太陽に咲く秋桜

PiPiPiPiPiPi...
「・・・・・ん」
そっと目を開けると、目覚ましの音が聞こえてくる
「・・・・・・・・・・・うっさい」
そのまま目覚ましに手をのばし、音を止める
「・・・・・・・・・・・・・朝か」
カーテンの隙間から日差しが漏れているのが見える
「あーあ。昨日飲んだくれて、そのまま寝ちゃったのねぇ」
足元にはビールの缶が散らばっている
「シャワーだけ浴びるか」
その女性は、紫の髪の毛をかきあげて浴室に向かった

「おはようございまーす」
「おはようございます、柳さん!!今日の取引先との時間と場所の確認なんですが・・・」
「あーもう昨日確認したから、平気よ!!」
「そんな事言って、昨日の取引の時、今日の取引先に間違って行ったでしょう?みーんなばれてますよ」
「げ・・・ばれてた」
「これは、「YANAGI」ブランドを他会社に売り込む大事な機会なんですから、チーフのあなたが間違えてどうするんですか!!」
「わーってるわよ!!さぁ、店開けるわよーみんな配置についたついた!!」
スーツに身を包んだ従業員が、客を出迎える準備をする

紫咲柳(しばさき やなぎ)25歳
大手ブランドの支店「YANAGI」のチーフを務めるキャリアウーマン
埼玉で祖父が社長をしている会社の支店であるこの「YANAGI」には、様々な洋服や服飾などOLの年齢層を狙った商品がたくさん揃っている
売上は順調に伸びていて、もうすぐオープンする街の「PAL」というデパートに移転する事も決まっている

「柳さん・・・昨日も飲んだんですか?」
「何で分かるのよっ!?」
「メイクがちょこっとよれてますv」
「・・・今朝シャワー浴びてきたからだわ」
「ストレス溜まってそうですもんね~昨日も遅くまで残業してましたし」
「だからこその一人酒よ、分かる?」
「すみませ~ん」
「「はーい、ただいま!!」」

「お疲れ様でした~」
「柳さん!!今度、一緒に飲みましょうね!!」
「覚えてたらね~vお疲れ様~」
チーフの柳は、このように毎日残業で遅くまで取引先との取引をレポートにまとめている
「柳宿さん・・・」
「ああ。田中君。お疲れ様」
「あの・・・昨日の返事」
「ごめん。あたし、当分彼氏作る気ないんだ」
「・・・・・・・・・そうですか」
「あんたいい男なんだから、もっと他にいい女が見つかるわよv」
「・・・・・・・お疲れ様でした」
「お疲れ」
肩をがっくり落として帰る部下
そう。昨日、丁度この時間に告白されたのだ
返事は明日まで待ってくれと、柳は保留を頼んだ
まぁ、結果、真剣に考えていた訳でもなく酒で憂さ晴らししてそのまま雑魚寝
「・・・・・・・・・・・タイプじゃないのよね」
最初から考える気でもなかった
ただ、あくまで考えたフリをしただけ
「それに、あたしにはでっかい夢があんのよ」
いつかオリジナルのブランドを立てる事
祖父の後継ぎのつもりで就いたこの会社だけれど、いつか自身がデザイナーになって、自身のブランドを立ちあげる為だった
勿論、誰にも聞かせるつもりはない
その時が来るまでは
「さて・・・と。帰りますか」
そのまま、デスクの電気を消す

「あー・・・卵切れてたんだった」
駅に近づくと、そんな事を思い出す
「めんどくさ~・・・駅通り過ぎなきゃいけないのよね」
この駅の最寄のスーパーは、駅を挟んで会社と反対側の位置にある
面倒な位置にあるので、買い物は週末にまとめてしていたのだ
「あ・・・でも、ここを通ると少し近い筈」
少し細い路地に曲がると、そこに小さな横断歩道があるのだ
そこから回り道していこうと考えたのだ
♪♪♪
その時、メールの着信
「まーた、佐々木?」
朝に取引の件でうるさく言ってきた佐々木から、メールだった
この男は、普段から何かと絡んでくるのだ
自分の次に役職を任されている男だから、無視出来ないのが現状だが
溜息をつきながら、携帯を開く
ブロロロロロロロロ
余所見をしていた為、自分に近づくバイクの音に気付かなかった
キキキキキキキィ
「え・・・・・・・・・・・・・・・・」
ドンッ
バイクが物凄い勢いで、自分の脇腹を掠めた
そのまま、反動で倒れる
痛みを感じて、掌を見ると鮮血
「なななな・・・・」
しかし、意識はある
「ドアホ!!!!!!どこ見て歩いてるんや!!!!!」
自分を避けた反動で、柵にもたれたバイクに乗っていたヘルメットが怒鳴る
「な・・・何よぉ!!!こんな小さい路地で、スピード出してる方が悪いんでしょ!?」
柳は、そのヘルメットに向かって怒鳴りつける
「いった・・・たたた・・・」
怒鳴った反動で、脇腹が痛む
「怪我・・・・・・・・したんか?」
「・・・・・・・・ちょこっと出血しただけ。こんくらい平気よ・・・」
「平気な訳ないやろが。見せてみ」
ヘルメットを外した青年と目が合う

・・・・・・・・・・・・あ・・・れ・・・?こいつ、どこかで・・・

橙色の髪型に、三白眼。少しむき出しの犬歯。どこから見ても暴走族帰り風の青年
珍しい髪色なので、どこかで見かけた誰かと勘違いしているのかもしれないが
何だか大事なものを思い出させられるような感覚に陥った
そのせいで、言葉を失った柳
自分の脇腹にタオルが巻かれた事に気づいたのは、その少し後だった
「な・・・何してんのよ?」
「一応、病院行った方がえぇな」
「・・・え?」
「ひき逃げ犯やて通報されると、こっちが迷惑やし・・・連れてったる。乗れや」
「はぁ?大丈夫よ・・・一人で歩ける・・たたっ」
よろけた柳の鞄をひっつかむと、青年は柳の手を引いた
「ちょっと・・・何すんのよっ・・・」
「やから、連れてく言うてるやろが」
「あんた、どこの何者!?」
「はぁ?そんなん後や後!!」
背中にがっちり固定された時、微かに感じた香水の香り
どこかで・・・・・・・・・・・・・どこかで、こいつと会った?
だけど、思いだせない

「軽い打撲と出血ですね。しばらく走ったり無理をしないように」
「はい・・・ありがとうございます」
柳は、診察を受けて待合室に戻った
待合室には、事情聴取に来た警察に青年が事情を聞かれている
「・・・柴咲柳さんですね?お怪我の程度はどうでしたか?」
「はい・・・軽い打撲と出血ですみました」
「あそこの路地は、結構事故が多い場所ですから気を付けてくださいね。二人とも」
「はい・・・」
「君の名前は、陽山俊。24歳か・・・フリーターかい?」
「はい・・・バイク屋でバイトした帰りでした」
「君もあまりスピードを出して走らないように」
「はい。すんません」
「あの・・・あたし、もう帰ってもいいですか?」
「ああ・・・失礼。お気をつけて帰ってくださいね」
「はい・・・」
そのまま、青年には目を合わさず柳はその場を後にした

「何よ何よ何なのよ!!!最悪!!あんな不良とぶつかって怪我負わされるなんて!!!」
病院を出た途端、地団駄を踏んで叫ぶ
「もう23時じゃないの!!あー・・・明日のレポートまだ残ってるのに」
「・・・・・・・・・・・・・そんなに騒いだら、傷に響くやろが」
「んなっ!?」
振り返ると、病院の入口にあの青年の姿
「何よ!!あんた、もう事情聴取終わったの!?」
「まぁ、単なる接触やしなぁ」
「単なるって・・・あたしは、これで明日の朝寝坊しても走ったり出来なくなったのよ!?致命傷じゃない!!それにお客様の前で綺麗な姿勢を保つ事も、これで難しくなるじゃないの!!」
「だから、すまんて。詫びも兼ねて、ここまで連れてきたやろ」
「ま、もう手当も終わったし、あんたとは金輪際関わらないでしょ。さようなら!!」
「や。ちょう待てや」
「まだ、何かあんの!?」

「俺ら・・・・・・・・・・・・・・・・どこかで会ってへんか?」

その質問に、柳は言葉を止める
「・・・・・・・・な・・・何よ?どういう意味・・・」
「俺、お前と会ったの初めてやない気がする」
ズキッ
思い出そうとした途端、頭痛が走った
「いたっ・・・」
「おい・・・」
「んもうっ!!知らないってば!!新手のナンパか何かなら、あたしは当分お断りよ!!」
そのまま、痛みを振り切るように柳はその場を後にした
しかし、柳の鼓動は速かった
なぜだろう
まるで、やっと出逢えたと言わんばかりの感覚

まだ、知る由もなかった
自分たちがその昔、この世界とは違う世界で共に戦い愛してしまった七星士の転生した姿同士であるという事を
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