Making of the Moon【柳宿side】

『先日、LAのライブハウスで元「空翔宿星」のベーシスト翼宿さんが復活ライブを行いました。観客は国内国外合わせて3000人が招待されました。小さなライブハウスが溢れかえる事態になりました。応募は、このライブだけでも1万通を超えていて、今後の翼宿さんの活躍が楽しみです』
「翼宿・・・」
遂に流れた翼宿の近況報告
「柳宿・・・」
横で一緒に見ていた呂候も唖然とする
ニャ?
タマも、唖然?とする
「とりあえず・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やったぁーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
海外での翼宿の成功に、兄妹と猫?は抱き合って喜んだ

「て事で、鬼宿の店に行ってくる!!」
「帰りはあまり遅くなっちゃいけないよ?」
「うんv鬼宿も今日がオープンだったしね!!いい事づくめだなぁv」
お手製のドーナツを抱え、柳宿は家を出た

赤い色で塗られた壁のインパクトある楽器店の前に柳宿は立った
「さすがだなぁ~」
鬼宿の仕事事情をあまり知らなかった柳宿は呆然とする
「こんにちは~」
恐る恐る開いていた裏口から顔を出す
「柳宿?」
「え!!柳宿だって!?」
そこには、久々に見る鬼宿の顔と従業員らしき人物
「お疲れ様。差し入れ持ってきたよ」
「いや~わざわざすみません!!さぁ!!あがってあがって!!」
従業員が、なぜかこっちを見て顔を赤らめている
「お前が一番興奮してるんじゃんよ・・・」
「嘘だよ。じゃあ、俺は明日に備えてもう帰るわ~後は二人でごゆっくり~」
「あ!!あの、ドーナツです!!従業員さんもどうぞ!!」
「ありがとう、柳宿さん!!俺、大好きでした!!」
握手を突然求められた
「はぁ・・・」
「じゃあ、お疲れ~たまちゃんvvv」
「・・・気色悪」
柳宿はくすくすと笑った
「面白い従業員さんと一緒でよかったじゃないの」
「まぁな・・・あいつは、仕事も出来てコミカルで会社で評判よかったからな」
「お祝い遅れたけど、おめでとう」
「ありがとう。まだまだこれからだよ~」
「これでお互い、音楽の素晴らしさを伝える仕事に就けた訳だね」
「そうだな」
「あたしも、先日までパパにまた反対され出して大変だったんだから~」
「そうだったのか?」
「だけど、許してくれた。冷静になればきちんと理解してくれるって分かったから」
「そか・・・」
「これからも、色んな誘惑があるだろうけど、自分の信念貫き通せるようにお互い頑張ろうね!!」
「ああ」
「あのさ・・・たま。そろそろ・・・」
「ん?」
「翼宿、どうなのかな?」
「ああ・・・今騒がれてる報道お前も見ただろ?」
「うん・・・」
「指怪我したんだってな。あいつが活動自粛したのってそれだったのか」
「でも・・・よかったよね。やっとテレビであいつの姿確認出来てほっとした」
「そうだな」
「後は・・・いつ帰国なのか・・・かぁ」
「そうだな。その内ひょっこり帰ってきそうだけどな!!」
そうだね・・・きっと、その内ひょっこり帰ってくるよね
そう信じていた

「柳宿先生~。ありがとうございました!!」
「気をつけて、帰ってね!!」
朱雀駅前・むらさきピアノ教室
その中から、可愛らしい子供達が出て行く
「柳宿さん!!ここのところ、働き詰めじゃない?平気?」
「平気ですよ~vピアノ、大好きなんで!!」
「どうですか?今度、一杯v」
「はは・・・。遠慮しときます。お疲れさまで~すvvv」
そう言うと、柳宿はいそいそと、教室を出て行った

「可愛いなぁ・・・。柳宿さんはv」
「俺、いつか絶対モノにしたい!!」
「だぁめよ!!何、言ってるの!!」
講師の男衆を、譜本で殴る加奈子

「あの子には・・・、ずっと待ってる人がいるのよ。3年間・・・、ずぅっとね」

「ただいまっ!!」
「ニャン♪」
「タマ~!!ごめんねぇ!!お散歩の時間だよねっ!!すぐ、行こう!!」
飼い猫タマの頭を撫でる柳宿
「柳宿。散歩くらい、僕が行ってあげるのに・・・」
「いいのっ!!あたし、この子が恋人なんだからっv」
そう言って、サンダルに履き替え、柳宿は家を出た
そんな可愛らしい妹を見て、声をかけた呂候はくすりと笑った

「ニャ?」
「駄目だよぉ。タマ。これは、あたしの宝物なんだから!!傷つけちゃ!!」
散歩中、タマが小指のリングをいじろうとした
これは、あいつとの約束の証なのだ

『・・・・・・・・・・好きやで・・・。柳宿。待ってて欲しい。次、会うまで・・・、もっとえぇ女になって、俺に惚れ直させろ。楽しみにしてる』

ねぇ?今のあたし・・・、前より強くなったかな?
いい女になったかな?・・・あんたは、認めてくれる?
愛しい愛しい私の一番星

「ニャ?」
その時、タマが何かを感じ取った
「どうしたの?タマ」
「ニャン♪」
「あっ!こら!タマ!」
タマが、突然走り出した
それは、駅の方角だった

あたし達が、また再び月に戻るまでにたくさんの笑顔や涙があった
それは時に凄く汚い不条理な事情でもあったけれど
それでも、三人が三人を求める気持ちだけは変わっていなかったよね
翼宿。鬼宿。
あたし、あんた達と出会えてよかったよ
そして、また三人で紡ぐ未来へと一緒に歩いていこうね
49/49ページ
スキ