太陽に咲く秋桜
リリリリリリリリ
秋の夜長と呼んで当然のように、秋の夜は深い
鈴虫の声と公園の電燈だけがうすぼんやりと闇を照らしている
「ほれ」
俊は、近くのコンビニで買ってきたあんまんを柳に渡す
「・・・・・・・・・・・・本当につられて来たみたいじゃないの」
「だって、そうやろ」
「あたしはぁ!!口紅返して貰う為にここまで来たの!!」
彼の胸ポケットに、まだそれは忍ばされている
「写生終わったら返すから、大人しいにしとけ」
「あのねぇ!!本気であたしは明日のプレゼンの準備しないといけないの!!」
「ふーん」
「馬鹿にしてんの!?あんたは!!」
彼は、無視して白いキャンパス台を取り出す
絵の具の蓋を口で開け、パレットにそれを垂らす
色は紫
「・・・・・・・・・何描くのよ」
「秋桜や」
「・・・・・・・・・・・・・秋桜?」
「あそこに咲いてるやん」
暗くてよく見えなかったが、目が慣れてくると公園の噴水の麓に小さな小さな秋桜が咲いていた
「変なトコに咲くもんやな。気になっててん」
「あんた、よくここに来てるの?」
「まぁな。大体写生スペースはここや」
「女子高生に頼まれて、小鳥描いたのもここ?」
「・・・・・・・まぁな」
「モテんのね~商店街中の妬みの的じゃない」
「そんなん関係あらん。俺は絵を売りたいんや」
「ふーん・・・」
彼の指に導かれるように、キャンパスに色はついていく
「・・・・・・・・・・・・・何で、あたしを連れてきたの?」
その横顔に問う
「写生なんて、人がいるだけで邪魔じゃないのよ。一人でゆっくり描きたいでしょ?あたし、基本黙ってるの嫌いなんで・・・」
「そのまんま帰りたかったか?」
視線はキャンパスに向いたまま、俊はそう返す
「・・・・・・・・・そのまんま帰ったら、お前危ない方向行くやろ」
「・・・・・・・・・っ・・・」
「仕事とかプライドとかこだわる奴は、そこが怖いねん」
「・・・・・・・・・・・・・・・・何よ。あんたに関係ないでしょ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そのまま、沈黙
「・・・・・・・・友達おらんの?」
「ばっ!!!!失礼な奴ねぇ!!あんたより一年これでも多く生きてるのよ!?」
「ほな、やっぱりただの強がりか」
「~~~~~~~~~~~~~っ~~~~~~~~~~~~」
横にあった画用紙で、思いきり俊をぶつ
「だぁ!!何すんねん!!線乱れるやろうが!!」
「あんたこそ、何のつもりよ!?あたしをからかってる訳!?俺は人生読んでるみたいな顔しちゃって!!大体、バイトと社会人じゃ仕事に対する情熱とか厳しさとかの格が違うのよ!!経験もない奴に言われたくないわ!!」
分かっている。これが自分の悪いところだって
誰に対しても心を開けず、自分だけを信じて自分だけ突っ走って
そんな自分が一番嫌いだという事だって分かっていた
「俺は別に・・・・・・・・・お前の気持ちなんぞちっとも分からん」
「え・・・?」
「ただ、そんなちっさい肩に全部しょい込んで今にも潰れそうになるんが怖いから、連れてきた」
(何で、そんなにあたしに構うのよ・・・)
全部見透かされているのに、まだ強がろうとしている自分が情けなく思えてくる
「馬鹿・・・あんたに何が分かるのよ・・・」
涙がボロボロと零れてくる
俊は、ただキャンパスに視線を落としている
「あたしは・・・・・・・・・全然頼りないし落ち着かなくて自己中心的で・・・それなのにチーフ頼まれて・・・責任感じてやってんのよ。でも、報われないの。あたしがやりたい事と会社が求める事が違うから。だけど、そんな事今更言えない。誰かに押し付けたくないから・・・それでも、いつか自分の夢が叶うならと思ってやってきたのに・・・何なのよ。佐々木の奴・・・あたしがそんなに嫌いなら、おじいちゃんに抗議すればいいのに・・・」
「吐き出せるやん」
「え・・・?」
「自分の弱み吐き出せるんやん」
「何言って・・・」
「心配して損したわぁ~」
欠伸をしながら、俊は筆をバケツに入れる
「あんた・・・何企んでたのよ」
そこでハッとなる
自分の話を聞きたいがために、ここへ連れてきてくれたのか
「よし。出来た」
万年筆を取り出す
「・・・・・・・・・・・・・お前、名前は?」
「柴咲柳・・・」
その場で、何かを書きくわえている
「・・・・・・・・・・・・・・・・お前にやるわ。柳」
「え・・・?」
キャンパスを差し出される
「金は取らん。持ってけ」
「だって・・・」
「ご褒美や」
「ご褒美って・・・」
「お前が少し成長したご褒美」
鼓動が鳴る
「俺はその手助けにあんまん奢っただけや。感謝せぇよ~」
片づけを始める俊
彼が書き加えた右下のメッセージ
『To YANAGI From SYUN』
「どうして・・・」
涙がキャンパスに落ちる
それでもすっきりしている自分がいるからだ
「仕事残ってるんやろ?悪かったな」
「・・・・・・・・・・・・そんな事」
「ま、また来いや。何か心配やわ~また潰れてそうで」
彼が悪戯っぽく笑う
ずっと自分を見守ってくれていたかのようなその笑顔
なぜか懐かしく感じた
「ああ・・・後、これ」
口紅を取り出して、柳に渡す
「大事にせぇよ。お前にぴったりなんやからな」
そっとそれを受け取る
「ほな、気をつけて帰れや~そこの入口から出てすぐ駅やから」
俊はそのまま片手をあげて去っていく
「俊!!!!!」
名前を呼ぶ
彼は振り向いた
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ありがとう!!」
俊は微笑むと、もう一度片手をあげて去って行った
嫌じゃなかったんだよ。あんたに話すのが
何だかずーっと近くにいて見守ってくれていたみたいに感じたから
あの日・・・・・・・・・・・・・・・・・何であたしはドキドキしたんだろうね。
秋の夜長と呼んで当然のように、秋の夜は深い
鈴虫の声と公園の電燈だけがうすぼんやりと闇を照らしている
「ほれ」
俊は、近くのコンビニで買ってきたあんまんを柳に渡す
「・・・・・・・・・・・・本当につられて来たみたいじゃないの」
「だって、そうやろ」
「あたしはぁ!!口紅返して貰う為にここまで来たの!!」
彼の胸ポケットに、まだそれは忍ばされている
「写生終わったら返すから、大人しいにしとけ」
「あのねぇ!!本気であたしは明日のプレゼンの準備しないといけないの!!」
「ふーん」
「馬鹿にしてんの!?あんたは!!」
彼は、無視して白いキャンパス台を取り出す
絵の具の蓋を口で開け、パレットにそれを垂らす
色は紫
「・・・・・・・・・何描くのよ」
「秋桜や」
「・・・・・・・・・・・・・秋桜?」
「あそこに咲いてるやん」
暗くてよく見えなかったが、目が慣れてくると公園の噴水の麓に小さな小さな秋桜が咲いていた
「変なトコに咲くもんやな。気になっててん」
「あんた、よくここに来てるの?」
「まぁな。大体写生スペースはここや」
「女子高生に頼まれて、小鳥描いたのもここ?」
「・・・・・・・まぁな」
「モテんのね~商店街中の妬みの的じゃない」
「そんなん関係あらん。俺は絵を売りたいんや」
「ふーん・・・」
彼の指に導かれるように、キャンパスに色はついていく
「・・・・・・・・・・・・・何で、あたしを連れてきたの?」
その横顔に問う
「写生なんて、人がいるだけで邪魔じゃないのよ。一人でゆっくり描きたいでしょ?あたし、基本黙ってるの嫌いなんで・・・」
「そのまんま帰りたかったか?」
視線はキャンパスに向いたまま、俊はそう返す
「・・・・・・・・・そのまんま帰ったら、お前危ない方向行くやろ」
「・・・・・・・・・っ・・・」
「仕事とかプライドとかこだわる奴は、そこが怖いねん」
「・・・・・・・・・・・・・・・・何よ。あんたに関係ないでしょ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そのまま、沈黙
「・・・・・・・・友達おらんの?」
「ばっ!!!!失礼な奴ねぇ!!あんたより一年これでも多く生きてるのよ!?」
「ほな、やっぱりただの強がりか」
「~~~~~~~~~~~~~っ~~~~~~~~~~~~」
横にあった画用紙で、思いきり俊をぶつ
「だぁ!!何すんねん!!線乱れるやろうが!!」
「あんたこそ、何のつもりよ!?あたしをからかってる訳!?俺は人生読んでるみたいな顔しちゃって!!大体、バイトと社会人じゃ仕事に対する情熱とか厳しさとかの格が違うのよ!!経験もない奴に言われたくないわ!!」
分かっている。これが自分の悪いところだって
誰に対しても心を開けず、自分だけを信じて自分だけ突っ走って
そんな自分が一番嫌いだという事だって分かっていた
「俺は別に・・・・・・・・・お前の気持ちなんぞちっとも分からん」
「え・・・?」
「ただ、そんなちっさい肩に全部しょい込んで今にも潰れそうになるんが怖いから、連れてきた」
(何で、そんなにあたしに構うのよ・・・)
全部見透かされているのに、まだ強がろうとしている自分が情けなく思えてくる
「馬鹿・・・あんたに何が分かるのよ・・・」
涙がボロボロと零れてくる
俊は、ただキャンパスに視線を落としている
「あたしは・・・・・・・・・全然頼りないし落ち着かなくて自己中心的で・・・それなのにチーフ頼まれて・・・責任感じてやってんのよ。でも、報われないの。あたしがやりたい事と会社が求める事が違うから。だけど、そんな事今更言えない。誰かに押し付けたくないから・・・それでも、いつか自分の夢が叶うならと思ってやってきたのに・・・何なのよ。佐々木の奴・・・あたしがそんなに嫌いなら、おじいちゃんに抗議すればいいのに・・・」
「吐き出せるやん」
「え・・・?」
「自分の弱み吐き出せるんやん」
「何言って・・・」
「心配して損したわぁ~」
欠伸をしながら、俊は筆をバケツに入れる
「あんた・・・何企んでたのよ」
そこでハッとなる
自分の話を聞きたいがために、ここへ連れてきてくれたのか
「よし。出来た」
万年筆を取り出す
「・・・・・・・・・・・・・お前、名前は?」
「柴咲柳・・・」
その場で、何かを書きくわえている
「・・・・・・・・・・・・・・・・お前にやるわ。柳」
「え・・・?」
キャンパスを差し出される
「金は取らん。持ってけ」
「だって・・・」
「ご褒美や」
「ご褒美って・・・」
「お前が少し成長したご褒美」
鼓動が鳴る
「俺はその手助けにあんまん奢っただけや。感謝せぇよ~」
片づけを始める俊
彼が書き加えた右下のメッセージ
『To YANAGI From SYUN』
「どうして・・・」
涙がキャンパスに落ちる
それでもすっきりしている自分がいるからだ
「仕事残ってるんやろ?悪かったな」
「・・・・・・・・・・・・そんな事」
「ま、また来いや。何か心配やわ~また潰れてそうで」
彼が悪戯っぽく笑う
ずっと自分を見守ってくれていたかのようなその笑顔
なぜか懐かしく感じた
「ああ・・・後、これ」
口紅を取り出して、柳に渡す
「大事にせぇよ。お前にぴったりなんやからな」
そっとそれを受け取る
「ほな、気をつけて帰れや~そこの入口から出てすぐ駅やから」
俊はそのまま片手をあげて去っていく
「俊!!!!!」
名前を呼ぶ
彼は振り向いた
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ありがとう!!」
俊は微笑むと、もう一度片手をあげて去って行った
嫌じゃなかったんだよ。あんたに話すのが
何だかずーっと近くにいて見守ってくれていたみたいに感じたから
あの日・・・・・・・・・・・・・・・・・何であたしはドキドキしたんだろうね。