Making of the Moon【柳宿side】

「という事で・・・今年の冬には、短期留学を予定しています。希望者は、夏休み前までに・・・」
新年度の説明会
柳宿は、浮かない顔で出席していた
「・・・宿!!柳宿!!」
「へ!?」
「もう~さっきから呼んでるのにぃ」
「あ・・・ごめん」
薫の呼びかけに、応答が遅れた
「柳宿は、どうすんの?留学」
「あ~・・・」
書類に目を落とす
行先は・・・・・・・・・・・・・・・LA
あいつがいるところだ
「どうしようかな・・・お金かかるしね」
「あたしも迷ってるよ~でも、柳宿がもし行くなら、あたしも考えようかなぁ~」
説明会は、そのままお開き
帰り支度を始めると、脇で鏡花が立ちあがった
「あ・・・鏡花」
鏡花は、こちらを見ずにそのまま立ち去った
「感じ悪い~」
まだ・・・話せていない

『柳宿。本当に来ないのか?』
鬼宿からのメールを受け取ったのは、その日の夕方
(あ・・・そっか。翼宿、明日帰国するんだっけ)
「白い虎」での歓迎会が企画されているのだ
だけど、自分は笑って会える身分ではないのだ
「恋人なのに・・・変だよね」
「何が変なんだ?」
「わ!!何だ・・・天文か!!」
「何道端で独り言言ってるんだよ」
「何でもないですよ~だ!!」
丁度家の前だった
「あ。そうだ!!天文に貸してもらった楽譜、まだ返してないから寄ってって!!」
「え・・・」
「今、家誰もいないから、ちょっとお茶でも飲んでいかない?」

ガタガタ
「えっと・・・」
部屋に通し、柳宿は楽譜を探す
「女の子っぽい部屋だなぁ~やっぱり」
「そぉ?そろそろ昔のものとか整理しなきゃいけないんだけど・・・中々ねぇ」
すると、机の上の宝箱に目が行った
そこには・・・・・・・・・・・もう、二か月はめていない彼からの指輪
柳宿は一瞬俯く
「柳宿・・・」
「あ。ごめんね!!これだったよね!!返すの遅れてごめ・・・」
振り向いた柳宿は、ベッドに押し倒された
ドサッ
「え・・・ちょっと天文・・・!?」
「早くあいつの事なんか・・・忘れろよ」
掠れた声に、鳥肌が立つ
「何・・・言ってるの?」
「あいつの影を・・・これからもずっと背負ってお前は生きていくのか?」
天文が自分の手を掴む力が強くなる
「何で・・・」
「俺・・・俺が、お前を幸せにするから!!絶対に離れたりしない!!」
そのまま、唇が近づく
「やだ・・・天文!!」
その時、彼女の涙に気づき、彼は手を離す
「何で・・・泣いてんだよ」

「ごめん・・・」

あたしは・・・・・・・・・・・・・まだ

次の日
「白い虎」の前
柳宿は来ていた
顔だけでも・・・そう思っていたが
柳宿は急いで引き返した
会いたい・・・今すぐ抱きしめてもらいたいけど
だけど
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