Making of the Moon【柳宿side】

「柳宿ちゃん。今日はゆっくりしなさいな」
鬼宿が「白い虎」を出て、柳宿は部屋を与えられた
「ありがとうございます・・・夜までお世話になって」
「呂候さんには連絡入れといたから。娘のあんたが、一番ご両親と顔合わせづらいだろう?」
「明日には帰ります・・・」
「家は、いつでも構わないよ。あんたみたいな可愛い娘がいてくれるなら、大歓迎さv」
昴宿の優しい気遣いに、柳宿は感激した

「おやすみなさい・・・」
昴宿が部屋を出てすぐに、何通かのメールに気づく
一通は、薫から
『柳宿?天文さんから、事情は聞いた。大変だったね。鏡花、あれから学校来てないんだ。最低だよね!!あたしは、柳宿の味方だからいつでも頼っていいからね^^』
優しい友人だった
(鏡花・・・そうだ。彼女・・・友達だと思っていたのに)
もう一通は、美朱からだった
『柳宿先輩。私、先輩に何て声をかけてあげればいいか、分かりません。信じたくもないんです。だけど・・・こればかりは少し立ち直れそうにありません。少し・・・鬼宿とは距離を置こうと思います』
「美朱・・・」
今回の事件で一番衝撃を受けたのは、紛れもなく彼女である
柳宿ですら、弁解をしても言い訳に聞こえてしまうだろう
ここは、当人同士で解決させるしかないのだろうか
しかし、自分に出来る唯一の事といえば・・・
ひとつだけ思い浮かぶ
しかし、これをすれば、一番迷惑がかかる相手は自分の一番愛しき人
でも、今の事態を回避したい。全て偽りである現在を
震える手で、電話帳を開く
『翼宿』
Plllllllllllllllllll
『もしもし?』
「もしもし。翼宿・・・?あたし・・・」
『柳宿か・・・どないしたん?』
「あのさ・・・怒ってるよね?」
『怒ってへんわ・・・。お前の焦りよう見ると、怒る気も失せるがな』
優しい言葉だった
「ありがとう・・・あたし・・・さっきの電話で言えなかったけど・・・あんたに何て言えばいいか・・・」
『えぇよ。気にしてへん』
「・・・・・・・・・・・美朱とか、友達とかからさ、いっぱいメール貰った。一番ショックなの美朱だよね」
『お前のせいやない。誤解なんやから』
「うん・・・それで、あたし考えたんだ」
『何をや?』
「これは・・・あんたにしか相談出来ないと思って」
次の言葉を言った時、相手の反応が止まった
『・・・本気か?』
「次に迷惑をかけるのは・・・翼宿だと思う。だけど・・・だけどね?嘘の報道をされるよりは・・・いいと思うんだ」
暫し沈黙
「ごめん・・・勝手だよね。ごめん」
『・・・・・・・・・・・えぇよ』
「え?」
『俺も・・・ついてかなきゃあかんよな』
愛する人の同意

「柳宿さん!!一言お願いします!!」
今日も、家の外はたくさんの報道陣
「柳宿・・・今日も大学休みなさい」
しかし、柳宿は無視して靴を履いた
「柳宿?」
呂候が声をかける
「パパ・・・ママ・・・兄貴・・・。これからはもっと家の外が煩くなるかもしれないけど、許してね?」
清々しい笑顔で、ドアを開ける
途端にシャッター音の嵐
「柳宿さん!!今回の報道に関して、国民の皆さんに一言!!」
マイクを向けられ、呼吸を整える
『皆さん・・・聞いてください。私・・・皆さんにお伝えしたい事があるんです』
一呼吸整える

『私は・・・翼宿とお付き合いしています。今回の報道は、誤解です』
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