紡歌

俺は罪な男なんだ
「ここ」にいちゃ、いけないんだ
使命も仲間も親友も捨てて・・・結局選んだのは「あいつ」だから
だけど、あいつには敵わない
それでも、あいつは俺を許してくれた
それは、「仲間」だから・・・そんな気持ちも知っていたよ
だけど、俺はそれ以上にお前を・・・

「俺と結婚してほしい」
俺の人生最初のプロポーズ
それはいともあっさりと拒まれた
「鬼宿。何マジになってんの?」
乾いた笑いでそれをかわす美朱
俺達は、遊びだったのか
美朱・・・俺を愛していると言ってくれたじゃないか
信じていた。信じていたのに

鈴虫が鳴る庭を眺めながら、夜が静かに更けていくのを感じた
鬼宿は、美朱が出て行った部屋の桟窓からそれを見ていた
鬼宿。現実を受け入れろ
俺はフラれたんだ
早く・・・朱雀召喚の為に切り替えなければ
それでも、流れるのは涙
「ちくしょ・・・美朱・・・」
その時
微かに遠くから聞こえる歌声
それは、男性とも女性とも似つかない綺麗な歌声だった
「・・・誰だ?」
紅南池から、聞こえてくる
鬼宿はその歌声に導かれるように外へ出た

心地よい歌声を追いかけ、辿り着いた先には綺麗な紫髪
「・・・・・・・・・・・・・・柳宿」
それは、同じ七星士の柳宿だった
「たまちゃん?どうしたのよー?こんな夜中に!」
歌うのをやめ、いつもの柳宿がこちらを向いた
「柳宿こそ・・・何で、こんなトコで歌ってるんだよ?」
「あーごめんね。起こしちゃった?」
「いや・・・俺は起きてたから・・・」
「・・・何?泣いてたの?」
目が赤かったのだろうか
すぐに気付かれてしまった
「べっ・・・別に・・・目にゴミが入っただけだよ!!」
急いで目を拭うが、柳宿の優しい瞳になぜか鼓動が高鳴った
「あーもー!!無理しないの!!また、どっかにふらっと出てったら美朱に泣かれるわよ?」
「その美朱がな・・・」
「なぁに?」
「今・・・プロポーズしてきたんだよ」
「えぇ!?」
「だけど、断られた」
「え・・・冗談でしょ?」
「冗談で言う事かよ!!俺も冗談だって・・・信じたいよ」
鬼宿は瞳を抑える
「・・・・・・・・・・・んー。何か事情があったんじゃないの?」
「何でそう思うんだ?」
「だって、あんたが倶東国の手下になった時、あの子自殺しそうになったのよ?」
「え・・・?」
「そこを助けたのが星宿様。間一髪だったけどね。あの子にとってそれだけあんたが大事って事」
「そんな事が・・・」
「だから、きっと何か事情があるのよ!!もう一度話し合いなさいな!!ね?」
静かに頷くと、柳宿は姐御肌ながら鬼宿の頭をよしよしと撫でる
「まさか・・・お前も星宿様の事で?」
「あー・・・あたしは別に」
「だって、さっきの歌・・・失恋の歌詞だろ?」
「さっきの歌はね・・・あたしの住んでた地方で流行ってた手毬歌よ」
「手毬歌が失恋の歌詞?」
「ん。その地方で失恋をした女の子が毬をつきながらその歌を歌うと、次は素敵な恋に出会えるんだってさ」
「へえ・・・」
「あたしの場合は、現実を思い知らされちゃった感じ?その・・・美朱の件でもさ。もう敵わないなあってさ」
「柳宿・・・」
「でも!!余計な事考えてられないわよね!!北甲国の出発までに体力つけておかなきゃいけないってのに!!」
強がる柳宿に、自分も励まされる
「そう・・・だよな!!今は愛だの恋だの言ってる場合じゃない・・・か。だけど、このままじゃ俺・・・踏ん切りつかないから、美朱ときちんと話し合ってくるよ!!」
「そうだ!!明日の夜、星見祭りがあるのよ!!美朱も連れて一緒に行かない?」
「だって・・・お前はどうするんだよ?」
「あたしは、翼宿でも連れていくわよ!!今夜の事は内緒にしててあげる!!」
「柳宿・・・ありがとう。話聞いてくれて」
「いえいえ~これがあたしの役目みたいなもんでしょv」
大事な仲間。失いたくない仲間
ただ、それだけだったんだ
だけど、一瞬でも夢を見てしまった
その笑顔を俺が護れたらって・・・
こんな薄情な俺を許してほしい
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