳宿にキスした」
時間が止まった
「え・・・柳宿・・・?」
「笑ってまうやろ?自分でも変なんや。やけど、星宿様の事で無理に明るく振る舞ってるあいつ見たら・・・何や愛しく思えてな・・・いつの間にか、俺はあいつを・・・」
「翼宿・・・」
「すまん!忘れてくれ!今の・・・洒落や洒落!!」
振り向いた翼宿には、笑顔が戻っていた
「たまやから、話してみたくなったいうかな。もし、そうだったら何で言うたやろな~てv」
明らかに嘘
「ほな、俺・・・裏で稽古してくるわ」
そのまま、そそくさと翼宿は去って行った
取り残された鬼宿
この空虚感は何だろう
美朱と仲直りした筈なのに
この蟠りは・・・

「はあ・・・」
桟橋の手すりに肘をつき、溜息をつく柳宿
「・・・・・・・・夢であってよ」
まさか、ずっと仲間だと思っていた相手にキスをされた
確かに、他の七星士よりは仲がよかったのは認める
自分も唯一心を許せる相手ではあった
だけど・・・それとこれとは別だ
彼は、ずっと自分をそういう目で見ていたのだろうか
ビュッ
シュッ
すると、俵を殴る音が裏から聞こえた
柳宿はそっと覗いてみる
そこには、大粒の汗を流して稽古に打ち込む翼宿の姿だった
柳宿は、その姿に鼓動が鳴る
そっか・・・弟みたいにしか見てなかったんだけど、あいつも男なんだなあ
すると、翼宿と目が合った
「やっば・・・」
「柳宿!」
逃げようとする柳宿の背中にかけられた声
柳宿は、立ちすくんだ
「・・・・・・・・・・・・・・・・すまん。その・・・昨日は・・・」
「べ・・・別に気にしてないわよ・・・」
ゆっくり近づいてくるのが分かる
「やけど、冗談じゃない」
鼓動が高鳴る
「俺も自分阿呆や思う。お前の事いつからこんな風に見るようになったか分からん・・・
やけど、強がってたお前見てたら胸張り裂けそうになってん。お前・・・卑怯やわ」
「・・・・・・・・・・・・・っ・・・!!」
柳宿は後ろから翼宿に抱き締められていた
「翼宿・・・離して・・・誰かに見られたら・・・」
「離さへん」
「どうしたのよ・・・あんた・・・。いつもならもっと馬鹿な冗談で笑い飛ばすじゃない・・・」
「いつもの俺じゃ、通用せえへんやろ」
「で・・・でも・・・こんなのって・・・」
もはや、柳宿はパニック状態だった
それでも、翼宿の筋肉質な腕に鼓動が更に増す
「翼宿・・・あのね・・・・・・・・・・・・・・・・・・つっ!!!!」
前方を見て、柳宿の目が止まった
宮殿からは、鬼宿がこちらを見ていた
「たまほめっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・痛・・・」
翼宿の腕の力が強くなる
鬼宿と翼宿はしばらく睨みあっていた
そんな乾いた空気の中
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