太陽に咲く秋桜

『柳宿・・・美朱と翼宿の世話同時に大変なのだ。おいらが代わるので、今夜は早く休んだ方がいいのだ』
『井宿・・・大丈夫よ。今日は、これであたしも休めるから』
『本当・・・感謝してるのだ。君も、無理だけはしないように』
『ありがとう』
鬼宿は、まだ元に戻らない
柳宿は、未だ一人で傷ついた体の翼宿と傷ついた心の美朱の二人の面倒を交互に見ていた

『さてと・・・後は、星宿様に今日の報告をして・・・』
柳宿は、星宿の執務室に向かっていた
すると、向かい合った後宮からはこんな声が聞こえてきた
『ねえ・・・鬼宿さんが青龍側の味方についたんですって』
『まあ・・・信じられない。紅南の命運を背負っているというのに・・・』
柳宿は、眉をひくつかせた
(また、あいつらね・・・)
以前に、翼宿の文句を言っていた女官だった
『あら・・・聞こえてました?柳宿さん・・・いえ。康琳』
『あなたも大変ですわね。後宮にいれば華やかな暮らしが続いたのに・・・』
彼女らの目は、明らかに憐れむような眼差し
『・・・るさいわね。僻みもいい加減にしなさいよ』
『同情しているのよぉ。頼りない七星の面倒見てばっかりで、戦争はちっともおさまらなくて全然手柄がない柳宿さんに』
『私、朱雀七星じゃなくて本当によかったわ~』
『せいぜい頑張ってくださいまし。お体にお気をつけて』
そう言って、笑いながら女官は去って行った

『何よ何よ何なのよぉーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!』
ドッカーーーーーーーーーーーーーン
柳宿は、宮殿の裏の大木で一発やってしまった
『あたしが・・・朱雀七星のお手伝いさんだとでも言いたい訳・・・?あたし達は国を護ってない訳!?』
確かにそうかもしれない
そう叫んだ瞬間、同時にそんな思いが込み上げてきた
『報われない・・・・・・・・・・・・・・・・鬼宿も戻らないし・・・翼宿も美朱も弱って・・・そして、国はどんどん荒んでいって・・・』
雨粒が落ちる
手柄なんてどうでもいい
自分の行動の見返りなんて求めない
それが自分のポリシーだった
だけど・・・結局、国なんてでっかい命運任されてる身としてはかなりきついのだ
『・・・・・・・・・・・・・・・あたしは、馬鹿?』
頬に、雨粒があたる
『・・・・・・・・・・・・・・・・柳宿!!!!』
ふと、正面から声が聞こえた
顔をあげると、翼宿が杖で体を支えながら立っていた
『何やっとるんや!!雨降ってるのに・・・こんなトコで』
『翼宿・・・あんたこそ、何してんのよ・・・まだろくに歩けないのに・・・』
『お前の吠える声が聞こえてきたから・・・心配になって』
『翼宿・・・・・・・・・・・・みんな元に戻るのかな?』
『・・・・・・・・・・え?』
『・・・・・・・・・・・あたしさ、お手伝いさんみたいに言われちゃった。いつも嫌味言われてるの慣れてるのに・・・あたしは男だから、あんな女たちなんかに負けられないって思ってるのに・・・悔しいよ』
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
『あたしは・・・見返りなんて求めてない。みんなが元気になってくれれば・・・笑ってくれればそれでいいのよ・・・』
涙がボロボロと零れる
『そして、国が平和になってくれれば・・・』
カランカラン
その時、翼宿が痺れた腕を押さえながら柳宿を抱きしめた
『翼宿っ・・・?』
『・・・・・・・・・・・・・・つっ・・・』
『あんた・・・その足でここまで・・・てか、手治ってない・・・』
『大したことないっ・・・』
『大したことって・・・あんた・・・』
『お前をごっつ抱きしめたくなったから・・・・・・・・・・・・・・・えぇんや』
『た・・・』
『・・・・・・・・ありがとな。俺らの為に頑張ってくれて。みんな見てるから・・・一番お前が頑張ってるのくらい』
『・・・・・・・・・・・・っ・・・』
『やけど、力抜けや。お前はお前の不満を思い切り吐いていい・・・いくらでも聞いたるから・・・俺の前ではそんなに頑張るな』
ごめん・・・ごめんね。プライドなんてどうでもいいんだよね
いつだって、こいつはあたしを一番分かってくれているのに

「ん・・・・・・・・・・・・・・・」
温かい布団の中、目を覚ます
自分は、ベッドの上で寝ていた
「あれ・・・あたし・・・」
「起きたか?」
聞き慣れた声に飛び起きる
「しゅ・・・俊!?あんた・・・何で・・・」
「敵わんなぁ・・・俺が来た途端、安心したみたいに床にへばって眠りこけられたら・・・」
「ま・・・まぢでっ!?」
「三日三晩、徹夜やったんやろ?」
「あ・・・」
柳は夢の世界から帰還して、やっと状況を把握した
昨夜、翼宿がひきこもり状態の自分を訪ねてきたのだ
そして、そのまま抱きしめられて・・・
あれ・・・このシチュエーション、さっき夢で・・・
「飯、食うか?」
「あ・・・あたし、会社・・・!!」
「今日、日曜」
「あ・・・そうだったっけ」
「そこら辺、片付けといたで。だいぶ荒れてた」
見ると、家具も全て元の配置に戻っている
床の上に散らかった缶ビールも、綺麗に片付いていた
「あの・・・まさか全部片付けてくれたの・・・?」
「これが女の部屋かと思うほどの凄まじさだったわ」
「・・・ごめん」
「・・・・・・・・・えぇよ。顔洗ってこい」
そういえば・・・婚約者はどうなったの?
彼がいつも通りに笑うので、その疑問は問えなかった

「構想が思い浮かばんのやろ?」
「うん・・・昨日受信したメールで、あたしの案が提出されなかったら、ライバル会社の「Gyokurei」に任せるってプレッシャーかけられちゃって」
「そら、プレッシャーやな・・・」
「・・・・・あたし、もう潰されそうで潰されそうで・・・」
「まぁ、消えてしまわなくてよかったわ」
「・・・・・・・・ありがと。何か心配かけちゃって・・・」
俊は黙っていたが、そっと珈琲カップを置いた
「俺も考えるから、もう一度頑張ってみん?」
「え・・・でも・・・」
「心配で、店出せへんわ」
「・・・・・・・・・・・・俊」
顔が真っ赤になる
ねえ。あんたを求める理由がもう少しで分かる気がするの
自分の中で、何かが息づいているのが分かる
それは、自分ではない「もう一人の自分」のサインなのかもしれない
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