太陽に咲く秋桜

カタカタカタカタ・・・
「・・・・・・・・・・・駄目だ。思いつかない」
柳は、パソコンの手を止めた
先程から丸めて捨てたデザイン案は、のべ40作以上
どうしても、集中が出来ないのだ
「・・・・・・・・・・・・恋より仕事じゃなかったのかぁ?柳・・・」
冷蔵庫の中のビールの缶で、頭を冷やす
「・・・・・・・・・・・・あいつ、もう会ったのかな」
あれから三日
もう、彼女を見つけて二人で大阪にでも帰っているだろうか
祝福してあげたいのに、苛々する
「ああっ!!もう!!集中集中!!」
ポロン
その時、一通のメールを受信した
そのパソコンの画面を見て、柳は凍りついた

時を同じくして、丁度その頃
「あの・・・お仕事されてる方ですか?」
「一緒に飲みませんか?私たち、渡瀬商事で働いてるんですけど・・・」
「あ・・・すんません。俺、仕事中じゃないんで」
普通の格好をしていても、ホストに間違われる俊
まぁ、あたりまえだ
この街、歌舞伎町で橙色の目立つ頭をしていれば、嫌でもお声がかかってくる
・・・そう。俊は、歌舞伎町にいた
散々先輩に止められながらも、何とか店の住所を教えて貰った
柳の事だって、勿論気になる
だけど、今の自分にはとにかく那美に会って白黒はっきりさせる事が必要なのだ
「那美・・・」
「おぉ~vMINAちゃんだぁ~v」
「今日も待っててくれたんだね~v」
気色の悪い親父の声が聞こえてくる
その声に、なぜか振り向く
そこには・・・
「那美・・・・・・・・・・・・・・・・」
派手な化粧に、大胆な衣装を着た那美が街頭で勧誘をしているところだった
「おぢさ~んvMINA、会いたかったよvもっと早くお仕事終わらせてきてって言ったでしょ~?」
「んな事言って~MINAちゃん、もうすぐ辞めちゃうんでしょ?おぢさん知ってるんだからさぁ~」
「婚約者のトコに、稼いだ金持って帰るんだってぇ?そんな一途さにおぢさん惹かれたんだけど・・・やっぱり悲しいなぁ~」
その言葉に、ハッとする
「もう~まだ先の話でしょ~?今夜も飲みましょうvね・・・」
那美と俊の目が合う
「・・・・・・・・・俊」
「どうしたのぉ~?MINAちゃん?」
「あ。ごめ~ん。先に店に入って、待っててv」
那美は、そのままゆっくりと俊の傍に近寄る
「・・・・・・・・・・・・・何で、ここに・・・」
「・・・・・・・・・・・お前を探してた」

場所を路地裏に変える
「・・・何で、あんな事しとるんや」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「三カ月間・・・ずっとあそこで働いてたんか?」
「家・・・リストラされたんや。一人娘のあたししか働き手おらんくて・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「だけど、俊とも結婚したかった。やけど、この事言ったら絶対俊があたしの分まで働くとか言いよるやろ?だから、嫌やったんや。重い女になりとうないし、自分の事は自分でやりたかったから・・・だから・・・」
「俺に黙って・・・大阪出たんか」
那美は、黙って頷く
「・・・もう少しでお金が貯まりそうなんよ。だから、もう少しだけ待ってて?必ず戻るから・・・」
俊は、那美を思い切り抱きしめた
「・・・・・・・・・・・・ドアホ」
「俊・・・」
「小さい体で・・・一人で踏ん張るな。何人に傷つけられたんや・・・?」
「だって・・・」
「・・・・・・・・・・那美。大阪に帰れ」
「え・・・?」
「大阪に帰って、ちゃんとした仕事をやれ」
「俊・・・」
「それと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺・・・お前とは結婚出来ん」
「え・・・?」
「嫌いになったとかやないんや。お前は俺にとって妹や。お前を見つけた時にはっきり分かった」
「・・・・・・・何で」
「すまんな。こんなんにさせたんも俺の責任や。俺は、お前の夢を素直に応援していける男になりたいんや」
「・・・・・・・・俊」
「夢は結婚やなくて、美容師やろ・・・?・・・・・・・・・その為に、大阪戻ってまた専門学校通えや」
「・・・・・・・・・しゅ・・・」
「俺のこの変な色の髪、ぶった切ってくれるんやろ?」
俊は、笑った
元の幼馴染に戻る瞬間
今度こそ、彼女の背中を本当の意味で押してやろう

Pllllllllllllllllll
「もしもし?」
『おじいちゃん・・・』
「・・・柳?」
『助けて・・・』
本社にかけられた一本の電話
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