太陽に咲く秋桜

「おはよう~」
「おはよう、美朱!!」
「よく眠れたか?」
「んー・・・緊張しちゃってあんまり眠れなかったなぁv」
「無理もない。しっかり食べて体力をつけておけよ」
「それは大丈夫!!あたしの特技だもぉん♪」
「どうやら心配は無用のようなのだ」
「そういえば、柳宿さんと翼宿さんの姿が見えませんね」
「何だよ、あいつら~昨日はあんなにはしゃいでたのに」
「あたし、呼んでくるね!!」
朱雀の巫女・夕城美朱は、翼宿の部屋を訪ねた
「翼宿~起きてよ!!お昼から朱雀召喚が始まるんだから、七星士はもう儀式の場で準備しておけって・・・」
扉の向こうから呼びかけるが、返事はない
「あれ・・・?翼宿ー?入るよ?」
その瞬間、美朱の叫びがこだました
そこには、青い顔をして倒れている翼宿と柳宿の姿があった

俊と柳は、オフィスから駅までの道を歩いていた
俊はバイクを引きながら、歩道を歩いている
バイクの後ろに陽気に乗せてやるなんて言えない状況だからだ
柳は、まだ俯いている
「明日、大丈夫なんか?」
「・・・・・・・・・・・・分かんない」
「休んでもえぇんやないか?」
「だけど・・・みんなにどうしたのか聞かれるし」
男は卑怯だ
女はプライドをズタズタに引き裂かれても、男は何食わぬ顔で過ごせるからだ
「あたし・・・・・・・・・・・もう、どうしたらいいか分かんない」
涙がとめどなく溢れてくる
俊も、かける言葉が見つからない
駅に着いてしまった
「・・・・・・・・・・・一人で帰れるんか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
何も答えない
溜息をつく
時間を見ると、夜の19時
「・・・・・・・・・・・・・・家来るか?」
その言葉に、柳は顔をあげた
「え・・・でも・・・」
「今日のお前は電車に乗るんも一人になるんも怖いんやないんか?」
俊は思った
今、自分にしてやれる事は柳の傍にただいてやる事だけだと
「・・・・・・・・・・・でも」
柳は手を引かれた
「しっかり捕まっとけ」
俊のエンジンが唸る

ガチャ
とある小さなアパートに到着
「すまんな。今日、人来る思わなかったから片付けてへん」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ううん」
しかし、足が進まない
「・・・・・・・・・・・・俺も怖いん?」
見上げると、彼の寂しそうな顔
私はなぜか知っていた
この人は・・・・・・・・・・・絶対にそんな人じゃないと
どんなに暴走族帰りのような格好をしていても
「・・・・・・・・・・・ううん」
俊は微笑んだ
「何か軽いもん作るから、くつろいどって」
彼の笑顔を見て、なぜか安心する自分がいた

部屋の中には、たくさんの絵が飾られていた
全部、俊の自作だった
「凄いね・・・」
「でもそいつら、本当に金に困ったら売るつもりやで」
俊は陽気そうに語る
「・・・・・・・・・・いいね。こんな風に自分の好きな事に囲まれてるなんて」
「いやぁ?その為に捨てるもんはたくさん捨てたで」
「え?」
「俺もお前も同じ人間っちゅうこっちゃ。そんなに境遇は変わらん」
最近は、当たり前のように語る俊に尊敬の念さえ抱くようになった
「あんたは強いんだね・・・あたしなんかよりずっと」
「・・・・・そぉかぁ?」
「あたしは、益々自信なくしちゃった」
自分の立場を理解していなかった
だから、きっと襲われたんだ
「お前は悪くないやろ。十分気張って頑張ったやろ・・・・・・・男っちゅーんは、汚い生き物やからな」
まるで、自分も経験があるかのような発言
「俊?」
「すまんな。何か湿っぽいムードにしてもうて」
「ううん・・・嬉しい」
今までの自分なら、一人で耐えようとしていた
だけど、今は違う
「本当にありがとう。あんたがいなかったらあたし・・・」
そこまで言って、言葉を止めた
「・・・・・・・・・・・・・ごめん」
「何で謝んねん」
「重いわよね。あたし・・・」
「いや?つーか、慣れてるし」
慣れてる?
以前も面倒見てくれていたような言い方だった
「・・・・・・・・・・・・俺は、昔妹を亡くした」
「え・・・?」
「俺なぁ、ホンマに妹に冷たい兄やったんや。結構な遊び人やったからな。やけど、妙に人懐っこくついてきよったねん、あいつ」
「・・・・・・・・・・・へぇ」
「当時・・・俺が絡んだ暴走族に俺が昔から大事にしとった首飾り盗まれた時、あいつごっつ怒ってなぁ」
『何で俊の大事にしてるもんを、取られなあかんの!?俊は絡まれてた子供を助けただけやん!!』
「何とか取り返してもろた。これがその首飾りや」
見ると、俊の胸元に光る朱色の玉の首飾りが見えた
「どうやって・・・取り返したの?」
「・・・そいつらの元に妹が乗り込んで・・・散々好き放題にされて・・・奴らのアジトから身投げしたわ」
その場に凍てついた空気が流れる
「やけど、あいつの手にはきちんと首飾りが握られていた。好き放題されてる間も・・・ずっと握り締めてたんや。多分、交換条件やて言われたんやろな。やけど、返せ言われたんやろ・・・」
「俊・・・」
「俺は・・・・・・・・・・・・間に合わなかった。奴らのアジトの下で血流して倒れてる妹を見つけたんや」

『・・・・・・・・・・・・な・・・なんで・・・や』
『・・・・・・・・・俊・・・・・・・』
『・・・・・・・・・・・・・麗・・・!!』
『来て・・・くれ・・・たん・・・?』
『しゃべるな・・・今、医者呼ぶさかいに!!』
『あかん・・・それより・・・あいつらの事捕まえたってや・・・』
『え・・・?』
『俊の事・・・偉い嫌うとる・・・このままやと、あんたもやられてまうから・・・だから・・・』
『麗・・・』
『ごめんなぁ・・・ウザい妹で』
『んな・・・んな事ないっ・・・』
『取り返したで・・・』
『・・・・・・・・・・・・・っ!!』
『なぁ・・・俊はいつまでも笑っておってね?俊は・・・あたしの自慢の兄貴やさかい』
『・・・・・・・・・・・ああ・・・分かった・・・・・・・・・・・・・分かったで。・・・・・・・・・・・・俺、今度こそお前を護り抜くから。だから・・・・・・・・・・・お前も俺の傍におれ・・・・・・・・・・・・・ずっと・・・・・・・・・・・・・・・・・』

俊は、溜息をつきながら胸元を整える
「これ、俺に男教えてくれた師匠にもろたもんなんや。俺の一番大事なもんやて、あいつ知ってたから・・・」
「俊・・・」
柳の涙は止まらない
「で、俺は友達の暴走族に入って、妹の敵打ちにその暴走族を倒しはったんや」
「・・・・・・・・・そうだったんだ」
では、なぜ今一人で東京に来る気になったのか
「・・・・・・・・・・・何で、お前にこんなん話してるんやろなぁ。ますます湿っぽくなってまうわ・・・」
「ううん・・・・・・・・・・・・・・・ごめんね。そんな辛い過去があるのにあたし・・・」
「謝んな。やから、今日はお前を助けられてよかったわ」
「・・・・・・・・・・・・俊。あたし、明日会社行くよ」
「え・・・?」
「負けてらんないわよ。好き勝手な男の思い通りになってたまるもんですか」
その時、俊の笑顔が咲いた
「・・・・・・・・・・・・・・・それでこそ、柳やなv」
だけど、おかしい
今の話・・・・・・・・・・・・・初めて聞いた気がしないのだ

『・・・・・・・・・ねぇ。あんた、何で山を離れたくなかったのさ?』
『何やねん。別にどうでもえぇやんか』
『何か山賊稼業の他にも、大切な思い出があるみたい~』
『・・・・・・・・・随分勘がえぇ女やな・・・・・・・・・・・・・・そうや。あっこには俺が妹のように可愛がってた女がおった』
『へぇ・・・』
『やけど、この鉄扇護る為に死んでしもた』
『え・・・?』
『やけど、そいつとそん時約束したんや。きちんと巫女守って、朱雀七星士として働くて』
『翼宿・・・』
『だから、名残惜しかったんやろなぁ。そいつから離れるいうんが』
『・・・・・・・・・・・・・・・・意外に熱い奴なのねぇ、あんた』
『へ?』
『あたしと気が合いそうじゃないv』
そうだ・・・・・・・・・・・・・翼宿と初めて会った時、二人きりでかわした会話の中で・・・
え・・・翼宿?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・その名前は何?
あたし、何を思い出そうとしているの・・・?
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