Making of the Moon【柳宿side】

「就職が決まらない?」
「はい・・・俺、指揮者を目指してるんです」
聖から、相談を持ちかけられた柳宿
聖は、同じ学科で同じクラス
よく話した事はないけれど、あまり芸能界とかこだわらないで接してくれる存在の一人だった
「そっか・・・指揮者かぁ。狭き門かもしれないね。あたしも合唱団に話聞きに行ったけど、間に合ってるみたいだったし」
ただでさえ、地方の合唱団が少ない地域だった
「だけど、それ以前に俺才能ないし」
「・・・大丈夫だよ!!何なら、あたし練習に付き合おうか?」
「え?」
「伴奏があれば、指揮の練習にもなるでしょ?」
柳宿は、にっこり笑った

「乾杯v就職おめでとうv」
その夜、柳宿は親友の鳳綺と就職祝いに飲みに行った
「ま、柳宿なら大丈夫だって信じてたけどねv」
「ありがとう!!いつも、応援してくれてv」
久々のお酒に、二人とも浮かれる
「とゆーか、一杯にしなさいよ?あんた、酔うとひどいんだから」
「分かってるよー」
「恋愛の不満が、色々溜まってるだろうしね」
「何それ!?」
「この前会ったんでしょ?何もなかったんだよね?」
「うん・・・」
「そろそろやばいねー国際恋愛に、何もついてこないなんてさ」
「だって、あいつ忙しいんだもん」
「キスもしてないんでしょ?」
「そ・・・そりゃ、そうだけど・・・」
「向こうでキスしてたりしてv」
「鳳綺!?」
「嘘嘘v人生順調な柳宿さんをからかってみました~v」
「あたし・・・翼宿の事、信じてるもん」
「そうそう。それでいいのよv」
「あ。だけどね、今日聖君に相談されたんだよね」
「聖君?」
「同じクラスの男の子なんだけど、指揮者になりたいんだって」
「・・・・・・・・・・・・・あんた、何誘ってるのよ」
「・・・へ?」
鈍感なのは、柳宿も同じだった

そんな矢先、鬼宿が暴行事件に遭った連絡を受けた
病院に駆けつけると、鬼宿とその友人が手当てを受けていた
「よかった・・・二人とも無事で」
そこで、天文とばっちり目が合う
(やば・・・)
「おい。柳宿。ちょっと・・・」
予想通り、呼び出しを食らう

「はい」
天文は、待合室で柳宿に小箱を渡す
「え・・・これ」
「就職祝い」
中身は、可愛らしいネックレスだった
「貰っとけよ。女は、何個持ってても困らないって言うだろ?」
「でも・・・高かったんじゃないの?これ」
「この前の収入で買ったんだよ。インディーズが売れたからな」
「あ・・・おめでと。凄いいい曲だったよ」
「・・・聞いてたんだ」
「まぁ・・・・・・・・・・あ。ありがとう」
二人は、俯く
「俺・・・せめて、お前の友達でいたいんだよ」
「え?」
「この前は、あんな事言っちまった。だけど、今の関係も壊すつもりねぇし」
「天文・・・」
「俺は、笑顔の柳宿が好きだからさ」
「ありがと・・・」
温かい空気
いつだって、一人じゃなかった
みんなが、天文がいてくれたから
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