Making of the Moon【柳宿side】

コンコン
「柳宿?」
部屋の扉を叩いたのは、兄だった
「入ってもいいかい?」
そのまま、通す
「どうしたの?兄貴」
「今日、ドライブにでも行かないかい?」
「え?」
「気分転換も必要だろう?」
ニャ~
「お。タマも行くかい?」
兄貴の優しい気遣いだった

海へと、車を走らす
柳宿は、海が好きだった
いつしか、ツアー前に怪我をした柳宿を慰める為に、翼宿も連れて行ってくれたっけ
車の中から、海を眺める
「平気かい?」
「んー平気とは言えないけど」
「今、帰ってるんだろう?」
「うん・・・」

「柳宿。自分の気持ちに素直になるのが一番だよ?」

「そんな事言って~兄貴だって、彼女いるんでしょ?どうなのよ?最近」

「僕らも上手く行ってないよ。彼女が他県に転勤する事になってね」
「え。そうなの?」
「君たちとは格が違うけど、僕らも遠距離恋愛だよ。みんな、何かしら障害を持って生きてるんだよね」
その言葉に、妙に納得

「だけど、乗り越えられない壁はない。お互いを想っていれば、必ず勝てる」

「必ず・・・」
「そう。必ず」
あたし達の間にも、「必ず」はあるのかな?
「僕は、お前の幸せを一番に祈っているから」
「兄貴・・・」
涙が零れる
ニャ~
優しさは、いつも隣にある

その次の日に貰ったメール

『お前の誕生日に、あのライブハウスで待ってるから』

誰よりも愛しいあいつからのメール
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