太陽に咲く秋桜

「・・・・・え?」
「本社から、来週行われるファッションショーのデザインを一枚手がけてほしいと直々にお願いが・・・」
チーフデスクの柳の元に、本社の秘書がやってきた
「・・・本社からって、まさかおじいちゃんが?」
「入社して三年目。もうそろそろ孫の腕前を拝見したいという幸三郎様からの伝言を預かりました」
「・・・腕前って」
「凄いじゃないですか、柳さん!!」
「では、一週間後にデザインを受け取りに伺います」
「・・・・・・・・・・・・・ちょっ・・・」
秘書は、そのまま足早にオフィスを出て行った

「柳さぁ~ん」
真菜が、昼休みに一人で屋上にいる柳に声をかけた
「どうしたんですか?せっかく大きな仕事が入ってきたのに、浮かない顔して・・・」
「別に・・・ちょっと考え事してるだけ」
「そういえば、俊さんの件はどうなったんですか?」
「あんたの勘が・・・当たったみたいよ」
「えーーーーーーーーーー!?本当ですか!?」
「さすが若い証拠ね。あたしは何も考えずに関わってたみたい」
「・・・・・・・・・・どうするんですか?柳さん・・・」
「・・・・・・・・・どうするもこうするも・・・もう会えないじゃない」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ただの友達なんだし、あたしの気持ちが揺れてる間は会わない方がいいと思う」
「・・・それはそうですけど・・・」
本当はもっと会いたい。もっと知りたい
本音は、どんどん膨らむばかりなのに

「・・・・・・・・・那美の居場所が・・・分かったんですか?」
「ああ。俺の知り合いが歌舞伎町で見つけたみたいだ・・・」
「・・・・・・・・・・・・歌舞伎町て・・・」
「まぁ、想像通りの仕事をしてるみたいだぜ」
「・・・・・・・・・・・・・」
「だから、言っただろ?東京に染まっちまったんだよ。もうお前の事忘れてるって。関わらない方がいい」
「・・・・・・・・・・・・しばらく、考えてみます」
俊は、休憩室で煙草に火をつけた
那美が見つかった
どうするべきだろうか
会うべきか会わないべきか?

『あんたがどんな姿になったって、あたしだけはあんたの事信じてるから』

自分が暴走族への復讐を決意した日、那美が言ってくれた言葉
それが自分が声をかけられて、生涯嬉しかった言葉
「那美・・・」
携帯を開くと・・・自然と開いていたのは柳の電話番号だった
柳が襲われた日の夜に交換したのだ

Pllllllllllllllllllll
柳の携帯が光る
まだ屋上にいた柳は驚いた
向こうから電話をかけられた事なんてなかったから
『・・・・・・・・・あ。柳?』
「俊・・・どうしたのよ?」
『すまんな。急に電話してしもて』
「別に構わないけど・・・」
『・・・・・・・・・・・相談があって』
「・・・・・・・・・何?」
『婚約者が見つかった』
「・・・・・・・・・・・・え?」
『歌舞伎町で働いてたのを友人の知り合いが見つけたみたいなんや』
「それって・・・」
『俺も信じたくないけどな。どうやらそうらしい』
「どうする気なの・・・?」
『友人には会うな言われた。どんな女になってるかも分からんのに、俺が傷つくだけやて。当たり前やな』
「・・・・・・・・・・・うん」
『やけどな、俺は・・・』
「会いたいんでしょ?」
『・・・え?』
「人に何と言われようと、自分の気持ちを一番大切にしなさいよ。あんたの気持ちだけでも伝える価値はあるんじゃないの?」
『・・・・・・・・・・柳』
「そこで、あんたがどんな決断をしても・・・それはあんたが決めた事なんだからさ」
『・・・・・・・・・・・・せやな』
「しっかりしなさいよ」
『・・・・・・・・・・・・ああ。おおきに。すまんな、柳』
「いえいえ」
電話を切ると、涙が溢れた
どうか・・・・・・・・・・・どうか、幸せに。俊・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

パチン
俊の脳裏には、今、那美の笑顔よりも柳の言葉が深く刻まれていた
そして、そんなさなか掠めた記憶

『・・・・・・・・・・・・俺、美朱を傷つけたやろか』
『何・・・言ってんのよ?』
『俺は、あの鬼宿いう奴が仲間なんぞ絶対認められん。やけど、美朱が愛した男なんやろ?そんな奴に喧嘩吹っ掛けて・・・泣かせてもうた。俺が知らない二人が過去におったのに、横からそれを乱す真似してしもうた気がして』
バチン
『っだああああああ!!怪我人に何すんねん!!』
『あんたの行動は、間違ってない!!』
『・・・・・・・・・・・・へ?』
『あんたの行動は、結果的に美朱を護ったのよ?もっと自分の行動に誇りを持ちなさい。誰だって・・・愛する人が悪に染まって悲しまない訳ないわ。だけど、美朱がその恋人に腕のついでにもっと傷つけられたら、美朱はもっと傷つくことになる。あんたは、それから美朱を護ったのよ。これ以上、美朱が傷つかないように・・・』
『・・・・・・・・・・・・・・・』
『あたしや星宿様は、鬼宿への情があったわ。初めて会ったあんただからこそ、出来た事なのかもしれない』
『柳宿・・・』
『ありがとね。美朱を護ってくれて』

柳と全く同じトーンの言葉が頭に響く
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・柳?」
目覚めるもう一つの記憶
10/30ページ
スキ