Making of the Moon【柳宿side】

『元気そうだった。あんまり余計な心配しないで、柳宿ちゃんは仕事に専念してね』
優からの短い報告メールを受けても、どこか釈然としない
遠くの自分がしてあげられる事って何なんだろう
ブランコに乗りながら、そんな事を考えていた
ペチッ
「ひゃ・・・!?」
途端に誰かに後ろから目をふさがれた
「だーれだ?」
「て・・・天文!?」
「久し振り♪何一人で感傷に浸ってるんだよ?」
「天文こそ、どうしたの?こんな所で」
「事務所で練習してたら、お前の姿が見えたからさ」
そのまま、横のブランコに腰掛ける
「お前は会う度に、何かに悩んでるな」
「悪かったわね・・・極度の心配症なのよ」
「まぁ、分かるけど」
天文は、大きくブランコで揺れた
「ねぇ・・・天文にこんな話するのもおかしいんだけど」
「ん?」
「翼宿の事さ・・・知ってる?」
「ああ。奎介さんが朝から騒いでたよ」
「あたし、分かんないんだよね。いつもだったら、すぐに電話かけるんだけど・・・自分が出来る事ってもっと別にあるんじゃないかって」
「・・・・・・・・・・・・・」
「結局、電話かけても気休めにしかならないし。きっと、翼宿。今凄くしんどいんだと思う」
「まぁなぁ・・・あっちで何もする事なくなっちまったって事だろ?」
「うん」
「・・・・・・・・俺なら、耐えられないな」
「え?」
「音楽の世界に飛び込んだ奴が音楽なくしたら・・・それこそ孤独だろ」
「・・・・・・・・・・・・だけど、翼宿は」
「ああ。あいつはそれくらいで挫けない。お前が一番よく分かってるだろ?」
「うん・・・」
「信じなきゃいけないんじゃねえか?あいつは、お前が思ってるよりずっと強い筈だぞ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「あいつが本当に羨ましいよ。自分の好きな世界で頑張りながら、お前の心も掴んで離さないんだからさ」
「そう・・・だね」
「電話するもしないも・・・まずはお前が信じる事から始めないとな」
信じる事
当たり前の事だった
「ありがとう・・・天文」
「俺のレベルも少し上がったかぁ?」
「うん・・・助かった」
「あーあ。俺もこんな一途な彼女欲しいな」
天文はそのまま片手をあげて、去って行った

「あなた・・・その話はもうなしにしようって」
「いいや。あいつは絶対に女優向きだ。収入も今の倍だぞ?」
「だけど、あの子は普通の仕事をして普通に生きたいって言ってたじゃないですか・・・」
「俺は反対だ。今こそ、もう一度女優の道を歩むべきだ」
両親の相談内容は・・・かつての娘への希望
45/49ページ
スキ