Making of the Moon【柳宿side】

『柳宿!!調子はどう?』
『マリア・・・マリアのお陰で、日本にいる時よりも格段と上達したわv』
『あなたの覚えがいいからよ。明日の発表会期待しているからv』
二週間、必死に追い込みをかけて練習したお陰で、柳宿のピアノの腕前は更に伸びた
『あなた、こんなに素晴らしい才能があるんだから、このままアメリカに残ればいいのに』
その言葉に、ドキンとした
『そう・・・ね。それは嬉しいんだけど、私は応援したい人がいるんだ』
『応援したい人?』
『うん・・・私よりもずっと才能があって夢を持ち続けている人』
『恋人ね?』
マリアは、ニヤリと不敵に微笑む
『さすが・・・鋭いわねーマリアは』
『まぁ、いいけど!!ピアノを捨ててまで応援したい人なのね。手放しちゃあ、駄目よ』
マリアは、ウインクする

『Pianist Licytal』
翌日、大聖堂に掲げられた大きな看板
「ひゃ~・・・上手そう」
控室では、様々なピアニストが楽譜をチェックしたりメイクを直したりしている
「こら!!自信喪失しないの!!」
「加奈子さん~」
「あんたは、日本を代表するピアニストなんだから。しっかりやんなさいv」
「・・・・・・・・・・・・・自信ないですよ~」
「そんなあんたに朗報よv」
「え?」
「今日、あの大手音楽会社「GROBAL MUSIC」のMICHEAL社長が来てるみたいなのよv」
「ええーーーーーーーーーー!?」
「遂最近まで病院に入院してたみたいなんだけど、退院してこのリサイタルに興味を示したんですってv」
MICHEALは、翼宿をこの国に残した人物だ
少々気まずい気持ちはあるものの
「多分、翼宿に伝わるんじゃない?あなたの今日の姿v」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
顔が真っ赤になる
「あたし・・・・・・・・頑張ります!!」
「よしv」
単純・・・柳宿も乙女だ

『続いては、日本のトップピアニスト・柳宿さんの演奏で「Perfect World」です』
柳宿は、白いドレスを身にまとい、観客席の前に現れる
皆が、ほうとため息をつく
柳宿は、もう既に心臓がMAXだったが、深呼吸して椅子に座る
(大丈夫・・・余計な事を考えないで。あたしは・・・ここにピアノを極めに来たんだ。精一杯、自分らしく頑張ろう)
指は、滑らかに鍵盤の上を走った
学生時代一番好きだった課題曲を選んだ
鍵盤に想いを乗せる
その素晴らしい音色に、観客は酔いしれていた
『あれが、「空翔宿星」の柳宿ですか』
『うむ・・・やはり腕前は一人前だな。そして何よりも・・・とても綺麗な女性だ。さすが、翼宿が選んだ女性』
『翼宿・・・連れてこなくてよかったんですか?』
『ああ。あいつは今、やっと新曲が書けるようになったんだ。余計な世話を焼く必要はないだろう。その分、私がこの目にきちんとあの姿を焼きつける』
PoleとMICHEALは、観客席でそんな会話をしていた

「・・・・・・・終わった」
控室で、柳宿は脱力したように椅子に座りこむ
「柳宿!!よかったわよ!!それに、とっても綺麗だったv」
「本当ですか・・・?加奈子さぁ~~~ん」
「よしよしv頑張った頑張ったv飲み物買ってきてあげるから、ここで待ってなさい」
『柳宿~演奏凄かったねv』
『お疲れ様~やっぱり日本の音は最高だわv』
共演者が、どっと柳宿の周りに集まる
加奈子は、それを温かく見守りながら部屋を後にした

『号外号外~~~大変だよ、大変!!!』
大聖堂の外は、何やら騒がしい
「何かあったのかしら?」
加奈子は、ひょいとそちらを見やる
『号外だよ、お姉さん!!翼宿の熱愛発覚!!!!』
耳を疑う
号外の記事には、翼宿と女性がバイクにまたがっている写真が載せられていた
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