Making of the Moon【柳宿side】

「家庭教師ですって?」
「はい・・・蛍ちゃん、ここにはお友達もたくさんいるから、来づらいみたいなんです」
「だからって・・・何もあなたが家庭教師をやらなくたって・・・」
「専属の子も、ちゃんとあたしが見ます。だからせめて、土日の空いた時間だけでも使わせてください」
加奈子はため息をついた
「・・・・・・・・やめてく子、いちいちそうやって見ていく気?あなた、体持たないわよ?」
「そういう訳じゃないんです・・・ただ・・・」
『あなたは、娘の目標です』
「分かった。くれぐれも、問題起こさないようにね」
「ありがとうございます!!」

「落ち着いて。ここはもっとゆっくりでいいのよ。リズム感が大切・・・」
それから、柳宿は蛍につきっきりで稽古をした
最初は中々返事をしなかった蛍も、最近は心を開いてくれるようになった
「柳宿・・・ここはどうするの?」
「えっと・・・これはね」
母親も、すっかり安心したようだった
しかし、事件は起こる

「・・・・・・・・・・・・・もうすぐ、夏季のコンクールの予選が始まるね。蛍ちゃんに是非出演してほしい」
柳宿は、今日の稽古を終え、手帳を見ながらそう告げる
蛍は、やはり俯く
「大丈夫だよ。失敗は誰にでもあるんだし。今のあなたは、きっとその時のあなたよりも数倍上手くなってる筈だよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・そうかな」
「明日、また来るから。その時まで返事考えておいてね」
そのまま、柳宿は出て行った

次の日
塾からの着信
「もしもし」
『柳宿・・・・・・・・すぐに教室へ来なさい!!』
「え・・・加奈子さん?」
加奈子の切羽詰まった声だった

「どうしたんですか?」
教室に入ると、加奈子と蛍の母親がいた
「柳宿・・・あなたは・・・」
「え・・・?」
「これは、どういう事なんですか!?」
蛍の母親が柳宿に突きつけた写真。それは・・・
「娘は、あなたにやられたって泣いてるんです!!!」
蛍の体に無数に付けられた青痣の写真だった
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