太陽に咲く秋桜

「俊~v帰ってきたんだねぇv」
「三日間お店出してなかったから、本当に大阪に帰っちゃったのかと思って心配したよ~」
今日も、女子高生が群れる商店街の出店
その真ん中には、いつも通りの笑顔で笑う俊の姿
「すまんなぁ。ちと、画材探しに出張やったんや!!」
「とか言って~本当は彼女探しに行ってたんじゃないのぉ?」
女子高生が、きゃあと騒ぐ
な訳ないやろと、俊は今日も絵を売りさばく

「・・・・・・・・・ふぅ。今日も終わった」
夜の10時頃には、店じまいを始める
今日は復帰という事もあって、結構絵が売れた
しかし・・・なぜか来なかったあの女
「連絡入れた方がよかったやろか」
だけど、それも変な話だ
あくまで客の一人であって、わざわざ復帰連絡をする仲でもないのだ
すぐさまその考えを振り払い、画材を全て鞄にしまう
「・・・・・・・・・・・・・・あの」
そこに響いた靴の音
そこには、自分と同い年くらいのショートカットで小顔のOLが立っていた
「あー・・・すんません。もう店しめてもうて・・・また明日の夕方に店出しますんで・・・」
「俊さんですか・・・?」
「はい・・・」
「あの・・・初めまして。私、柳さんの下で働いてる遠藤真菜といいます」
「あ・・・初めまして。その・・・いつも世話になってますっていうか・・・」
「柳さん・・・ここに来てませんよね?」
「・・・・・・・・・・・え?」

「どうぞ」
「ありがとうございます」
とりあえず、近くの喫茶店で話を聞く事になった
「何か奢ってもらっちゃってすみません・・・」
「いえいえ。今日、予想以上に収入あったんで」
俊は、陽気に笑う
「何かあったんですか?」
「柳さん・・・ここ二三日出社してこないんです」
「え・・・?」
「多分、本社からデザイン任されてるから有給取ってるのかと思ってたんですけど・・・今日、本社の・・・柳さんのおじいさまから連絡があって・・・「娘が混乱してるから、助けてやってくれ」って・・・携帯も連絡つかないし、今どんな状態になってるのかと想像すると私怖くて・・・このまま顔を見せてくれなかったら、私たちどうしたらいいのか分からなくて・・・」
そんな事があったのか
何か嫌な予感はしていたのだが
「お願いします・・・俊さんしか頼れる方がいないんです!!」
「柳を・・・連れ戻せばえぇんですね?」
「柳さん・・・私の憧れなんです。中には、お爺さんのコネで入ったって言う人もいるけど、柳さんは本当に実力も美貌も兼ね備えた女性です」
それは分かる
あの秋桜の香りの口紅が全てを語っている

真菜に教えて貰った柳のアパート
「YANAGI」と書かれたお洒落な札がかかっている
だけど、中からは物音ひとつ聞こえない
ピンポーン
しばらくすると、ガサガサと重たい音が聞こえてきた
「・・・・・・・・・・・・どちらさま」
ドアからは、痩せて血色が悪くなった柳が顔を出した
そして、次の瞬間ドアを閉めようとした
「おい、柳!!」
「な・・・何よ、あんた!!大阪に戻ったんじゃ・・・」
「誰が戻る言うたんや!!それより、何一人で閉じこもってるんや!!」
「あんたに関係ないでしょ!?」
俊は、無理矢理ドアをこじ開けた
「こ・・・来ないでっ!!来ないでよ!!」
部屋の中は、荒れた家具、転がる缶ビールで溢れていた
彼女の心の葛藤が目に見える
「お願い・・・帰って・・・」
柳は、そのままふらついた
そんな柳を力の限り抱きしめる
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ・・・・・・・・・・・!!!!????」
「だから・・・・・・・・・・・・・・・・言うたやろが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!」
「・・・・・・・・・・・俊?」
「こうなるんが嫌やったんや・・・俺は」
「何で・・・どうして・・・」
「俺の前では頑張るな・・・・・・・・・・・・・・・・強がらんでぇ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺が護るから」
緊張の糸がプツンと切れた
子供みたいに泣く
彼のジャケットが涙に濡れた

この温もりも、この香りも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ずっと傍にあった
「あたしがあたしでいられる場所」だったんだね
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