Making of the Moon【柳宿side】

『柳宿・・・他の保護者の方からも、もう柳宿に見てほしくないって苦情が来てるの。悪いけど、しばらく教室には来ないでくれるかしら?』
「分かりました・・・」
『ごめんなさい。私に出来る事がなくて・・・』
「いいんです。加奈子さんも・・・迷惑かけてすみません」
電話を切って、溜息をつく
結局、自分には無理だったのかな
無理だったんだろう
一般の人と同じ目線に立つのは難しいのかもしれない
ましてや教師なんて、簡単になりきれる訳がないんだ
現に、子供達は一度も自分を「先生」と呼んでくれた事がないではないか
「あたしも・・・・・・・・・・・・アメリカ行っちゃおうかな」
涙が零れた
Pllllllll
突然の着信の相手を見て驚く
「翼宿」
カチャ
『もしもし?柳宿か?』
「翼宿・・・?」
『今、平気か?』
「どうして・・・?」
『たまには、俺からかけても罰あたらんやろ』
「・・・・・・・・・・・」
『嫌やったか?』
「そんな事ない・・・信じられない」
『泣いてる?』
鼓動が鳴る
「・・・・・・な訳ないじゃん!!ちょっとびっくりして・・・」
『嘘つくな。今、泣いてたやろ?』
「・・・・・・・・何でも分かっちゃうんだね。翼宿は・・・」
『俺を誰や思うてるんや。誤魔化しても、すぐに分かるんや』
「そ・・・・・・か・・・・」
『何かあった?』
「・・・・・・・・・・・・・あたし、クビになるかもしんないんだよね」
『・・・・・・・・え?』
「生徒に・・・あたしに虐待されたって嘘つかれて・・・塾にいられない状態」
『お前・・・』
「芸能界引退した人は、所詮下の世界で頑張ってる奴らの事を見下してるって」
『・・・・・・・・・・・』
「・・・・・・・・・・・・・やっぱり駄目なのかな。あたしには無理なのかな」
『・・・・・・・・・・・柳宿』
「あたしの事、誰も信じてくれない」
『誰かに相談したんか?』
「出来ないわよ・・・また、何か誤解されたら困るし」
『・・・・・・・せやけど、頼る事は悪い事はないんやで』
「・・・・・・・・・・・」
『そうやって、俺にも隠すつもりやったんやろ?』
「・・・・・・・だって」
『気遣うな。これからは、週一で電話する。今まで放置してたお詫びやさかい』
「・・・・・・・・・・・・・たすき・・・あたし、辛いよ・・・」
『俺だけは・・・・・・・・お前の事信じてる』
「たすき・・・」
『俺が、絶対にお前を護るから。負けるな』
「ありがとう・・・」
『また、連絡する。経過教えろよ。後、たまに相談せぇ』
「うん・・・」
電話を切ると、また涙が溢れた
自分は一人ではない
こんなにも近くに、一番愛している人がいる

「柳宿・・・」
そして、もう一つの声
「兄貴・・・?」
それは、自分を愛してくれている兄だった
彼は、困惑の表情を見せている
「どうして・・・」
呂候は、柳宿の両肩を掴んだ
「どうして・・・言ってくれなかったんだい?」
涙が溢れた
「だって・・・」
「僕・・・僕は悔しいよ」
「兄貴・・・」
「僕は本当に頼りない人間だよ。・・・妹の力にもなってあげられないなんて」
「そんな事はないよ・・・兄貴に心配かけたくなくて」
「柳宿・・・・・・・僕が何とかする。僕に何とかさせてほしい」
「兄貴・・・」
「信じて・・・」
君の為に出来る事
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