Making of the Moon【柳宿side】

「柳宿・・・」
三時間後、加奈子は柳宿のいる場所へ来てみた
・・・・・・・・・・・が、翼宿が来た気配はなかった
「加奈子さん・・・」
「もうすぐ出発よ。そろそろ出ないと・・・」
「・・・・・・・・・はい」
項垂れる柳宿の頭を、加奈子はそっと撫でた
「きっと・・・出たくても出られないだけよ。きっとあなたに一刻も早く会いたい筈だから」
柳宿はそっと頷いたが、涙が零れてきた
自分は、以前よりは強くなった筈だ
翼宿を変に疑わなくもなったし、ポジティブになった
だからこそ、多少の無理は生じていた事に加奈子だって気づいていた筈だ
「帰ろう?」
加奈子に手を引かれ、柳宿はその場を後にした

ブロロロロロロロ
「向こうに帰ったら、一週間春休みね。その後、あなたは勤務開始」
「分かりました」
柳宿は、無理に笑顔を作る
そうだ。自分は日本でやるべき事がある
無理にでも切り替えなければ
その時だった
Plllllllllllllllllllllll
突然の着信
窓を見て、目を疑った
「着信:翼宿」
すぐに電話に出る
「もしもし・・・・・・・・」
『もしもし・・・?柳宿・・・』
「翼宿・・・・・・・・・・・・」
『すまん・・・・・・・・・・・・・・・・な。間に合わなかった』
「もしかして・・・・・・・・・・・・来たの?」
『ああ・・・・・・・・・・』
信じられない
彼は来てくれたのだ
「あたし・・・・・・・・・・・・もう、今空港に向かう車の中で・・・・・・・・・・・・・」
『すまん・・・・・・・・・・・・・・・・かった』
「翼宿・・・」
堪えた涙が、また溢れる
『柳宿。今更弁解するなんぞ、そんなかっこ悪い事せん・・・・・・・・・・・・・だけど・・・だけどな、気づいたんや・・・』
「何・・・・・・・・・・?」

『俺は・・・世界中のどんな女よりも・・・・・・・・・・・・お前が好きや』

信じる事は、決して無駄な事ではない
『絶対に・・・・・・・・・・・・・・日本に帰ったら、お前を幸せにしたるからな』
この距離は、その大切さを教えてくれたんだね
「・・・うん。うん・・・・・・・・・・・・・・・・・あたし、翼宿の事・・・信じてるよ・・・」
『・・・・・・・・・・・・・・・おおきに』
絶対に負けない。この先、どんな事があっても・・・
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