太陽に咲く秋桜

「どうなっとるんや・・・これは」
「あたし達・・・どうしてこんな所に?」
初めて見る日本の風景に、二人は開いた口が塞がらなかった
「確か・・・朱雀召喚の儀式の前夜に記憶を失って・・・それから覚えてない」
「おいっ・・・朱雀召喚て・・・今、いつなんや!?とっくに儀式の日なんぞ過ぎて・・・」

「正確には、後三時間じゃ」

二人は、時計塔のてっぺんを見上げた
「あ・・・・・・・・・・・・
「砂カケばばあ!!!!」
ゴン
「転生しても、相変わらず中身は変わってないようじゃな」
「太一君・・・どうして、ここに・・・?あたし達は・・・転生って・・・?」
「とにかく、場所を変えよう」

柳宿、翼宿、太一君はあの公園に来ていた
「・・・・・・・・転生って・・・美朱がいたこの世界にあたし達が来てしまった訳!?」
「まあ、平たく言えば、そういう事じゃ」
「冗談やないっ!!はよう、元の世界に戻らな・・・朱雀召喚が出来ひんやないかっ!!」
「まあ、落ち着け。本来、こちらの世界の時間はあちらの世界の時間よりも遅く設定されている筈なのだが・・・お前らが転生した歪で、こちらとあちらの世界の時間感覚が逆転してしまったようなのじゃ」
「・・・・・・訳分かんない。何で、あたし達が・・・?」
「美朱がこちらとあちらへ転生を繰り返した事による、バグか何かじゃろう。元々は柳宿。お前だけが被害に遭う筈じゃった」
「あたしだけが・・・?」
「それがなぜ・・・こんな脳なしまでもが一緒に着いてきてしまったのじゃろう・・・」
「脳なして・・・ババア!!若さを僻むのもえぇ加減にせえ!!」
「翼宿!!ちょっと黙ってて!!」
「・・・・・・・・・・・・はい」
「翼宿。なぜお前まで着いて来てしまったか分かるか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・分からん」
「あっちで、何かしたじゃろう」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
翼宿の顔がみるみる赤くなっていく
「あ。黙った」
「とりあえずじゃ。こちらの世界でのタイムリミットは、一週間じゃ。それまでにお主らがどうするか、じっくり考えるんじゃな」
「どうするかなんて・・・当然あっちの世界に戻るに決まってるじゃない」
「普通に考えればそうじゃ。ただな。お前らがこの世界にいる限り、柴咲柳という人間と陽山俊という人間が実在しておるのじゃ。お前らがあちらの世界に戻れば、この世界にその二人が存在していた事自体消えてしまう事になる」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「やっと、柳の夢が叶ったんじゃ。その事実すら消える事になるのじゃぞ」
「それは・・・」
「よく考えろ。お前と柳、二人の問題なのだぞ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「こちらの世界にいる間は、日本での知識も技術もそれ相応にその体には備わっておる。翼宿。お前もそうだろう?」
「・・・・・・・・・・あれがバイクっちゅーもんやて、分かったからな。あっちの世界にはあんな機械あらへんし」
「こっちの世界では、デリカシーがある人間になってるようじゃしな」
「何や、それ!!向こうではまるで、デリカシーないみたいやないか!!」
「・・・・・・・そうでしょ」
「そして、この世界での人間としての記憶もまだきちんと残っている。ただ単に、自分達が朱雀七星士の柳宿と翼宿だという記憶だけが戻っただけなのだからな」
頭がパンクしそうだ
太一君は、また来ると言ってその場から姿を消した

「・・・・・・・・・・・・どないすんねん」
「・・・・・・・・・・・そんな事言われたって」
「今、大事な事は分かってるやろ?」
「分かってるけど・・・」
「やけどな。お前が賞取ったて聞いて・・・俺も死ぬほど嬉しかったんや」
「翼宿・・・」
「お互いの問題や思うて、今夜は家で色々考えようや」
柳宿の記憶を持った柳は、黙って頷いた

「・・・・・・・・・・・偉い事になったなぁ」
翼宿の記憶を持った俊は、自宅に着いた
「俺すらも、この世界に未練あるみたいやし・・・何なんや。この気持ちは」
カタン
郵便受けを覗くと、何か封書が入っている
見ると、大阪の実家からだった

「俊。元気にやっているか?
那美ちゃんと別れた事聞いたぞ。でも、きちんと大阪に戻ってきたから、安心しろ。
絵の方はどうだ?あんなの売れているのか?
いつか、日本中を駆け巡って写生したいって言っていたもんな。
そんなお前に朗報だ。大阪の美術協会から連絡があってな。
お前の作品を美術協会で売り出したいそうなんだ。
まずは、市内の個展に一作出してほしいらしい。優勝すると、世界の個展進出だ。
帰ってこないか?」

夢の到来。今、この時期に・・・
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