Making of the Moon【柳宿side】

「やばっ・・・早く帰らないと」
今日も、柳宿は聖の指導で遅くまで大学に残っていた
本当は呂候が迎えに来る筈だったのだが、残業で連絡が取れないようだ
多分大丈夫だろうと、柳宿は一人で夜道を歩いた
ガサガサッ
近くの茂みが揺れた
「・・・・・・・!!」
鳥肌が立つ
もしかして・・・
ガサガサッ
「きゃ・・・」
「猫・・・か」
「てっ、天文!?」
「よ。驚かせたな」
「てーか、何であんたがここにいんのよっ!?」
「心配だったから・・・つけてたんだよ」
「あ・・・あんたがぁ?」
「わ・・・わりぃかよ!!夕城プロに、お前のガード頼まれてたの!!」
「そ・・・そうだったの?」
「何か・・・大学で男と一緒だったじゃん?声かけづらくてさ」
「だからって、こんなストーカーみたいな」
柳宿は、呆れる
「とにかく・・・お前、一人で歩くなよ。お前が一番公に鬼宿と関わりあんだからさ」
「ごめんなさい・・・」
天文は、柳宿の横について歩き出す
「・・・明日、鬼宿がアジトに乗り込むらしいぞ」
「え・・・?」
「喧嘩になったら、即警察に通報する為に俺と夕城プロもついてく」
「大丈夫・・・なの?」
「だといいけどな」
「無理しないで・・・」
「おう。お前は、来るんじゃねえぞ」

次の日、やはり柳宿は落ち着かなかった
翼宿に知らせた方がいいんだろうか
メールだけでも、入れておこう
そういえば・・・この間のメールの返事もまだだった
また・・・忙しいのかな

『鬼宿が、バイト先の人と大変みたいなんだ。この前のメール見たかな?忙しいの?』

反応は・・・やはりなし

「はぁ・・・」
「何かあったんですか?柳宿さん」
「あ・・・聖君。ごめんね!!別に何でも・・・」
一緒に求人情報誌を眺めていた柳宿に、聖が声をかける
心配事が多すぎる
「・・・翼宿さんとは上手く行ってるんですか?」
「最近、また連絡取れなくなっちゃってぇ~」
柳宿は、苦笑い
「あの・・・知らないんですか?」
「え?」
「昨日、僕ネットでロイター通信見たんですけど、翼宿さんと同じ養成所の日本人が亡くなったみたいなんですよ」
「・・・・・・・・・・・・だ・・・誰が?」
嫌な予感がした

「水無月杏さん。もうすぐメジャーデビューの兆しがあった女性ボーカリストみたいなんです」

ねぇ。もしかして、あんたが連絡くれない理由って・・・
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