Making of the Moon【柳宿side】

ブロロロロ
車が事務所前に止まる
「じゃあ、終わったら連絡ちょうだい。柳宿。また迎えに来るよ」
「本当ごめんねぇ~兄貴。迷惑かけちゃって・・・」
「いいんだよ。まだ報道陣も落ち着いてないだろうしね」
「じゃあ・・・また」
「楽しんでおいで」
呂候に事務所まで送ってもらった柳宿
事務所の扉に手をかけると、緊張が走る
フラッシュバックしたりしないだろうか
しかし、入った瞬間、夕城プロと鬼宿は揃って笑顔で、自分を出迎えてくれた
「こんにちは~」
「「柳宿!!」」
「お久しぶりです・・・」
「全然変わってないなぁ~心配してたんだぞ!!」
「すみません・・・色々ありまして」
「柳宿。奥の会議室で話そうぜ」
自分の顔色を察したのか、鬼宿が声をかけてくれた

珈琲が手渡される
「ありがとう」
「しっかし、顔色悪いぞ?今日、出てきて平気だったのか?」
「平気・・・兄貴に送ってもらったから」
明らかに心配している鬼宿
「試験日いつなんだ?」
「来月の頭かな。筆記と面接と実技」
「面接と実技はお前の得意分野じゃん!!筆記だけ集中して頑張れば何とか!!」
「そだね。受かればいいけどね」
テンションが低い自分にいらつく
そこで、ふとこんな疑問
「あの・・・」
「たま、翼宿と連絡取った?」
自分でもこんな疑問を出した事に驚いてしまった
彼も驚いていたが
「い・・・いや。俺はまだ・・・」
「そっか・・・。そっちにも連絡行ってないか」
「心配か・・・」
「心配に決まってるわよ。心配しすぎて、この有様よ」
「俺は、てっきりお前が連絡取ってるもんだと思って、控えてたんだけどさ」
「出来る訳ないじゃないの!!今のあたしを見てよ~」
「まぁ・・・な」
「向こうで頑張ってるのも分かってるよ?忙しくて連絡来ない事だって分かってる。あたしだって今、第二の人生頑張ってる。だけど、そこだけ時間が止まっちゃってるみたいなのよ。半分抜け殻って感じかな・・・」
「なるほどな」
きっと、そうなんだ
訳も分からず元気が出ない理由
「今度さ。ドライブでも行かねぇ?」
「え?」
突然の提案
「気分転換v何なら、美朱と夕城プロも一緒にさv」
「たま・・・」
「俺らもいるんだからさ。もっと頼ってくれよ」
「うん・・・ありがと」
鬼宿は変わらない
そんな気遣いにホッとした

「お帰り。柳宿」
呂候は、連絡を受けて事務所の前に車を止めて待っていた
「ただいま・・・」
「どうだった?鬼宿君、変わりなかったかい?」
「そうね・・・元気だったわ」
車に乗り込むと、呂候はエンジンをかける
「今度・・・ドライブ誘われた」
「本当かい?よかったじゃないか!!」
「早く・・・元気出さなきゃね」
メンバーへの申し訳なさ
そして、何より遠くにいる彼への申し訳なさ
涙が零れた
日本に来てから、まだ一度も零れてこなかった涙が
「柳宿」
呂候が呼びかける
「僕が君を護るから。これからどんな嫌がらせがあろうとも・・・僕が必ず妹を護ってみせるから」
兄貴の誓いだった
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