Making of the Moon【柳宿side】

「鏡花!!」
鏡花は無視して、柳宿の横を通り過ぎる
「鏡花・・・話がしたいの!!」
そのまま、後を追いかける
「鏡花・・・」
「離しなさいよ!!何よ・・・翼宿にも鬼宿にも天文さんにもちやほやされちゃって・・・」
思わず飛び出した鏡花の本音
「鏡花・・・そんな風に思ってたの?」
「そうよ・・・あんたみたいな女、誰が友達になるかっての」
柳宿は、瞳を伏せた
「やっぱ・・・鏡花もそう思ってるんだ」
「え?」
「今ね、就職活動してるんだけど全然駄目。誰も相手にしてくれない。あたしが芸能界上がりだから」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「普通の生活をするって、難しい事なのよね」
鏡花には、それまでの柳宿は裕福な生活をするお嬢様に見えていた
しかし、その一言で彼女が直面している現実を知った
「鏡花にそう思われても仕方ないよね。だけど、あたし少しの間だけでも一緒にいられて嬉しかった」
「柳宿・・・」
「鏡花は、絶対いいトコに就職してねvじゃ・・・」
「柳宿!!」
鏡花は、呼びとめた
「ごめん・・・あたし、あんたに何てひどい事・・・」
「鏡花・・・?」
「本当は羨ましかっただけなの・・・あんたが凄く可愛くて綺麗で・・・同じ女として悔しくて」
目を丸くする柳宿
「鏡花・・・そんな・・・あたしなんか人間としてまだまだ未熟で・・・」
「本当にごめんなさい。就職に・・・困ってるんだよね?」
鏡花から驚きの提案

『あたしの知り合いがやってるピアノ塾があるんだけど、そこ一人だけ優秀な弾き手を雇いたいって言ってるみたいで・・・あんた、学内で一番ピアノ上手いから、あたしが推薦してあげる。きっといい人だから・・・』
住所を手渡され、後日そのピアノ塾に向かう
可愛らしいピンクの屋根に、可愛らしい入口
「こんにちはー・・・」
恐る恐るドアを開ける
「あの・・・鏡花の紹介で訪ねてきました」
「はーい」
中からは、少し太めの優しそうな女性が出てきた
「あら?」
彼女は、一発で柳宿が誰なのか気づいたようだった
「初めまして・・・あの」
「中でお話聞こうか」
女性は、にやりと笑うと中に薦めた

「あたしは、このピアノ塾「むらさき」の塾長の桜井加奈子です。よろしく」
「柳宿です・・・初めまして」
「初めましてじゃないよ、もう!!うちの生徒、ほとんどあんたの影響でピアノ始めた子が多かったのよv」
「そうなんですか!?」
気さくで優しい雰囲気だった
「就活に難航してるんだって?」
「はは・・・まぁ」
「大変だよね。売れっ子の就職活動は。だけど、ここでは厳しい採用基準を設けますよ」
「え・・・?」
「受けるだけ受けてみなさい。うちは大歓迎だよ。落とす場合もありますけど」
試験が受けられる
「ありがとうございます!!!」
遂に、第二の人生が決まる
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