Making of the Moon【柳宿side】

(兄貴・・・どうするつもりなんだろう)
今日も、いつも通り出勤して行った呂候の後ろ姿を見ながら、柳宿は思った
確かに、自分は誰にも頼らずに自分一人で解決しようとしていた
元々、そんなに人に悩みを話さない性格だったからかもしれないけれど
だけど、昨日の兄貴の顔を思い出すと、そんな自分が情けなく感じてくる
「却って、心配かけすぎてたか・・・」
ニャー?
そこに、タマがやってきた
「タマ・・・最近遊んであげられなくてごめんね」
そんな事はないという顔で、こっちを見つめてくる
「早く会いたいね・・・お前のご主人様に」

ピンポーン
昼過ぎに来客
「柳宿ー昴宿さんよー」
「え・・・?」
思わぬ来客に驚く
降りて行くと、昴宿が笑いながら手を振っていた
「久し振りーv元気してた?」
「昴宿さん・・・」

そのまま、二人は喫茶店に入った
「これ。店の余り物だけど、よかったら食べて」
「え?」
「あんまり食べてないんでしょ?凄く忙しそうって、奎介が言ってたから」
二、三個タッパを取り出して、昴宿は微笑んだ
「ありがとう・・・ございます」
「「むらさき」の方に行ったら、あんたの姿が見えなかったからさ。今日は休み?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・何かあったんだね?」
「私・・・・・・・・・・・・今の塾行けなくなるかもしれないんです」
そのまま、事情を説明した
「それで・・・呂候さんが何とかするって?」
「はい・・・」
「・・・・・・・そっか。あたしも何も知らなくてごめんね」
「いいえ・・・みんなに迷惑かけたくなくて」
「・・・・・・・・あんた、気づいてないね?」
「え・・・?」
「あんたのそういう気持ちが、逆に迷惑なんだよ」
「・・・・・・・・昴宿さん」
「鬼宿なんて、いつも誰かに相談してるよ」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「だけど、誰も邪見になんてしない。それだけ、みんなあんたらが好きだから」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「迷惑だと思われるほど、あんたはみんなを信用してないのかい?」
つまり、そういう事なのだ
昨日の翼宿の電話も、呂候の寂しそうな顔も
その意味が全部分かった
「・・・・・・・・・・・・・ありがとうございます」
「今から、「むらさき」に行ってみない?」
「え?」
「何か気になるんだよね。呂候さん・・・」
彼がしようとしている事は?
42/49ページ
スキ