太陽に咲く秋桜

『ねぇねぇ・・・康琳さん。翼宿さんと仲がいいみたいね』
『まぁ・・・後宮にいた頃は、皇帝陛下一筋だったのに・・・どうしたんでしょうね?』
『実は、ああいうガサツな方が好みだったのよ。本人もガサツだったし・・・』
『元山賊の七星士でしたっけ?全く・・・乱暴な方と仲良くなるなんて、後宮の名が汚れますわね』
後宮に立ち寄った柳宿の耳に、そんな言葉が聞こえてきた
後宮の妃候補の女たちの悪い噂話
『朱雀七星って聞いても、大した事ないわね。ちゃんと巫女を護れるのかしら・・・』
スカーン
『は・・・白冥様・・・どうなさって!?』
『急に敷石が・・・』
柳宿は、その内の一人に敷石を力を加減して投げつけていた
『康琳・・・どうして・・・』
『あたしの事は悪く言っても、翼宿の事は悪く言わないで!!』
『は・・・?』
『あいつは・・・見た目派手かもしれないけど、誰よりも優しくて熱い奴なの!!よく知りもしない癖に、そんな事言わないでよ!!』
『な・・・何よ・・・。随分落ちたものね。あなたも・・・』
『そんなんだから、いつまで経っても星宿様に選ばれないのよ!!自分達が魅力ない癖に、周りに当たるような真似ばかりして!!』
『なぁんですってぇ!!!!????』
『コラ』
柳宿は、背後から小さくごつかれた
『・・・・・・・・翼宿』
『余計な喧嘩すんな。時間の無駄や』
『だって・・・こいつら・・・』
『行くで。星宿様がお呼びや』
柳宿は、急いで翼宿を追いかけた

『何で、怒らないのよ!?腹立たないの!?』
『阿呆相手にしてもしゃあないやろ』
廊下をすたすたと進む翼宿の後を追いかける
『・・・・・・・・・・・・・・だって、あんな酷い事・・・』
『言われ慣れとるわ。気にすんな。俺みたいなんが七星士で動揺してる奴らなんぞこの宮殿でたくさん見てるわ』
『・・・・・・・・・・・・・・・翼宿』
『けど・・・』
翼宿は、振り向いた
『ありがとな・・・嬉しかった』
優しくも力強い笑顔に、胸が高鳴った
こいつを護りたい・・・・・・・・・・・・・・・・・そう思えた

PiPiPiPiPiPiPiPiPi
目覚ましの音
この間の一件とシンクロした夢
俊を庇ったように、あの少年を過去に自分が庇った?
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俊」
それでも、高鳴るこの胸の鼓動
何かを感じている・・・・・・・・・・・・・・・あいつに

「なるほど・・・柳さん。恋してるんですね?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・へ?」
とある昼休み、柳は部下の真菜に話を聞いて貰っていた
「・・・・・・・・・・・・・・恋って」
「恋しかないじゃないですかぁ~どうりで最近よくぼーっとしてると思ったぁv」
「・・・・・・・・・あたしが俊を・・・?」
「どこかで会った事があるって言いましたよね?柳さんも、そういう運命信じる人なんですねぇ~v」
「そんなんじゃなくて、本当に・・・」
と言っても、心当たりは夢の中だけなんだけれど
コスプレをした俊が出てきて・・・それで
「だけど、どうして一人で東京に出てきたんでしょうね?仕事もしないで、絵なんて売って・・・」
「んー・・・特に考えた事なかったけど」
「何か事情がありそうですけどね」
真菜の目が光る
「じ・・・事情って?」
「例えばぁ~女とかv」
柳の頭が真っ白になった
「・・・興味ありそうに見えないけど」
「そういう人に限って、いるんですよ~そういう相手v」
確かに、彼の口からそんな存在の話は聞かされてはいない
てっきりいないと思っていたが、いるという可能性もある
それ以来、また柳は仕事に手がつかなくなってしまった

Plllllllllllllll
『留守番電話サービスセンターに接続します・・・』
俊は、溜息をつきながら電話を切る
「・・・・・・・・・・・・また、かけてんのか?」
「先輩・・・」
「もう、諦めたらどうだ?」
「・・・・・・・・・・・何かすっきりせぇへんのですよね」
「那美ちゃん探しに来て・・・もう半年か」
「・・・・・・・・・・ここら辺におる思うてたんですけど」
「もう、お前の事忘れてるのかもしれないぞ?」
「・・・・・・・・・・・・・それでも信じてるんですよ。馬鹿ですよね」
「一途だなぁ。お前は」
俊は、携帯にぶら下がるチェーンに通した指輪を見てまた一つ溜息をついた

女・・・女・・・女・・・
柳は、それだけが気になっていた
気になりながら、またあの商店街に辿り着く
(・・・・・・・・・・・・・聞いてみようかな。確かに気になってはいた事だったし)
もしかしたら、知らない間に大阪に帰ってしまうかもしれないのだ
そんなのは嫌だ
「いらっしゃ~い。お客さんv」
俊は、いつもの笑顔で出迎える
「今日のお薦めは、一枚1500円のカサブランカや。どうや?」
「俊。何であんた定職につかないのよ?」
柳はため息をつきながら、切り出す
「は?何やねん。そんな急に」
「・・・・・・・いや。あんたの未来を心配してるのよ」
「ああ。俺、その内大阪帰るから、心配せんとき」
その言葉に、柳はギクリとなる
「・・・・・・帰るの?」
「ああ。実家が商店やさかい。その気になれば、継げるやろ」
「・・・・・・・・・・じゃあ・・・じゃあ、何で・・・」
「ん?」
「何で、東京に・・・・・・・・?」
俊の表情が曇った気がした
「・・・・・・・お前にまだ話してない事があったか」
「え・・・」
俊は、携帯を取り出した
「・・・・・・・・・・・・・・・上京した婚約者探しにな」
目の前が真っ白になる
「・・・こ・・・んやくしゃ・・・?」
「半年前にぷっつり失踪してもうたんや。東京に行くて書き置き残してな。連絡もつかんで・・・俺、このままじゃ納得いかなくて上京したねん。幼馴染の女でな。妹亡くした時も俺が暴走族になった時もずっと傍にいてくれた・・・俺が一番分かってるから護りたい思うとったのに・・・何も言わずになぁ・・・」
俊が語りかけてくれているのに、何も答えられない
「いつかこの商店街通ってくれたら思うて、駅前に店構えたんやけど、無理やな。寄ってくるんは、女子校生だけや」
「・・・・・・・・・・・・・そう・・・なんだ」
やっとしぼり出た言葉
震えていたのが分かる
携帯に提げられた指輪が空しく光る
「・・・・・・・・・柳?」
「ごめん・・・急用思い出して。帰るね・・・」
「・・・・・・・・・・・・おい」
柳は、駆けだした足を止めた
「俊・・・」
「ん?」
「見つかるといいね・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「その子・・・」

もう会えない
そう誓った
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